第111話 迷子の正体!

 扉をノックする。


「ローラ入るぞ!」

「どうぞ」


 返事と同時に扉を開けると、一呼吸おいてライラが一目散にローラの所まで駆け寄る。


「ライラ、なんでここに居るんだ?」

「ローラお姉ちゃんを追いかけてきた」


 ライラは、ローラが育った『狐人の里』の子で、家が近かった為懐かれていた。

 しかし、ローラがこの街に来た為、里に顔を出していなかった。

 先月この街に来たと言っていたが、移動を含めると数ヶ月会っていないことになる。

 ライラはこの街に一〇日程前に着いたが、昼間は人が多い為に夜探そうとしたが、なかなか見つからなかった様だ。


 ローラは基本的に、引きこもりだから外で見つけるのは難しいよな。


「会っていないといっても、五ヶ月くらいか?」


 その五ヶ月が我慢出来なかっただろ。


「そもそも、どうやって来たんだ?」

「商人の馬車の荷台に隠れてた」


 数ヶ月もバレないものなのか?


「そうか、ライラは【隠密】のユニークスキル持っていたからな」

「うん。ずっと【隠密】で隠れて来た。 【結界】も張っていたので大丈夫」


 ……今、ユニークスキルって言ったよな!

 もしかして、今の会話で習得したなんてことないよな。


 そっと、ステータスを開く。

 ユニークスキルに【隠密】と【結界】が追加されている。

 会話でも内容が理解出来てしまえば、習得出来るという訳ね。

 寿命があっという間に無くなりそうだな。


 すぐにスキルを振り当てて相殺にする。

 そろそろ、ストックしてあるスキル値が少なくなってきている。


 貨幣もスキル値も少なくなっているから、魔物退治が急務だな。


 この流れで、ローラのユニークスキルを言われたら、結婚式の準備どころではない。


「感動の再会中みたいなので、明日改めて来るから」

「タクト、ライラはどうするつもりだ?」

「ローラに会いに来たんだから、ローラが面倒みるべきだろう!」

「この部屋でか?」


 ……たしかに人の住む部屋では無いな。

「ライラだってローラと一緒に居たいだろう?」

「うん、だけどお仕事場は危ないからダメっていつも言われていたから……」

「こんな、小さい子を放り出すなんて、タクトは冷酷だの~!」


 ……コイツ。酷いのは、どっちだ。


「とりあえず、今日は俺が面倒見るけど、明日からはローラが面倒見ろよ!」

「私は仕事があるから無理だぞ!」


 おい、即答かよ!


「ライラ、どうするつもりだ?」


 どうしていいか分からない様だ。

 まだ小さいから、先の事も考えずに飛び出してきたのだろう。


「タクト、生活費その他の費用は私が払うから、暫く面倒見てやってくれないか?」

「そういう問題ではないんだよな」

「ライラはこう見えてもかなり優秀な狐人だぞ! 私なんて七尾なのに、九尾だからな」

「だから、そういう事じゃなくて」

「因みに、次期頭首候補だから無下にすると、どうなるかの~!」


 次期頭首候補! 完全に脅しだろう。


「一生懸命お手伝いするので、御願いします」


 ライラはそう言って、頭を下げる。

 ……反則だよな。 こんな事言われたら断れないだろうが!


「分かった。 俺が面倒見るよ」

「さすが、タクトだ!」


 以前にシキブが、この部屋の件でローラとは論争していて負けたが、俺が論争しても完全に負けるな……


「ところで、里には連絡しなくていいのか?」

「確かにそうだな、大事になっているだろうし、私から連絡しておこう」

「それがいいな」



 ライラを連れて家に、戻る。

 扉を開けると、数分前とは全然違いピカピカになっている!


「これ、どうした?」

「お帰りなさいませ、私とシロで掃除を終わらせておきました」


 それは見れば分かるけど……


「はい、ふたり共【掃除】のスキルがありますので、造作もありません」


 君たちは本当に素晴らしいよ!

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