第175話
レーヴアジト。
コルネリアは手を拱いていた。
「……どうした、コルネリア。そんな神妙な面持ちをして。お前らしくも無い」
訊ねたのは意外にも崇人だった。
コルネリアはその表情に怪訝なそれを浮かべつつも、彼の質問に答える。
「実は、あのあとティパモールが革命を起こしたらしいのよ。具体的に言えば、ハリー騎士団の解散……とかね」
「ハリー騎士団の解散、だって? ティパモールが唯一持っている騎士団じゃなかったのか? それに、彼らの持つリリーファーも……それなりに強かったはずだろ」
「それなり、というか。リリーファーの母数自体少なくなってしまった昨今では、リリーファーを多数抱える騎士団自体が珍しいものなのだろう? まあ、これはあの二人からの受け売りなのだけれど……」
「あの二人?」
それを聞いたコルネリアは一瞬考える。その『あの二人』が誰なのか――ということについて。
少しして、その二人がエイミーとエイムスであることが解った。
「エイミーとエイムス、二人とも随分仲好くなってきたようだね」
「二人とも面倒そうに教えてくれるけれどね。それでも、教えてもらえるだけ有難いと思っているけれど」
「面倒そうに思うのは致し方ない。彼らは君に嫉妬しているのだよ。だが、心の中では君のことをきっと尊敬しているはずだよ」
「本当か?」
崇人はニヒルな笑みを浮かべ、コルネリアの隣にある席に腰掛ける。
「うん。そうだよ、君はね、君が思っている以上にすごい人間というわけだ。それは自分で認識すべきだよ。君が居なければ、世界はとっくに滅んでいた。確かに君は世界を滅ぼしかけたのかもしれない、それに君が自覚があろうがなかろうが、結果として起きてしまったことを変えることは……そう簡単な話では無い。まあ、別に君が気にする問題では無いかもしれないけれどね、特に私が考えていることについては」
「……まさか、未だこの世界から脱出しようとか考えているんじゃないだろうな?」
コルネリアの眉が僅かにピクリと動いた。
「やはり考えているのか」
崇人は溜息を吐く。
それをつまらないことと見受けたコルネリアは首を傾げる。
「どうしてあなたはその事実を理解してくれようとしないのかしら。この世界がこうなってしまったのはもはや運命と言っても過言では無い」
「運命? 世界がここまで荒廃してしまうのは、決められていたことだっていうのか?」
「法王庁には記録が残されている、と言う。予言書、と言ってもいいかもしれない。それはこの世界の始まりから最後までを書き綴ったものであり、この先の物語も書いてあったらしいのよ。……そして、この世界は『一つの滅亡』を迎え、それが崩壊への合図となる。そう書いてあったとのことよ」
「一つの滅亡が……破壊の春風だってことか?」
「そうだと考えている、法王庁の人も多い。それに、それを信じる人も破壊の春風以降増えたというわ。まあ、実際問題、弱い人間同士集まって、どこかに心のよりどころを作ろうというもの。宗教ってたいていそんな感じだよね」
「お前それけっこうな人間を敵に回したぞ……」
コルネリアはテーブルに置かれたコップを手に取って、
「まあ、話を戻すけれど。この場所はかつて『神の山』と言われているのよ。なぜならティパモールにとってのカミサマがここで生まれたと言われているから」
「カミサマ、ねえ……。そんなものが居るなら弱者はとっくに救われているんじゃないか?」
崇人はそう言いつつも、地下の扉のことを思い返す。
確か扉には――彼の知る言語、日本語が描かれていた。
もし、神の山の伝承が本当ならば、ティパモールの神は日本人だった――ということになる。日本人は彼らにとってみれば異世界人であり、この世界の人間では無い。カミサマと思っても、致し方ないことなのかもしれない。
もちろん、その日本人――ひいては異世界人というのは崇人自身も含まれているということになるのだが。
「……そもそも、この世界でいうところのカミサマっていったいどんな存在なんだ? ティパモールのティパ神しか詳しい話を聞いたことが無いぞ」
「滅びた宗教の神しか知らないって、あなたもけっこう知識が偏っているわよね……。まあいいわ。私が教えてあげるから、きちんと理解しなさい。一応言っておくけれど、一回しか言わないからね?」
