第77話 屋号決定!
暴露大会終了後、シキブは生気の抜けたようになっている。
余程、ショックだったのだろう。
ユカリは、申し訳なさそうにしている。
入り口を見ると、ローラが立っていた。
俺はカウンターに行き、酒を取りローラに持って行った。
「感謝する」
良い音を立てて呑んでる。
「いい呑みっぷりだな」
「そうでもないさ」
「ローラは、何の研究でこの街に滞在しているんだ?」
疑問を感じていたので聞いてみる。
「それは秘密だ」
まぁそうだろうな。
国家機密レベルなのかも知れないな。
「タクトは、この街に来て長いのか?」
「いや、来たばかりだ」
「そうか、私が言うのも何だが国はともかく、この街はよい所だぞ」
「みたいだな」
ローラの話は、時折難しく分からないところもあったが研究者らしく感情論では無く、理論を交えて会話を進めていた。
「遅くなりました」
突然、兎人がギルド会館に入ってきた。
「おぉ、こっちだ!」
ローラが呼ぶって事は、ローラの客か。
「はい、これ」
「毎度、ありがとうございます」
ローラが差し出した封筒を受け取る。
情報屋? それとも郵便屋か?
「それで、その方達はどちらに?」
中央のムラサキとシキブを指指して、
「シキブ、ムラサキ」
大声で呼び、こちらに来る様に促す。
シキブとムラサキ、そして囚われの身になっているトグルが来た。
「なにかありましたか?」
シキブは、冷静に対応している。
「実はな、先程の結婚式の話をコイツにしたら、取材させてくれって言ってきたので呼んだ」
相変わらず人の事は考えないマイペース主義だ。
「えっ、取材!」
嬉しそうなシキブとは対照に、面倒臭そうなムラサキ。
「申し遅れました。 私、グランド通信社の『ストエ』と申します」
名刺らしきものを差し出して自己紹介をした。
グランド通信社はこの国でも最大の新聞社だと、前に誰かから聞いた気がする。
「じゃ、あとはヨロシク~」
ローラは自分の仕事が終わったかのように、二階の部屋に戻っていった。
俺も関係無いので、自分の席に戻りシロとクロと会話をしていた。
イリアも居たが会話が成立しない……
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あいつです!」
カウンター近くのテーブルで食べ物を物色していると、トグルが突然俺を指して叫んだ。
とりあえず自分で顔を指して「俺?」と動作をしてみる。
「そう、あの四葉野郎です」
ん? なにが起こっているんだ?
シキブに呼ばれて、取材を受けている場所に行ってみた。
「なにかあったのか?」
「今回プロモーションしたのはどなたですか? と聞かれた瞬間に、トグルが突然叫んだのよ!」
「えっ、違うぞ」
面倒臭いのでトボケる。
後ろから「嘘つけ~」「お前が今回の黒幕だろう!」と酔っ払い達が叫んでいる。
仕方ないので、俺だと白状する。
取材はNGという事で、勘弁してもらったが最後に、
「タクトさんは、どこに所属しているんですか?」
と聞かれたので、
「いや、ここ」
床を指差した。
予想と違う回答にストエは、
「いいえ、これだけのイベントですので、商人ギルドの何処かの商会に所属しているのかと思いまして……」
「タクトは、商人ギルドのランクSなんですよ!」
嫌味っぽくシキブが答えた。
「そうなんですか、これは失礼致しました。 それでなんという屋号ですか?」
「屋号?」
そんなの全く考えていないって、確かに商売するには屋号が必要だけど……
「……『四葉商会』だ!」
もう適当に答えるしか無かった。
今後を左右するかも知れない、大事な屋号をこんな数秒で決めてしまった。
「四葉商会ですね。 有難う御座いました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます