タニン ノ シアワセ

 川を、見たかった。

 川原で空を、見たかった。

 そこへ向かって歩いた。

 近付くほどに増していく人の密度。


 不意の轟音に、耳を抑えた。

 頭をよぎるのは、ニュースや授業で見た、見せられた映像。

 銃の乱射、爆破テロ、過去にこの国であった戦争。

 続いた閃光に、目を細めた。

 視界がチカチカと明滅する。

 空気が揺れる。


 歓声が上がる。

 拍手が起こる。


 手にしたスマートフォンを斜め上に向けて構える人たちがいた。


 見上げれば、球状に、もしくは多様な形に配置された点が同心球状に広がって、散っていった。


 かつては命も、散っていったはずだ。


 すぐそこで、花火が上がった。

 それに合わせて、犬が吠える。

 人混みが行く手を阻む。

 わたしは前に、進みたいのに。

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