第8話 ノーベンバー2

「ガルルル!」

森の中を進むウァズワースは狼に囲まれていた。

「なんだ? おまえは? ここには人間がたくさん通るはずなんだが?」

魔王の手下のカシオスが姿を現す。

「心配する必要はない。」

ウァズワースはカシオスの疑問に答える。

「なに!?」

カシオスはウァズワースの言葉に不快感を示す。

「なぜなら、おまえは私がここで殺すからだ。」

ウァズワースはカシオスを睨みつけ、魔族としての黒い気をオーラのように体から放出させる。

「おまえ!? 人間じゃないな!? まさか!?」

カシオスはウァズワースが人間ではないことに、やっと気づいた。

「魔族だ。だが、おまえたちみたいな下級魔族とは違うのだ。」

ウァズワースの素性はかなり良い魔族だった。カシオスは下級魔族。

「バカにするな!? いけ! 狼ども!」

カシオスは狼に命令する。

「ガオー!」

狼たちはウァズワースに突撃する。

「望むなら殺してやろう。」

ウァズワースの手に火の球が現れる。

「デビル・ファイア。」

ウァズワースは火の球をノーベンバーの森に放った。



「みんな! 今日は、この岩場で野宿よ!」

「おお!」

オクトーバー村の人々はノーベンバー町との中間地点の岩場にやって来た。村の人々たちは、明日にはノーベンバー町に着くと思っているので明るい雰囲気で、まるで遠足でしているような雰囲気があった。

「イリーナ、大丈夫?」

俺は気負っているイリーナを気にかける。

「私は大丈夫よ。」

イリーナは疲れているのだろうが、村人を不安にさせないために気丈に振る舞っている。

「ガオー!」

その時だった。岩場で休む俺たちに狼の遠吠えが聞こえた。

「なに!?」

「狼だ!?」

驚くイリーナ。俺は狼だと直感した。村人たちに変な緊張感が走る。

「俺が見てくる! イリーナは村のみんなと待っていてくれ!」

俺はカッコつけようとしたのではないが、自然とイリーナや村の人々を守らなければいけないと自然に体が動いて、森の方へ駆けていった。

「アイン! 気をつけてね!」

イリーナはアインの背中を心配そうに見つめる。



「か、数が多過ぎる!?」

狼たちと遭遇したアインは10数匹の狼を目の前にして怖気づいていた。剣を構えていても、どこか腰が引けていた。

「ガオー!」

殺意に満ちた狼たちが一斉にアインを目掛けて飛び掛かってくる。

「絶対に俺はイリーナを守るんだ!」

足が震えて動けないアインは死を覚悟するも、イリーナを守りたいという思いだけで狼の前に立つている。

「うわあ!?」

狼たちに一気に襲われた俺は地面に押し倒されしまう。


つづく。

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