第119話 飛竜の変身術
兵隊さん達は、半分は村に常駐、半分が捕虜を引き連れて、一番近い町へ護送して行く事に成った。
その前に、敵兵の兵長らしき人物が意識を取り戻したので、尋問をする事になった。
「お前らは何処の国の所属の軍隊なのか、侵攻の目的を述べよ。」
「…………」
まあ、喋るわけ無いか。
でも、この村の国境の向こう側はスパルティアなんだから、そこで間違いは無いんだろうけどね。伝令もそう言っていたし。
だけど、隣国同士を争わせて国力を削ごうという第三国の策謀という可能性も無くはない。
40人という少ない人数で侵攻を掛ける意味って何だろう?
服装とか装備も微妙に盗賊団っぽく偽装しているけど、隊列の組み方とか、動きとか、言葉遣いとか、どう見ても何処かの軍隊なのはバレバレで、素人が見ても分かるレベル。これでバレてないと考える程向こうは間抜けじゃないと思うんだよね。
という事は、山賊に見せかけた軍隊であると見せかけた、本当の山賊……と見せかけた正規軍と思わせといて第三の国の軍隊と匂わせて、実はど直球に隣国の軍隊……ええい! めんどくせー!!
取り敢えず状況を整理してみよう。
敵は、私達がここに到着するのは10日後と読んでいた。
村を占拠した後は、軍隊がやって来るであろう街道へ攻撃出来る有利な場所に陣を構えて、待っていた。
生体火炎放射器の
首尾良く事が進んだ場合、多分、背後には大部隊が控えていて、速やかにこの地を占領して要塞化し、国境宣言をする手筈だった?
私達が異常な速さで空からやって来て、あっという間に村を奪還してしまったので、予定が狂った。
背後にいきなり現れた敵に対処するため、慌てて街道に敷いた陣から引き返して来たのだが、何故か
訳が分からない内に捕虜にされ、尋問を受けている ← 今ここ。
「こんな感じ?」
「恐らくな。互いに争わせて両国の国力を削ごうという第三の国の陰謀という線は、可能性として無くは無いが、我々が報復に国境を越えなければ何も起こらない訳だし、背後に大きな軍隊が控えているのなら、まず宣戦布告が来るはずだからな。」
「軍隊が近くまで来ているのかどうか、確認する方法があれば良いのだが……」
「斥候を出してみるか?」
軍隊長さん達、考え込んじゃってるな。
まあ、斥候を出してみるのが手っ取り早いけど、先に向こうに見つかった場合、宣戦布告と取られ兼ねない気もする。
こちらが先に仕掛けて来たんだろうという口実にされたら面倒だ。
冒険者風に偽装して、送り込むか? ……うーん、敵に捕まった場合、見殺しにしなければならない事になりそう。
「だったら、空から偵察してみればいいじゃん?」
「空からって、そんなばか……な! 出来るじゃねーか!」
そう、うちは出来ちゃうんだよね。
「では、ちょっくら行ってきまーす。」
私は、隊長さん2人を持ち上げて、上空へ舞い上がった。
上空1000ヤルト(1000メートル)まで上がり、腰のポーチから遠眼鏡を取り出して回りを見てみる。
私だとどういう所に隠れるのかが良く解らないので、遠眼鏡を隊長さんに渡して、私は裸眼で探す事にする。前にも言ったけど、私は視力が良いのだ。
「この遠眼鏡という道具は便利な物だな。これも魔道具なのか?」
「いや、それは普通の道具ですよ。私のお師匠の持ち物だったのだけど、パクった。」
「ほほう、ロルフ様の……さもありなん。」
そう、この世界では、ガラスが貴重で、特にレンズに出来る程の透明度の有るガラスの製造が難しいらしいんだよね。しかも、それを歪み無くレンズに加工するのも難しい。お師匠は何処で手に入れたんだろう?
「敵の気持ちになって考えると、どういう所に軍隊を配置するかな? 普通に考えたら、見通しの良い高台に指揮官の陣地を張るよね。」
「そうだな、平野全体を見通せて、しかも敵からの攻撃が届かなそうな場所と成ると……あ、あった。」
有るんかよ。じゃあ、やっぱり第三国の策謀じゃなくて、隣国の侵略って事で確定なのか。なんとも、ド直球でしたね。
「いや、向こうの国にも何か、こちらに不穏な動きがあるとか働き掛けているのかもしれんぞ?」
ああ、そういう事もあるのか。もう、考えれば考えるほど何かの罠に嵌っていく感じ。
向こうは全く動く気配が無い。
こちらの出方待ちなのか、先遣隊のこの捕虜達の報告待ちなのかも。
「あー、
私達が地上に降りると、ウルスラさんが駆け寄って来た。
「敵の軍隊は見つかりましたか?」
「うん、居た。大体2万人位かな。今は全く動く気配は無し。
『--我が子達です! 3頭居るはずですが……--』
「うん、3頭居たよ。これで隣国で確定か。」
まあ、ほぼこの隣国のスパルティアで確定だよね。
どうする? こちらの本隊が到着する10日以内には動き出す可能性は大きいぞ。
「私が行って、サクッと敵の本陣を潰して来ようか?」
私はこの国の人間じゃないから、例え捕まっても大事にはならないだろう。捕まりはしないけどね。
「駄目です! ソピア様1人をそんな危険な任務に向かわせる訳に行きません!」
ウルスラさんだよー。
『--我も行くぞ。
『--我が子の奪還に何故向かわずにいられましょう!--』
竜達もかよー。
私達は、
「ねえ、プローク、
『--うむ、かなり低いぞ。人間よりちょっと多い位だ。--』
えーー……、って、竜族の人間に対する評価低ーー。知能が低くて、魔力も少ないと思われているんだー。えーーー……。
「じゃ、じゃあ、
『--おお、そんな事が出来るのですか?--』
『--出来るぞ。直ぐに覚えて戦力の足しになれ。--』
言い方!
じゃあ、さくっとプロークとウルスラさんで
あと、捕虜はさっさと近隣の町へ護送して、村人の避難もお願い。近くの町へ伝令を出して、兵隊も借りてきた方が良いかもね。
さて、私達は、何処の国の所属とも知れない、通りすがりの冒険者だ。
攻撃されたなら、派手に暴れちゃっても良いよね。
ただし、殺すのは無しよ。向こうはこっちを殺す気で来るんだから、情けは無用という考え方も有るだろう。だけど、それは攻撃力が拮抗している者同士の暗黙の了解だと思うのね。
私と竜2頭だと、明らかに攻撃力が高すぎて、軍隊相手だとしても、オーバーキルだと思うの。手加減出来るのなら、してあげようじゃないの。
本気で殺る気なら、あの敵の大将の居る小山をクレーターに変える事だって出来るのだから。
電撃でスタンさせる程度が妥当でしょう。
便利だなー、電撃。
さて、
と、そちらを見ると、スラッとしたファラ・フォーセットが立っていたよ!
「誰だよ!!」
思わず叫んじゃったよ!
てゆーか、おまえメスだったのかよ!
『--子が居ると言っていたのだから、メスに決まっておろう?--』
「えー、竜族って、オスは子育てしないの? っていうか、竜族の生態なんてどうでもいいよ!」
翼の修復目的だから、別に人間に変身しなくても良かったんだよ!
しかも、プロークよりも習得早くなかったか? 本当に正竜より知能低いのか!?
プロークが、右下の地面を見つめながら落ち込んでいるよ?
「よし、作戦決行!」
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