コルネリアに念を押された崇人は、申し訳なさそうに頷く。
それを見たコルネリアは、うんうんと頷いて、話を始めた。
コルネリアの話を簡単にまとめると、このようになる。
かつてこの世界には二つの宗教があった。一つは世界を取りまとめる勢力でもあった法王庁。その法王庁は法王という唯一無二の存在がおり、法王は神の代行者であった。即ち、事実上、法王庁は法王が私物化していた――そういう世論もある程だった。
二つ目はティパモール地区――ひいてはティパモール人が信仰していたティパ神だった。ティパ神はティパモール人の心のよりどころとしてあったもので、さらに言えば、ティパ神のために、と自らの命を顧みず行動した信徒も居るほど、信仰力が強い宗教であった。
ヴァリエイブルがティパモールを滅ぼしたことにより、ティパ神の信仰力は大きく低下。ティパモール人の絶対数の低下に伴い、法王庁の勢力も大きく増加した。
ヴァリエイブルが法王庁の勢力下にあったわけではない。しかしながら、ヴァリエイブルが法王庁に歯向かおうとするほどの反逆心? も無かった。
「……なら、今は法王庁が強い権力を握っているのか? それこそ絶対王政のような」
絶対王政――という単語は崇人が居た世界であった単語であり、この世界には存在しない。この世界の人間にその単語を話しても、頭にハテナマークを浮かべるだけに過ぎない。
コルネリアもその例に漏れず、その意味が理解できなかったのか、首を傾げた。
それを見た崇人は「またやってしまったか」と言わんばかりの表情を浮かべ、頭を掻く。
「ええと、要するに、権力を持った存在が一極集中してしまって、意見が聞き届けられない……ってことだ」
心の中で合っているよな? と付け足して、彼は言った。
コルネリアは手のひらをポンと叩いて、
「ああ、成る程。それならば解る。ゼッタイオウセーなどと言わず、そう言えばよかったのに」
「……悪かったな。つい、前の世界の知識が先に出てしまうんだよ」
崇人はそう言って首を振る。
コルネリアはそれを聞いて溜息を吐く。
「でもここにきて一年以上は経過しているのだから、少しはこの世界の知識を先導してほしいものね」
「皮肉を言っているのかもしれないが、俺は前の世界で三十五年も生きていたんだぞ。一年と三十五年じゃ大違いだ。単純計算で、三十五倍の知識を蓄えたともいえる。その世界の知識が先に出るのは、当然のことだろう?」
コルネリアの小言をそう言って華麗にスルーする崇人。
「……まあ、それはいいのよ。カミサマの話に戻るわね。ヴァリエイブルは表向きには法王庁の味方だったけれど、実際に法王庁を崇敬しているわけではなかったのよ。あくまで、政治的な付き合いだっただけで」
「なんだって?」
「政治的な付き合い、って言ったでしょ。あなたは大事な告白をそれで貫き通す男か?」
「……済まない。コルネリアが何を言っているのか本気で解らない」
崇人が白旗を上げたところで、さらにコルネリアは話を続ける。
「話を戻しましょう。ヴァリエイブルと法王庁は良好関係にあった。お互いの領土を侵攻しない不可侵条約も締結していたくらいにはね。けれど、それも長く続かなかった……。あなたも覚えているでしょう? ヘヴンズ・ゲートの話よ」
ヘヴンズ・ゲート。
法王庁が管轄している謎の門である。名前の通り、天国へとつながると言われているのだが――。
「でも、そんなことは無かった。中から出てきたのはアリスという少女。……いえ、あの中に居たのだから、ただの少女では無いでしょうね。私たちは独自に調査を進めた結果、あのアリスという少女はシリーズの一員であるという考えに至ったけれど」
アリス。
その単語は彼にも聞き覚えがある。
彼の世界での一般的知識において、アリスと帽子屋――この二つの単語が出た時に連想できるものとして『不思議の国のアリス』である。不思議の国のアリスで、帽子屋、即ちマッドハンターが出てきていた。彼の役割がどうだったかは、崇人もうろ覚えであったが、アリスの味方だったことは記憶に残っている。
では、この世界ではどうだろうか?
