第12話〜未来への一歩〜

「サクラ、起きてる~?…って、ごめん、取り込み中だった?」

 そう言ってアスカちゃんがいきなり入って来た。私たちはびっくりして、お互い体を離した。

「ごめん、ごめん。サクラ全然起きないからさ、ちょっと心配だったんだよ。」

「え?どれくらい寝てたの?」

「なんと、丸3日!」

「3日!?」

 そう言われてびっくりする。3日も寝てたんだ…。それは心配になるよね。

「まあ、起きて良かった。それで、色々思い出したの?」

「うん、アスカちゃんとの約束も思い出したよ。」

 そう、私たちは約束した。とても大事な約束。

「ベスト王国の、再建。」

「…うん。」

 ここでの日々は幸せだった。お父様とお母さまと、アスカちゃんとカエデと、フウくんと過ごした日々はとても楽しかった。あの日々はもう戻らない。でも、せめてこの国だけでも再建したい。

「色々終わったら、またみんなで考えよ。」

「そうだね。」

 だけど今は、目先の問題を解決しなきゃ。そのために、まず…。

「ねえ、二人とも第五艦にいる『三波そらさん』って知ってる?」

 まずはサクラさんがくれたヒントをものにしよう。

 でも二人とも首をかしげる。う~ん、どうしよう…。本部長に聞いてみようかな?

「その人があいつらを何とかする鍵なの?」

「そう、その人のご先祖様と、私のご先祖様があいつ等のことを突き止めたんだ。向こうはその記憶が、と言うよりも前世の記憶自体がないらしいんだけど、多分力になってくれるかもって…。」

「そうか…。」

 そう言って二人は悩む。当たり前だけど、こんなところで不確定要素を入れたくないんだと思う。

「…もしかしてその人ってアンジェロ王国のお姫様?」

 そう聞いてきたのはアスカちゃんでも、フウくんでもなく、カエデだった。

「カ、カエデ!いつの間に!」

「いや、今来たことろだけど、テントの外から聞いてなんか聞いたことある名前だなって。」

 カエデは平然とそう言う。

「カエデ、聞いた事あるってほんと!?」

「え?ああ、あのベルゼブル・マルベイたちの下で働いてるときに聞いたんだ。『あの姫の捕縛は失敗したらしいならば、俺たちだけでも成功させなければ…。』みたいなこと言ってたぞ。ってか、俺の質問!あってんの?」

「あ、うん。そうだよ。アンジェロ王国のヒンメロ・アンジェロ姫様。」

「やっぱりな!」

 そう言って誇らしげなカエデはなんだか可愛かった。

 でも、今はそんなことを言ってる場合じゃなくて!

「ならカエデ!その人達はそらさんどこにいるか言ってた!」

「ん?確かMEAで保護したって聞いたぞ。今度はその人探すのか?」

 カエデがまさかの情報を出してくれたおかげで、思ったよりうまくいきそうな気がしてきた。まずは本部長に掛け合って、会わせてもらえるようにお願いしよう。とにかく、会わないと始まらないから。

「とりあえず、本部長に確認して本人と会わなきゃね。」

「分かった。その辺は任せる。あ、フウも一緒のいたほうがいいんじゃない?」

「そうだね。一通りは話せるし、とにかく一度会おう。会って話して、それから考えよう。これからの事。」

「ああ、俺、やっとサクラたちの役に立てそうな気がしてきた!」

 こんな風に話してると懐かしく感じる。記憶がなかったころは漠然としてたけど、今は違う。ずっと昔にもこんな事があったって確信が持てる。そのことが嬉しくて少し、ほんの少しだけ笑顔になれる。

 そして目に入るのはご先祖様、サクラさんからもらった弓。これをしまうのは、きっとこの指輪だと思って、フウくんにもらった指輪にしまう。

「そうと決まれば善は急げだね!サクラ、行くよ!」

 そう言ってフウくんが私の手を引く。いつも通り、優しく。

「うん!」

 そして、私たちは一歩踏み出す。今までとは違う、未来への確かな一歩だと信じて…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る