第474話 常識外な村の村長!
セフィーロの食事の後に、ビンゴ大会の設営を終える。
「タクト。ちょっと、いいか?」
ゾリアスが、俺に声を掛ける。
後には見覚えの無い狸人族達が立っていた。
狸人族は五人家族のようで、森で魔獣に襲われていたのを、村の者達に助けて貰ったそうだ。
行く当てもないので、この村で生活をしたいと言うので一応、俺の許可を取りに来たそうだ。
「俺の許可は必要無いだろう」
ゾリアスが村長なので、全ての権限はゾリアスにある。
「表向きはそうかも知れん。しかし、誰もがタクトの許可が必要だと思っている」
「そうなのか?」
「あぁ、タクトがどう思うが皆、思いは同じだ」
これは村長であるゾリアスも同じ意見なのだろう。
しかし、自分達で物事を判断出来ないのであれば、後々に大きな問題に発展する気がする。
自分で考えて行動しなければ、いつまでたっても成長はしない。
「あとで、俺から皆に話しておくわ」
「何をだ?」
「まぁ、色々とだ」
ビンゴ大会前に、村民に俺の意見を伝えるつもりでいた。
「一応、ここの住民予定のタクトだ。よろしく」
「タクト殿の御噂は色々と伺っております。私達のような者を受け入れて貰い、有難う御座います」
「どういう事だ?」
俺の質問にゾリアスが狸人族の父親の首元を見ると、狸人族の父親は恥ずかしそうに首元を見せる。
奴隷アイテムの首輪が装着されていた。
俺が家族達を見ると皆、首元で隠している布を触っていた。
家族全員が奴隷とは、なにかしらの訳ありなのだろう。
彼等が奴隷になった経緯を聞く気は無いし、どのような者であれゾリアスが、この村の住民にしたのであれば、それに従うだけだだ。
「奴隷契約は有効なのか?」
「多分、契約は有効だと思います。移送中に夜を越そうとしていた所を魔獣に襲われて、無我夢中で逃げて隠れていましたので、商人がどうなったかまでは……」
「それは、迷いの森での出来事か?」
「はい。そこの森です。ゾリアス村長より、あの森が迷いの森だと教えて貰いました」
「他にも奴隷契約を結んだものは居たのか?」
「私達家族の他にも数人居ましたが……」
「それは、いつの話だ」
「十日程前です」
奴隷契約が無効になっていれば、外す事は可能だ。
外れないという事は、奴隷契約は有効になっていて、奴隷商人が生存している事を示している。
迷いの森であれば、
そんなに時間の掛かる事でも無いので、すぐに聞きに行く事にする。
しかし、俺の噂と言うのも気になる。
話が大きくなって、収拾が着かない様な事になっていないかだけ心配だ。
「奴隷の件は俺が何とかするので、安心しろ」
「えっ!」
「すぐに、奴隷契約を無効にしてやるぞ」
「どういう事ですか? タクト殿が私達を購入して頂けるという事ですか?」
「いや、奴隷でなく、普通の人族に戻すという事だ」
自分達が一生、奴隷として生活しているつもりだと覚悟していた狸人族の家族は驚いていた。
「心配ない。タクトに任せておけば、大丈夫だ」
ゾリアスが狸人族の父親の肩を叩いて、狸人族家族を安心させる。
「村長の命令なら、村民としては従うしか無いからな」
「何を言っている。俺はタクトにそんな命令していないし、命令する気も無い」
「そうだったか?」
「当たり前だ。そもそも、俺はお前の留守中に、村の管理を任されていると思っているからな」
「いやいや、村長はゾリアスだから。国王が国で一番偉いのと同じで、村長が村で一番偉いのは常識だぞ」
「生憎、この村は常識が通じない村だ」
「……そうきたか」
俺達のやりとりに狸人族の家族は呆気に取られていた。
再度、安心して良い事と伝えて、狸人族達には戻って貰った。
ゾリアスにビンゴ大会の説明をするついでに、俺はアルとネロを呼ぶと、凄い勢いで俺の所まで来る。
「もう、用意が出来たのか!」
期待した目で俺を見る。
違う事を伝えると、期待した分だけ残念度も大きいようで「なんじゃ」と寂しそうに呟いた。
「俺は野暮用で少しだけ出るから、その間に村の皆にビンゴ大会の説明をしておいてくれ」
「お安い御用じゃ!」
「分かったの~」
アルとネロは、ビンゴ大会をしたいばかりなので楽しそうに返事をする。
「それと、ドワーフ達も参加するから、昼からの作業は中止な」
「当たり前なのじゃ! 人数が多い方が楽しいからの。それに妾が一位になる瞬間は、より多くの者に見て貰いたいからの」
アルは前回同様に、始まる前から自分が一位になると確信していた。
とりあえず、ビンゴ大会用の紙をアルとネロに渡す。
ビンゴ大会の説明が出来るか不安だったので簡単な説明をして貰ったが、この二人の説明は端的で分かり辛い。
仕方がないので、ゾリアスに村民を集めて貰い、シロから説明をして貰う事にした。
アルとネロは数字を書く木板を配って貰う作業に変更して貰う。
シロに少しだけ、外に出る事を伝えてから、人目に付かないようにして、
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