第588話 技術魂、再び!
まず、動画撮影の道具も大事だが、記憶媒体が必要になる。
今、カメラに使用している『精霊石』に動画が保存出来るのかを【全知全能】に確認すると、保存可能だった。
つまり精霊石は、俺の知っているUSBメモリと同等の機能を持っている。
静止画や、動画関係無く保存が出来るので、あとは撮影する道具の製作だろう。
カメラはシャッターを切る際に、精霊石に画像を記憶させる。
その応用で、シャッター時間を長くすると動画が取れる気がする。
すぐに【全知全能】に確認すると可能だった。
しかし当然、幾つかの制限や問題もある。
まず、製作出来る技術力を持っているのは、ドワーフ族。
これは俺的には問題無い。
次に部品だ。
動画撮影だけでなく、それを映す機能
『拡大レンズ』が居る。これは硝子でも製作は可能だが、同じような構造を持った『カレイドスコープ』という植物が居るそうだ。
レンズと言うよりは拡大鏡のような物で自分の身を包み大きく見せて外敵から身を守るそうだ。
この魔境でしか生息しないそうなので、それを調達する事にする。
修行よりも製作意欲が勝ってしまう。
俺は材料集めの為、修行を打ち切る事に決めた。
そして、トブレに連絡をして新しい物を思いついたので、作るのに協力して欲しいと言うと、何も言わず「分かった」と嬉しそうに返事をしてくれた。
俺は移動をしながら、今迄の道具などを思い出していた。
他にも前世で便利だった物が作れたりしないかを考える。
今でも不便だと思うのが、トイレだ。
ウォシュレットという便利な物に慣れてしまっていた俺にとって、この世界のトイレは苦痛でしかなかった。
街のトイレは何軒かで一つの排泄集積場に集まり、雇われた者がそれを汲みだしたり、排泄集積場の掃除をする。
どの区画の排泄集積場を清掃するかは、事前に連絡がある。
当然、清掃作業がある区画には、よほどの用事が無い限り、近付かない。
清掃員は、主に奴隷だと聞かされていた。
何故なら、排泄集積場で作業した多くの者が原因不明の病気で死んでいると、噂されている。
そして、誰もが知る常識となっている。
奴隷制度が撤廃されると、敬遠される仕事をする者が居なくなる事は俺も分かっていた。
人の手を介さずに綺麗になれば、言う事は無い。
そう俺のスキル【浄化】のようにだ。
今日の俺は冴えているのか、今迄気が付かなかった俺が馬鹿なのか分からないが、名案が浮かぶ。
石に【浄化】の【魔法付与】をすれば、綺麗になるんじゃないのか?
触れた者のみ浄化出来るのか、ある程度の空間が浄化可能なのかは分からない。
【全知全能】に聞く前に試してみたいと思う。
もし、空間で浄化が可能であれば、一般の部屋でも使用する事が可能だ。
石の大きさ等によって、効果が異なるかも知れない。
考えているだけで楽しい。
悪用される物であれば、【道具契約】を施しておけば良い。
それに【道具契約】をすれば、【アイテムボックス】のように収納が出来るから便利だ。
ん?
俺は疑問を持つ。
フランのカメラに、マリーの収納鞄、ユキノの収納袋。
どうして誰も使わない時は隠していないんだ?
多分、ユキノには説明をしていないので、ユキノが収納袋を持ち歩いている事は分かった。
しかし、他二人は、俺が説明していないだけなのかとも思ったが、フランに関してはドワーフ族で【道具契約】をしたから、説明不足の訳が無い。
気になり始めたら、他の事が考えられなくなる。
とりあえず、フランに【交信】で連絡をする。
「どうしたの?」
「ちょっと、聞いていいか?」
「うん、何?」
フランに【道具契約】の事を話すと、「知っている」だった。
俺は以前に、雨に濡れていた時に自分ので覆ってまでカメラを守っていたかを聞く。
答えは簡単だった。
急な大雨で、仕舞える事を忘れていただけだった。
フランらしいと言えば、それまでだが……。
今は使用しない時は、収納しているそうだ。
カメラが必要な時に、取り出すと皆から驚かれると、得意気に話す。
因みに、フランはマリーに同じ質問をしたそうだが、出しておいた方が楽と言われたそうだ。
しかし、正式な式典や食事等、衣装に合わない場合は収納しているそうだ。
きちんと使い分けている所が、流石はマリーだと感心する。
俺は材料を集めて、トブレと打合せをする。
トブレは俺の話を真剣に聞き、説明が終わると嬉しそうに早速作業に掛かってくれる。
但し、ゴンド村では道具が揃っていないので、ドワーフの集落に送って行く。
一応、製作期間を聞くと、順調にいけば明日の夜くらいだと教えてくれた。
カメラの知識があるので、基本的な仕組みは理解出来ているそうだ。
外殻は適当で良いので機能優先でと伝えたが、トブレの事なので妥協はしないだろう。
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