第805話 戦後処理-9!
騎士団を率いていたのは、王国騎士団団長のソディックだった。
俺たちの討伐が目的なのか……いや、戦力差を知っているソディックが、そのような選択をするとは思えない。
なにより、騎士団が動くということは、国王から命令があったと考えるべきだろう。
騎士団は俺たちの前まで来ると、一斉に立ち止まる。
日頃の訓練の成果なのだろう。綺麗な隊列を保っている。
騎士団たちを見てみたが、怪我を負っている者たちは居ないようで、少し安心した。
ソディックは俺たちを見渡すと、緊張した面持ちで口を開いた。
「冒険者タクト様及び、従者のシロ様にクロ様。そして、第一柱魔王のアルシオーネ様に、第二柱魔王のネロ様」
俺たちの名を呼びあげる。
俺を「殿」でなく「様」と言うあたり、客人としての立場だと理解出来る。
それに緊張していることが、若干震える声からも分かる。
後ろで整列している騎士たちも、ソディック同様に緊張しているのが見ていてわかった。
仮にも魔王の目の前に居るのだから、騎士団全員が生きた心地をしないのかも知れない。
騎士団が俺たちの所に来た時点で、良い話では無いことだと感じた。
「御手数ですが、エルドラード王国国王ルーカス・エルドラードが、皆様との対談を希望されております。失礼だと知ったうえで、申し訳御座いませんが、御同行頂けませんでしょうか?」
俺はアルとネロと、顔を見合わせる。
仮にも魔王を王都に入れようとしているのだ。
王都の住民たちは、この事を知っているのだろうか?
もし、街の人々がアルやネロに対して、無礼なことをしようものなら、王都が崩壊する危険だってある。
「王都にいる人々は、俺たちが王都に入ることは知っているのか?」
「はい。先程、国王様からの言葉を伝えております」
シロは俺たちと一緒に居るので、拡声器のような方法で伝えた訳でなく、従来のように騎士団が街の至る所で、声を張り上げて国王の言葉を伝えたのだろう。
「確認するが、俺たちに危害を加えることは無いんだろうな?」
「はい」
「危害というより、敵意があれば王都への攻撃もやむなしだと分かったうえで、王都に招き入れるということで、いいのか?」
「はい、その通りです」
ルーカスからの言葉とは言え、王都に居る人々全ての感情迄、コントロールすることは出来ない。
俺は【念話】でアルとネロに、王都で失礼な態度を取られたとしても、すぐに攻撃するようなことはしないように頼む。
ネロは俺の意見を聞き入れてくれたが、アルは状況によると回答された。
アルの気持ちも分かるし、俺の我儘なので無理強いすることは出来ない。
「客観的な意見を聞きたい」
「はい、なんでしょうか?」
「国民は俺たちを、どう思っている?」
俺はソディックや、後ろにいる騎士たちを見ながら話す。
「どうとは……」
「好意的とは、否定的だとか――そういう感覚的な意味だ」
俺の言葉に後ろにいた騎士たちは顔を見合わせていた。
ソディックも、後ろで騎士たちが、ざわついているのを感じたのか振り返る。
騎士たちはソディックの視線を感じると、姿勢を正した。
「正直なところ、王都を救っていただき感謝している者も居ますが、魔族――魔王という存在に怯えている者も居るのは確かです」
まぁ、そうだろう。
そんな簡単に受け入れられるほど、感情を切り替えることは出来ない。
アルがエビルドラゴンと戦っている姿を見ている者も居る。
騎士や冒険者であれば、圧倒的な力の差を痛感しているので、歯向かおうとする気すらないだろう。
厄介なのは、力の差が分からない者たちが感情だけで動く、無知な者たちだ。
俺たちに危害を加えるとしたら、そういった類の人々だろう。
「我らが、タクト様たちの周囲を護衛致します」
護衛――。
俺たちを守る為でなく、街の人を守るという意味で言ったのだろう。
「分かった。国王に会おう」
「有難う御座います」
ソディックが頭を下げると、後ろにいた騎士たちも一斉に頭を下げた。
ルーカスに会うということは、ユキノにも会うと言うことになる。
生き返らせたことについても、追及されることは間違いないだろう……。
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