コルネリアも崇人もその名前を知っている、アーデルハイト・ヴェンバックのことだ。
彼女は最初、普通の少女だったが、ある時彼女はこう言っていた。
――私はアリス。
アリス――アーデルハイトという少女に良くつけられる愛称である。無論、それを知ったのはそれから随分とあとの話になるのだが。
「アリスと聞いて、私たちからすれば、アーデルハイトの存在を思い出す。それは仕方ないこと。あの時彼女はただ血迷ってそう言ったのではないか――そう思っていた。だけれど、この世界がこうなってしまった現状と、あなたがその記憶について曖昧であることを考えると……どうやらそう言えなくなってきた、ってことよ」
「シリーズについては未だ謎が残っているのが現状。だから、それを直ぐに解明しなくてはならない。でも、その解明するまでには時間と情報が足りない。足りな過ぎる。だから私たちも行動しなくてはならない。そう考えるようになった」
「行動?」
「ええ。行動。ハリー騎士団が解散したことは話したわね?」
コクリ。崇人は頷く。
「ハリー騎士団はおそらく……こちらに向かってきていると考えられる。というか、向かってきている。レーヴの監視ロボットがその一団を捉えたからね」
「なんだって、ハリー騎士団がこちらに?」
「正確に言えば、ハリー傭兵団ってところかな? 騎士団という名称は国が定めたものだから」
そんな話は全力でどうでもよかったので、彼はスルーする。
コルネリアもスルーされると思っていたので、落ち込むことなどしないで、さらに話を続ける。
「まあ、そんなことはどうでもいいのよ。核心だけ話しましょう。話が長くなってきて、理解も遅くなってしまうし。知っているかしら、人は二つ以上の要点を長時間覚えられない、ってことを。どうしてか知らないけれど、やっぱり人間も欠陥を持っている、ということになるのよね。面白い生き物よね、人間って」
「いや、人間の生態についてはどうでもいいから……。結論をさっさと言ってくれよ」
崇人はイライラしていた。
コルネリアは崇人がイライラしている様子を見て楽しんでいるようにも見える。
というより、ほんとうに楽しんでいる。
「……それじゃ、伝えてあげましょう。核心を。未だエイミーとエイムスにも話していないのだけれどね……、ハリー騎士団と手を組もうと考えているのよ」
「手を組む、だって?」
崇人は乾いた笑いしか出なかった。
なぜならハリー騎士団は彼を追い出したからだった。そんなところに彼の居場所は無かった。そこと手を組んでも、彼にとってメリットなど無い――そう考えていたからだ。
「まあ、そう怪訝に思うのも当然のことかもしれない。だって君を追い出したのだから。でもね、今は藁をもつかむ気持ちでね。頼れるなら猫の手でも借りたいのさ」
「……どういうことだ。シリーズが何か仕出かすとでも言うのかよ?」
「可能性はゼロでは無いね。寧ろここまで何もしてこないのが珍しいくらいに」
「珍しい、だって?」
「考えてみれば解る話だよ、タカト。仮に私たちを滅ぼすのが目的ならば、十年前に滅ぼしてしまえば良かった。けれど、シリーズは滅ぼすことも無く、十年間復興の時間を与えた。それはなぜ、どうして? 普通ならすぐに滅ぼしてしまっても良かったのではなくて? ……となると、目的は私たち人類を滅ぼすためでは無い、ということになる」
「人間を滅ぼすためじゃない? だったら何だというんだよ。人間を滅ぼすことじゃないということが、シリーズの狙いで無いのならば」
「さあねえ。それは解らないよ。神のみぞ知るならぬシリーズのみぞ知る、ってことさ」
「……全然言っていることが解らないよ」
崇人は持っていたコーヒーカップを傾ける。
コルネリアは座っていたロッキングチェアに背中を預ける。
