2019年2月6日

 今では東京都全域のコピーが作成されている時代だ。これなら首都直下地震などの大災害に見舞われても首都機能を喪失せずにすむ。

 立川市とどこかを結ぶバーチャル連絡橋は、ぼくの地元・三重県四日市市に存在する。未だ全面的な完成には至らないが、すでに一部区域は通行可能となっている。

 ぼくはその橋を渡っていた。いわゆるアーチ橋だ。車道はなく、全面が歩道なのだがアスファルトで舗装されている。しかもアスファルトは色褪せていて、基部のコンクリートにも劣化がみられた。

 橋には鉄筋コンクリート造の駐車場のような建物が隣接していて、橋のちょうど半ばのあたりでその建物に渡ることができる。渡った先では炭の入った発泡スチロールの箱を次々と開封していく40代ほどの女性がいた。

 この階は焼き肉屋になっているらしく、女性の奥にはたくさんのテーブルと椅子が並んでいた。時間帯のためか、それともまだ回転していないのか、客の姿はなかった。

 橋を渡り切ろうかというあたりで、高校生くらいの年頃の少年がアスファルトの熱を利用して焼かれていた直径30センチはあろうかという大きな牛肉を棒きれで器用にすくい上げた。少年はそれを友達に自慢して笑っている。盗みだ。その肉はさっきの焼き肉屋のものなのに。

 ぼくは咄嗟に少年の腕を捕まえた。悪行をとがめるぼくに少年は反論するが、そこに居合わせた聡明な少女が的確な言葉であっさりとそれを潰していった。

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