第190話 大樹の祝福の意味!

 彼女達の安全優先で、先程の草むらに戻った。

 ある程度の事情を再確認する事も含めて、改めて自己紹介を頼んだ。


 皆、村人か商人だと思っていたので、俺がサンドワームを一方的に倒した事や、魔法を使った事が信じられない様子だ。

 特にエルフの三人は、警戒している。


 不謹慎だがこうして見ていると、『エルフ三人娘』という愛称がピッタリだと感じた。


「信じる信じないは自由だが、俺は危害を加えるつもりもない」


 この言葉を言ったところで、たいして変化は無いと思うが、意思表示はした。

 移動可能な所であれば、そこまでは送ることは可能な事も伝える。


「エルフの生息場所は秘密だから、難しいのか?」


 エルフ三人娘は、その事が心配な様子だ。


「レイ達は最後にするから、それまでに考えてくれ。 この場で別れるのも選択のひとつだ」


 まだよく知らない者に場所を知られるのは、種族として危険があるのは良く分かる。

 それより気になることがあるので、先に聞いてみる。


「ノエルとカレラは、さっき死んでいなかったのか?」


 先程の状態は瀕死、いや確実に死んでいたと思っていた。

 ノエルが、エルフは基本は不死だと言い、死ぬ条件は『肉体の著しい損傷』と『生きる意志を無くした場合』の二つらしい。

 先程の状態は、仮死状態に近いらしくあの状態のままで地中に埋もれたままだと、次第に生きる意志が無くなる為、死んでしまうと言う。


 確かに、このまま永遠に地面の中で身動きとれなかったら、生きる希望は無いだろう。


 この事は一般常識らしく、改めて聞かれたことに驚かれた。


 今夜は、ここで野宿するのも良いし、俺を信用してくれるならジークにある俺の家で一泊しても良いと伝える。

 一応、女性の同居人がいる事は伝えて、安心アピールはしてみる。


 こればかりは、無理強いは出来ない。


 ミクルとリンカは、世話になると言ってきた。

 やはり、エルフ三人娘は迷っている様だ。


「エルフは、森に棲んでいるんだよな?」

「場所は言えませんが、そう捉えて貰って結構です」

「蓬莱の樹海や、迷いの森と呼ばれている場所の存在は、知っているか?」

「勿論です。 オリヴィア様や、リラ様が管理されている森の通称です」

「そうか、じゃあここから近いリラに話をするから、今日は迷いの森に泊まるという事で良いか?」

「リラ様とお知り合いですか?」

「ん~、知り合いと言えば知り合いか? これの意味わかるか?」


 左手の甲に『大樹の祝福』の紋章を浮き上がらせて見せる。

 エルフ三人娘は、驚いていた。

 三人で顔を見合わせると片膝をついた。


「数々の無礼を御許し下さい」


 いきなり態度が変わった。

 よく分からないので、謝罪をしてきた理由を聞いてみた。


 『大樹の祝福』は、樹精霊ドライアドが本当に信頼できた者にしか与えない紋章で、樹精霊ドライアドの管理の下で長年暮らしているエルフにとっては、、樹精霊ドライアド同様に崇める存在だそうだ。

 しかも、樹精霊ドライアドと違い森の外にも自由に行き来出来る為、困った事があれば相談に乗ってくれる重要な存在らしい。


 ……リラやオリヴィアから、そんな説明は一切受けてない。

 絶対に知っていて、言わなかったに違いない。


「タクト様が信頼に値する方とお分かりした今、御厚意に甘えさせて頂きたいと思います」


 レイがへり下った口調で言うが、俺自身が丁寧語を喋れない負目もあるので、普通の口調で話すように言う。

 なにやら言ってくるが、ダメ! の一点張りで押し通した。


 五人共、家に泊まる事になったので、【転移】したが、思わず俺の部屋に【転移】した為、ライラの【結界】が破壊され外の音が聞こえたので、シロやクロにライラが目を覚ました。


 ライラに【結界】を壊した事を詫びて、全員に事情を説明していると、下からフラン達も上がって来た。

 案の定、エルフを見てマリーにフラン、トグル達は驚いている。

 ザックとタイラーは、この状況でも目を覚まさないようだ。


 エルフ三人娘は、マリーの頭の上で飛んでいるエマに驚いている。

 思った以上に面倒臭い状況だ……


 詳しい説明は明日の朝、リビングですると伝え、マリーに連れてきた五人を部屋まで案内する様に頼んだ。


 申し訳ないがライラには、【結界】を張り直してもらった。

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