「それは私に言われても困る。実際問題、シリーズの行動はまだ私たちにとっても解らないことばかりであることは事実だ。それに……」
「それに?」
「未だインフィニティがどういう扱いなのか、判明していない。奴らにとってインフィニティを使うことは、何らかの重要なステップになると考えているのだが……。全然、その証拠が掴めないのだよ」
インフィニティの役割。
それは操縦者たる崇人ですら解らなかった。
インフィニティの凡てを、そもそも彼は理解しているわけでは無い。インフィニティがインフィニティたる所以だとか、インフィニティがどうして開発されたのか、まったくもって理解できないのである。
「確か情報によれば……インフィニティはとある天才科学者Oによって開発されたのだったな。しかしそれがいつの時代に作られたのかは不明。まさに謎の存在となっているわけだ」
「……まさかとは思うが、お前楽しんでいるのか?」
「楽しんでいる? この状況を、ということかい」
崇人は頷く。
コルネリアはワイングラスを傾け、ふう、と溜息を吐いた。
「まあ、いいわ。未だ時間はたっぷりある。その間、私たちがやってきたことについて簡単に説明しましょうか。とはいえ、それはたった一言で片付いてしまうことでもあるし、膨らませれば膨らませることも可能と言えば可能だけれど……、それは面倒だからやめるよ」
「……回りくどい言い方をするな」
「何せ十年近くもリーダーを務めていたからね。結果として、このように回りくどく一言で済む事実を五分以上かけて話すことが出来るようになった。会議とかの決められた時間をうまく潰すための方法と言えばいいかな……。もちろん、それを使う時間というのは、徐々に失われつつあるのだけれど」
「まあ、そんな細かい話はどうだっていい。いいから、結論だけを言ってくれよ。未だ確証は掴めないが、きっと時間はそう残されていない」
「残されていない、って……。どうしてそんなこと解るのよ」
「勘だ」
「勘、って……」
「大体そういうものだろ。まあ、もしかしたら違うかもしれないけれど」
「違うかもしれないのなら、言わないでほしいのだけれど?」
コルネリアは机上に置かれた資料を見始める。
崇人は資料を見つめるコルネリアを見ながら、呟く。
「……なあ、それはいったい何の資料だ?」
「かつてヴァリエイブルという国が持っていたリリーファー『インフィニティ』の研究レポートと、伝説上のリリーファー『アメツチ』に関する情報の凡て」
端的に言ったが、それは彼にとって最重要な情報だった。
だから崇人はその情報を見たかった。共有したかった。
「……見たい?」
頷く崇人。
「どうしようかなあ」
「そこで悩むのかよ」
「だって、結構重要な情報だからね。そう易々と見せられるものでもないのよ」
「ううむ。確かにそれもそうかもしれない……。だが、僕は当事者だ。教えてくれてもいいのではないか?」
「当事者、ねえ」
コルネリアは手元にあったペンを持ち、それをくるくると回す。
いわゆるペン回し、というやつである。
「確かにあなたは当事者かもしれない。けれど、そんな単純な理由で情報開示レベルを引き上げるわけにもいかない。それについては解ってほしい」
「なぜだ! 十年前の真実を知ることが出来るかもしれないというのに!」
「それを知ったところで、十年前に死んだ人間が戻る訳じゃあない」
辛辣なひと言、だが的確だった。
「……確かにそれはそうだが」
崇人もそれを聞いてどこか視線が落ちる。言葉を話すことすらしなくなってしまった。
それを見てコルネリアは溜息を吐く。
「まったく。ほんとうにこいつが、あの『女神』が愛した男だというのかねえ……。こういうものを見ていると、それが嘘じゃないかと思えてくるよ」
「そんなこと言わないでくれよ。やっぱり、怖いものは怖いんだよ。そうやって掛け値なしに勇気を振り絞ることが出来るなんて、現実じゃあそう簡単な話では無い。それくらい、コルネリア……君だって解るだろう?」
