第674話 枯槁の大地再生計画-4

 案内された部屋には、ネイラートと見知らぬ六人の男性が居た。


「何かあったのですか?」

「忙しいのに悪かったな。急な用事で国王に報告がある」

「そうですか。私からもタクト殿に御報告があります」


 ネイラートから『サイノス』と言う元大臣を処刑したと報告された。

 サイノスは前国王に仕えていた。

 ウーンダイより実権の一部を任されていた事で、私利私欲の限りを尽くしていた。

 自分に逆らう者や、気に入らない者は理由を付けては殺していた。

 サイノスに逆らえば殺される。

 城に仕える者達では常識だった。

 ウーンダイや、タッカールは興味が無かったのか、サイノスの勝手を許していた。

 タッカールいや、ウォンナイムが黙認していたのは、サイノスの行動が自分の計画に沿っていたからかも知れない。


 サイノスはネイラート達がエルドラード王国を目指していた際に、ネイラート達の事を密告したイスノミ村を人々を殺すように指示をした人物でもある。

 死ぬ直前まで、都合の良い事を叫んでいたそうだ。

 しかし、ウーンダイやタッカールの後ろ盾を失ったサイノスを哀れむ者は無かった。

 ウーンダイの影響力を失うと同時に、好き勝手やっていた者達に罰が下る。

 数日しか経っていないが、少しずつだが国が良くなっていた。


 問題はウーンダイに使えていた『六道衆』だった。

 メルダ王妃同様に、王であったウーンダイの様子に疑問を抱き、独自に調査をしていたが、ウーンダイやタッカールに見つかり反逆罪として投獄されていた。

 公式には処刑されていた事になっていたので、発見された時は驚いたそうだ。

 タッカールに化けていたウォンナイムが、人体実験用に秘密裏に生かしておいたようだ。

 ネイラートの行動が、もう少し遅ければ彼等も実験体として利用されていたのだろう。

 正直、ネイラートは六道衆の処罰に困っていた。

 前国王に使えていた者達を、国民が納得するかだ。

 国民達には既に死刑とされた存在と言う事も影響していた。

 結論が出るまでは、城で待機する事とした。


 俺がネイラートと話す度に失礼だと思っているのか、不機嫌そうな目で俺を見ていた。

 国王になったネイラートが、冒険者の俺を敬称付けで呼んでいるのも、気に入らない理由の一つだろう。


 それに気付いたネイラートが、この場に居た全員に俺はこの国の救世主で、自分の大事な客人だと伝える。

 そして、「決して失礼の無いように」と付け加えた。

 この言葉で、俺への態度が変わった事は言うまでも無い。


「私からは以上です」

「そうか。では俺の用件だな」


 枯槁ここうの大地を再生させる事を伝える。


「そんな事が可能なのですか?」

「俺であれば出来るそうだ。詳しくはこいつ等に聞いてくれ」

「こいつ等?」


 俺は水精霊ウンディーネのミズチを呼ぶ。

 隣には地精霊ノームのノッチと何故か、風精霊シルフのアリエルも居た。

 俺はミズチ達を紹介するが、ネイラートとイエスタや六道衆は疑っているのが良く分かる。

 俺は大抵の場合、疑われる事が多いので慣れているが、アリエルは自分達が疑われているのが気に入らないのか、風で六道衆を空中に浮かばせる。

 六道衆は慌てふためいている。

 名前こそ、六道衆と大層な名だが実力で言えば、エルドラード王国の冒険者のランクB相当になるだろう。

 【神眼】で鑑定したので間違いない。

 六道衆の中に鑑定士も居ないので、精霊族かの判断さえも出来ないようだ。


「タクト殿、彼等を下ろしてくれるように頼んで頂けませんか?」


 ネイラートが必死で訴えてくるので、アリエルの顔を見ると「仕方ない」と言う表情で、ネイラートの頼みを聞いた。


「上級精霊族を馬鹿にすると、国くらい簡単に滅ぶからな」


 俺は脅しを掛けておくが実際、その通りだと思っている。

 六道衆には、良い教訓となっただろう。


「続きの話をしてもいいか?」

「御願いします」

「ノッチ、頼めるか?」

「分かった」


 ノッチは俺が魔素を取り除いた後、樹精霊ドライアドの魂を見つけて、再生させる。

 再生にはノッチと俺の力が必要だと、簡潔に説明した。

 そして、森の生態系が出来上がるまで、むやみに伐採をしたりして森に危害を加えないようにしないと、この国に災いをもたらす事になる事を話す。

 森が再生すれば、この国は今迄以上に発展するので、必ず守って欲しいという言葉で説明を終えた。


「分かりました、上級精霊の言葉です。お約束致します」


 ネイラートは了承する。

 そして出来れば再生する瞬間に立ち会えないかと、頼んできた。


「魔素が充満しているので、人族は俺以外近寄るのは難しいだろう。明日以降であれば確認出来るので、誰かを派遣して確認でもしてくれ」

「分かりました」


 ネイラートには六道衆が常に護衛として居る為、俺が【転移】を使って移動させる事は極力、避けたいと思った。

 昔のルーカス達のように、我儘を聞いていた時が懐かしいと思えた。

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