第339話 引き籠りの原因!

 『蓬莱の樹海』に移動して、アラクネ族にマリーが今後、担当になる事を伝える。

 必要な物に関しては、マリー経由で俺が調達したりするから心配ない事や、転移扉の事等も説明する。


 クララ達は、俺の説明よりもマリーが持っていた、トブレの工房から貰ったガラス製品に興味を示している。

 気分的には、女子会に来てしまった感じで疎外感がある。


「お暇そうですね」


 気が付くと隣にオリヴィアが居た。


「そうだな。まぁ、俺が居なくても話が進むのは良い事だ」

「私も、クララ達の楽しそうな顔を見れるので、嬉しいですよ」

「そういえば、エテルナに会ったぞ」

「元気でしたか?」

「あぁ、元気そうだったぞ」

「ロッソ殿は、どうでしたか?」

「う~ん、多分元気なんじゃないか? 表情が変わらないから、よく分からんが話は弾んだぞ」

「そうですか、それなら安心しました」

「心配事でもあったのか?」

「私というよりは、エテルナが心配してました」


 五〇〇年程前に、数年暮らしていた人間族の娘が亡くなった際に、ひどく落ち込んでいたそうだ。

 ……ロッソから聞いたクレアの事だろう。

 そのすぐ後に、当時の第四柱魔王がロッソの知らぬ間に、アンデッド族を召喚して王都を襲う事件が発生する。

 ロッソが気付いた時には、王都は半壊していたそうだ。

 アンデッド族のロードである自分の承諾無しに、大量のアンデッド族を従えていた事と、アンデッド族を捨て駒のように扱った前第四柱魔王に対して、憤慨する。

 直接、前第四柱魔王を自分の手で倒す事を決意して、戦いを挑む。

 ロッソとでは力が違い過ぎて、勝負にならず前第四柱魔王は、倒され消滅したそうだ。

 その為、王都は全壊を免れたが魔族による王都襲撃は、当時の人族にすればかなり脅威だった為、アンデッド族に対する討伐が暫くは続いた。

 自分が落ち込んでいたばかりに、この事態を防げられなかった事でロッソは自分を責め、外部との交流を徐々に断つようになったそうだ。

 そういえば、以前にカンナが第四柱魔王が王都を襲撃したような事を言っていた気がする。

 しかし、オリヴィアから話を聞いて、ロッソは心優しい奴だと改めて思った。

 オリヴィアに話を聞かせてくれた礼を言う。


「転移扉は、特定の者しか入れないようにするから、いいよな?」


 一応、森の管理者であるオリヴィアにも確認をするが、俺を信じていると返答された。

 一番、重圧を感じる言葉だった。信頼に応えられるように細心の注意が必要という事になる。


 マリー達の会話が、まだ続いているようなので、アルに連絡をする。

 いつも通り元気な声が返って来る。

 俺はロッソに会いに行った事を伝えると何故、自分も一緒に連れて行かなかったのだと文句を言ってきたが、元気そうだった事を伝えると、嬉しそうな声で「そうか」とだけ言う。

 今、ゴンド村にネロと一緒に居るというので遊に来いと言われるが、少しの間忙しいので無理だと言うが、アルは俺が以前に言っていた新しい遊びというのが気になってしょうがないらしい。

 ……確か、ゴンド村に引っ越して来たらとか、言った気がする。

 完全に忘れていたが、それを言うとアルが暴れそうなので楽しみにしておくようにと伝える。


 マリーとクララ達の話も終わったみたいだったので、転移扉の設置位置について打ち合わせをする。

 人ひとり通れるくらいの場所で、外部からは分かりにくい場所を聞くと、大樹の上にある窪みはどうかと提案してきた。

 アラクネ達がいつも集まっている中央の大樹の事らしい。

 クララに、その場所まで案内されるが、俺はともかく通常の人族では降りる事は勿論、登る事も出来ない。


「ここなら、私達の送迎が無いと無理だから、不審者が来ても安心だわ」


 確かに、一理ある。

 樹の窪みというより穴に近いし、広さも申し分ない。


「ここに設置するから、マリー達の送迎頼むぞ」

「任せてよ!」


 クララに礼を言い、アラクネ達の要望等を聞いてからジークに戻る。

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