2018年11月3日

 電車に乗る前にトイレを済ませておくべきだと思った。名城線の銀色の電車を横目に公衆便所を探す。ホーム付近は混んでいるから、離れたところを探した。

 公衆便所は実は公衆風呂だった。120センチ×70センチくらいの浴槽が仕切りもなしに並んでいる。ぼくは一番左奥の、2つ連続して並んでいる浴槽の奥のほうを使うことにした。

 ぼくはシャワーを流しながら大便をひり出した。よく見たら浴槽の真ん中の排水口の近くに、2センチくらいの小さなカエルがいる。浴槽にはぬるく少し灰色に濁った湯が溜まった。いたずら心で熱湯を出してやったらどうかなどと思ったが、とくに何もなかった。飽きてその場をあとにした。


 劇場にたどり着いたのは17時30分だった。一番観たかった作品は10分にすでに上映開始している。仕方ないので今すぐ始まる作品を滑り込みで観ることにした。

 ぼくの座席は比較的前方のステージから見て左側、3席が連続したブロックのこれまた左側だったが、その3席を全部使って浮浪者じみた汚い身なりの中年の男が寝ていた。押しのけて座ると、男はしぶしぶ右側の席に座った。やがて紳士が来て、真ん中の席に座った。

 映画ではなくライブが始まり、ちょうど持っていたキングブレードを赤く光らせて盛り上がった。


 実家に帰ると、夜中だというのに祖父が庭で幼稚園児の背丈ほどに伸びた芝を切っている。ぼくは自分の机の上に小説を書くときに使うポメラとノートが一式広げられているのを見て、作業の途中だったことに気づいた。どうやら掃除のために誰かが一時片したらしいが、丁寧に元通りにされていた。

 台所には上司がいて、ささみの唐揚げ丼を食べていた。嘘をついて社員同士褒め合うという、かの悪しき恒例行事をやったらしい。上司は同僚になにやら都合してもらってうまくやったらしいが、僕はそれは廃するべき伝統だと思った。

 石油ストーブは白い柵で前後左右と上方を囲われている。その柵の上に新聞が放置されていた。広告欄に東京の吉祥寺より西にある大手悪徳デパートを糾弾する本が宣伝されており、乙一がコメントを寄せていた。

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