第764話 助け合い!
「凄いな……」
俺は会場の豪華さに驚く。
準備中とはいえ、かなりの豪華さだ。
「師匠~」
笑顔のネロが、物凄い勢いで走って来た。
「待っていたの~」
挨拶する間も無く、言葉を掛けられて強引に手を取られて連れていかれた。
「遅いのじゃ!」
何故か、アルからも叱られる。
「順調そうだな」
「もう、面倒なのじゃ‼」
アルは忙しさから、ストレスが溜まっているようだ。
「何が問題なんだ?」
「……色々じゃ」
アルがあげた問題点は、大きく四つだった。
一つ目が、対戦相手を決めること。
二つ目が、進行役。
三つ目が、対戦会場となる机と椅子の配置。
四つ目が、審判。
「……殆ど、決まっていないんじゃないのか?」
「違うのじゃ‼」
アルが言うには、草案の段階ではゾリアスたちとも相談していたそうだが、具体的な話に進むと、自分とネロの二人で出来ると思っていたそうだ。
しかし、対戦相手は適当に座れば良いと思っていたし、進行役や審判もアルとネロ、グランニールでするつもりだったようだ。
会場の机と椅子の配置も特に考えていないと、不貞腐れように話す。
俺はアルとネロに対して、諭すような口調で話す。
「なんでも自分たちだけやろうとせずに、周りを頼ったらどうだ?」
「それは出来んのじゃ、妾の力不足じゃと思われる!」
「そうなの~、ゾリアスたちが来たけど断ったの~」
「確かに、その考えは理解出来るな」
「そうじゃろう」
「しかし、逆の立場だったらどうだ? 村の仲間が苦しんでいる時に、何も出来ないのは悔しくないか?」
「……それは」
「力不足なのは仕方が無い。しかし、仲間というのは足りない部分を、お互いに補う存在だと俺は思っている。村人たちが、困ったときにアルやネロが助けてくれたことだってあるんだし、誰もアルやネロのことを力不足だとは思っていないと思うぞ」
「……本当にそうなのか?」
アルは疑うような目で俺を見るし、ネロも不安そうに首を傾げている。
強すぎるがゆえに、頼られることはあっても頼ることが今迄無かったのだろう。
弱みを見せれば付け込まれるとでも、思っていたのかも知れない。
先日、ゾリアスから俺に心配で連絡があったので、大体の状況は分かっていた。
最初こそ、ゾリアスたちに話を聞いたりしていた。
場所などの確保が出来て、開催日が決定する。
人族への案内はゾリアスに頼んだそうだが、それ以外は二人で準備をしていたようだ。
「俺も一緒に行ってやるから、ゾリアスたちに協力して貰おうな」
「……分かったのじゃ」
「一緒に行くの~」
俺はアルとネロを引き連れて、ゾリアスや村人が集まっている場所に歩いて行く。
「おぉ、どうした?」
俺に気付いたゾリアスが声を掛けるが、アルとネロの様子がおかしいことに気が付いている。
「皆にアルとネロから話があるそうだ」
「……」
アルとネロは恥ずかしいのか、話を切り出せないでいる。
「ほら、恥ずかしがらずに言ってみろ」
「……分かっておる」
アルは恥ずかしそうに、ゾリアスたちゴンド村の村人たちに話し掛ける。
「妾とネロだけでは、無理なことに気付いたのじゃ。お主たちの申し出を断ったのに、こんな事を言うのは申し訳無いと思っておるが、妾とネロに協力して貰えんじゃろうか」
「お願いしますなの~」
二人は恥ずかしそうな顔を隠すかのように頭を下げた。
数秒の沈黙の後、村人たちは騒ぐ。
「そんなの当たり前じゃないですか!」
「アルシオーネ様もネロ様も、みずくさいですよ‼」
「俺たちは何をすればいいんですか!」
村人たちは、アルとネロの言葉を待っていたとばかりに、喋り始める。
この状況にはアルとネロも驚いていた。
「村人たちは、世話になっているアルとネロの力になりたかったんだよ」
「そ、そのようじゃな」
アルとネロは、戸惑いながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。
「困っている仲間は放っておけないからな」
「仲間か……仲間とはいいものじゃな」
「あぁ、仲間はいいもんだ」
俺はアルと目線を合わせることなく、村人たちを見ながら会話をした。
「アルシオーネ様。机はここでいいですか?」
「ネロ様。対戦相手を決める木札はこれくらいでいいですか?」
村人たちが、アルとネロに確認をしながら会場が出来上がっていった。
対戦相手は参加人数の分の数をかいた木札を箱に入れて、参加者が箱から木札を取って対戦相手を決定することにした。
村の大人たちは、自分の村の祭りというよりも他から来てくれる人たちを歓迎する感じなのか、何人かは参加はせずに、裏方に回ると言ってくれた。
アルとネロは不満そうだったが、待ち時間などもある為、軽い食事の準備なども用意する必要があるので、村人たちの意見を聞く形となった。
当然、審判も村人が行う。
司会進行は、出来る者がいないのでクロに頼んだ。
俺をシロは料理係で協力する。
ビンゴ大会とは違う感じになる為、新鮮な雰囲気になるのだろうと、俺も期待していた。
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