不幸な夕立
急に曇りだした
もう降るだろう
そう思っていたら「雨だ雨だ」と軒先に人が増える
私はレジに立ちながらチラリと横目で外を見る
ガラス張りの出入り口の人に
地面には雨粒の痕が色濃く増えていく
何かが塗り替えられていく様は「綺麗だなあ」と口に出していた
隣のレジから同僚が「もう上がりなのに」と愚痴を言う
そりゃあ今日の天気予報で夕立になるなんて言われなかった
ご愁傷さまです、と思いつつ「夕立ですから、すぐ止みますよ」と冷めた慰めをする
用意周到な私は着替えの入ったロッカーに折り畳み傘を常備してある
貸す気は毛頭ない
どうぞ、濡れて帰ってください、そう言いたかった
わざとレジ打ちを遅くして他人に捌かせる同僚が嫌いだ
だから濡れて帰ってほしい
どうせビニール傘を買って帰るだろうが、それもまた美味しい
他人の不幸を願ったせいだろうか
同僚が帰る頃には「不幸」にも雨は小雨となり
多少嫌な思いをしつつも無難に帰れそうだった
心の中で舌打ちする
あの同僚は傘を買いに来なかった
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