第210話 冷静な考えと恐怖!

「流石、タクト様ですね。リラやオリヴィアが信頼するのも分る気が致します」


 いつの間にか、フローレンスが立っていた。


「ありがとうございました。これで、昔のような平穏な日々が送れます」

「スレイプニルの素材は貰ってもいいか? それとこの丘は、血生臭いままだが魔物が寄ってこないか?」


 フローレンスは、素材は好きに持って行って良いというと、両手を広げたと同時に草木が動き始めて、先程まで辺り一面にあった血が消えて行った。

 血生臭い匂いも、風によって消えている。


 ……樹精霊ドライアドだから出来る技だな。


 スレイプニルのコアと素材を拾い、【アイテムボックス】に入れる。


 服にも大量の血が付いているので、着替えようとするとフローレンスが、


「待ってもらえますか。私のスキルを先に説明致します」


 フローレンスの教えてくれるスキルは【浄化】【命中率自動補正】二つだった。


 【浄化】は、掃除や洗濯のように、汚れを除去して綺麗な状態に戻す事が出来る。

 身体にも適用出来る為、風呂に入らなくてもこれを使えば常に綺麗な状態を保てる。

 先程の、フローレンスが行った動作も【浄化】だ。


 【命中率自動補正】は、その名の通り狙った相手には必ず命中するスキルになる。

 これは、魔法や飛び道具全てに対応可能だ。

 これだけ、穴が開いていたりする場所だから、このスキルが必要だったのか?


 早速、【浄化】で服や体を綺麗にする。

 ……素晴らしい。一瞬で綺麗になった。


「いいスキルだな」

「有難う御座います。それと、これも忘れないうちに」


 報酬である『ドライアドの実』を俺に渡す。

 その際、俺の左手に両手を添えて、フローレンスの紋章が重ね書きされた。


「それじゃあ、レイ達を連れて来るから、待っていてくれ」

「はい、承知致しました」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 リラの『迷いの森』に【転移】した。

 レイ達を呼ぶと、奥から姿を見せる。


「今から、『奈落の密林』に戻るぞ!」

「えっ!」


 いきなりなので、驚いている。


「フローレンスにも会って来たから、問題無いぞ!」

「そうなんですか……」


 なにやら歯切れが悪そうだ。


「私から、説明致しましょう」


 リラが姿を現した。


 レイ達は、『奈落の密林』には戻りたいが、一度奴隷になった自分達を集落が受け入れてくれるか、時間が経ち冷静に考えていたら、不安になったそうだ。

 最悪、受け入れて貰えなければ、この森で暮らしたいとリラに願い出たそうだ。


「リラが、フローレンスに聞けば分かるだろう?」

「私達は、お互いに連絡を取る手段が無いので、分かりません」

「……俺に聞いて来いって事か?」

「そうなりますね」


 樹精霊ドライアドは、笑いながら平気で酷い事を言う種族なのだろうか……。


「そんなことありませんよ」


 ……思考を読まれたか。


「それじゃあ、聞いてくる。レイ達は、どうする?」


 エルフ三人娘は、話込んでいる。


「フローレンスは、元気だったかしら?」


 暇そうな俺に話し掛ける。


「元気かどうかは分からないが、樹精霊ドライアドは俺を雑用係と思っているのだけは、分かった」

「そんな事ありませんよ。それだけの力を持って尚且つ野心の無い人等居ないので、貴重な存在です」

「それなら、もう少し労わって欲しいぞ! 毎回、魔物討伐だからな!」


 リラと雑談していると、レイが俺達の方を向く。


「私が代表で、タクト様と一緒に戻ります」


 最悪、罵倒等を受けて傷付くのは、ひとりにしたのか……。


「分かった。それじゃあ行くぞ」


 レイと共に『奈落の密林』に戻る。

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