第521話 暗躍特殊部隊!

 飛行艇の操縦はシロに任せる。

 アスランが俺に二人っきりで話があると言ったので、深刻な話かも知れないと思い、優先的に対応をする為、ジークにある俺の部屋で話を聞こうとしたが、出来る事なら自分の部屋でと言うので、アスランの意思に従い王都にあるアスランの部屋に【転移】する。


「まぁ、座って下さい」

「悪いな」


 俺は言われた通り、椅子座る。

 明日俺の向かいに座り、話し始めようとするが、俺はそれを遮る。


「この部屋に居る奴らは敵か? それとも、予め呼んでおいた奴らなのか?」


 俺の言葉にアスランは、申し訳なさそうな顔をする。

 部屋も中に数人の気配を感じていた。

 何時頃からかは分からないが、集中するとある程度の距離まで人や魔物の気配を感じる事に気が付いていた。

 レベルと関係があるのかも知れない。


 殺気は無いので敵では無いと思いながらも、アスランが知っているかも含めて確認をしたが、アスランが右手を軽く上に上げると、部屋から隠れていた奴等の気配が消えた。

 扉が開けっ放しだったのは、この状況を想定していたのだろう。


「スイマセン。悪気無かったのですが……」

「どうせ、国王から頼まれたんだろう」

「いや、それは……」

「それで話と言うのは、さっきの奴等に関係する事なのか?」


 俺がアスランを連れて【転移】すると言ったら、ルーカスが隠れるように連絡をしていたのを見ていたので、ルーカスの仕業だと予想が付いた。


「その、以前にも聞きましたが、タクトは護衛や衛兵等にはなるつもりは無いのですよね」

「あぁ、その考えは変わっていない」

「そうですよね……」


 アスランは俺に気を使っているのか、歯切れが悪い。


「話し辛い内容なのは分かった。とりあえず、天井裏に居る奴も関係しているんだよな」

「えっ!」


 天井裏に居る者については、アスランも知らなかったようだ。

 天井裏から気配が消えると、部屋の扉が閉まる。

 扉の前には、布で顔を隠して軽装な姿の者が立っていた。


「国王直属の暗部と言う奴か?」


 アスランに確認をすると、諦めたかのように頷く。


「彼は暗部、正式には暗躍特殊部隊の部隊長で『ダクネス』と言います。ダクネスとは代々、部隊長に受け継がれている名称です」


 アスランは俺にダクネスを紹介すると、ダクネスは頭を下げた。

 一言も発しず、動作の際に音もしなかった。


「表が駄目なら裏方って事か?」


 アスラン何も答えないが、表情を見る限り図星だろう。


「悪いが、暗部になる気も無いな。俺の性分的に裏でコソコソする事が出来ないだろうしな」


 俺はダクネスの方を見る。


「もしかして、俺が暗部が長年調査していた案件をぶち壊したとかで、怨みでもあるのか?」


 俺自身、全く身に覚えが無い訳では無いので、もしそうなら素直に謝罪をしようと思っていた。

 ダクネスは首を横に振る。


「そうか、それは良かった。それともう一つ、俺の存在は邪魔か?」


 今後、暗部の活動をする上で俺が障害になっている事も考えられたので、聞いてみる。

 俺の質問にダクネスは微動だにしなかった。


「タクトが活動の上で邪魔かどうかは、ダクネスには分からないでしょうし、答える事も出来ないでしょう」

「自分の意思を殺しているという事か?」

「そうですね。彼らは普通の生活を捨てて、暗部になっていますので個人の感情や意思は無いと言って良いでしょう」

「まるで、忍びだな……」

「聞きなれない言葉ですね。一体、忍びとは何ですか?」

「俺の故郷の職業みたいなもので、人知れず活動しているが、確固たる信念を持っているし、捕まりそうになれば自害する者も居る」


 アスランに忍びについて説明するが、前世の漫画やアニメの世界観を言っているだけに過ぎない。


「確かに、暗部と似ている所はありますね」


 俺の説明にアスランは頷いていた。


「まぁ、俺は暗部に入る事は無いが協力出来る事はするつもりだ」


 ダクネスに向かって話すが、ダクネスからの反応は無かった。

 どういった経緯で暗部に入隊したのかと、暗部という組織に興味が湧く。


「アスランも俺が暗部に入るとは思っていなかったんだろう」

「まぁ、そうですが……」

「どうせ、国王から代替わりする前に暗部に入れとけとでも言われただろう」

「まぁ、近いですね。基本的に暗部を動かせるのは国王のみです。今回は特例で私の指示に従って貰っただけですからね」


 アスランは笑いながら諦めた様子で、俺に話す。


「ありがとうございます」


 アスランはダクネスに礼を言うと、ダクネスは一礼をして部屋から音も立てずに出て行った。

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