「そうかもしれない。だが、君は――」
コルネリアは崇人に思いのたけをぶちまけてしまおうと、そう思った。
――その時だった。
「リーダー! ちょっと今いいですか!」
入ってきたのはエイムスだった。
エイムスは肩で息をするほど、息も絶え絶えだった。どうやら長い距離を走ってきたように思える。
「どうしたの、エイムス。そんなに慌てて」
コルネリアは訊ねる。
しかしそれと同時に、彼女は漸く来たかと――そう思った。いつ来るか解らなかった『それ』がいつやってくるのかを、彼女は今か今かと待ち構えていた。
そして、その時は来た。
ついに、やってきたのだ。
「やってきました。敵……敵です! リリーファー数機と、それが守るようにトラックも来ています! このまま、我々も迎え撃ちますか!?」
「いいや、別に構わない。きっと彼らは戦争をここで始めようなどと思ってはいないだろう。そう考えれば、彼らも我々と同じ立場と言えるだろう」
「は、はあ……? そうですか……。ほんとうに、大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だ、私を信じなさい」
その言葉にエイムスは何も言わなかった。彼は無言で頭を下げると、部屋を後にした。
「……随分と慕われているのだな。こういう時であっても冷静に対処するコルネリアもすごいが、あの意見をすぐに鵜呑みにしたエイムスもエイムスだ。強固な絆が生まれているのかもしれないな」
「やめてくれよ、タカト。そんなこと、まさか君の口から聞くことになるとは思いもしなかった」
「言葉、って……絆とか、か?」
まあそんなところだ、と答えるコルネリア。
コルネリアの予想は正しかった。
そしてそれはあるデータによるものなのだが――今の彼には知る由も無い。
「絆、か。確かにそれもあるだろうな。あのころは君も私も若かった。いろいろなことを知らなかったしいろいろなことを知った。だからこそ、今の薄汚れた世界に順応した私が居るわけだが。……ああ、タカト。君は違う。君は十年間眠っていた。その間に私が汚くなってしまった。ただそれだけのことだよ」
「……そんなことは」
無い――とははっきりと言うことは出来なかった。
それは、崇人が元居た世界だって、言えたことだからだ。
年齢を重ねるにつれ、社会を知っていくにつれ、自分の立場を理解していくにつれ、自分という存在が薄汚れていくのを感じる。無垢な少年だった頃には、もう永遠と戻ることは出来ない。あの純粋な感情を取り戻したくても、時間がそれを許してはくれない。
世界は、どこまでも残酷だった。
世界は、どこまでも残虐だった。
世界は、どこまでも孤独だった。
世界は、タカトを蝕んでいった。
一人の少年の心を、汚していく。
それが世界の仕組みであり、時間の仕組みであり、社会の仕組みであった。
どんなに綺麗にしたくても、汚れを知った人間が真っ白になることは出来ない。
一度汚れた洋服をどんなに綺麗にしても製作時の状態にならないのと同じように。
「さて、私たちも向かおうとするか」
コルネリアは立ち上がると、部屋を後にしようとする。
彼はコルネリアの背中に問いかける。
「待て。どこへ行くつもりだ? お前は、コルネリアは、今から誰がやってくるのか、解っているとでもいうのか?」
踵を返し、頷くコルネリア。
「コルネリア、君は何を知っている?」
「それを今から教えるために行くのだよ」
コルネリアは微笑み、再び足を動かす。
今は彼女の言葉に従うしかない、そう思った彼は溜息を一つ吐いて彼女の後を追った。
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