第65話 鑑定士という職業-2!

 カンナが、鑑定士の試験内容を説明してくれた。


 筆記試験は一般常識が主だが、この世界の歴史も出題される。

 実技は個室に入り用意された鑑定品を鑑定する。


「カンナがS級の筆記試験を受けた時は、どんな問題が出たんだ?」

「そうですね、確か『鑑定による不正を知った場合、その不正を世間に発表するのは問題ない行為か』や『鑑定する上での基本条件を三つ述べよ』みたいな感じです」

「不正は守秘義務があるからダメだろうけど、鑑定の際に気を付ける事だというのがよく分からないな」

「案外、引掛け問題が多いんですよ」


 カンナは答えとその解説をしてくれた。


 鑑定による不正は、個人的に依頼された場合はダメだ。

 個人情報の関係だろう。

 しかし、ギルドや各機関からの依頼や警護の為の人物鑑定は問題無いらしい。

 説明を受けると納得は出来る。

 多種多様な場合を想定しての回答で無いとダメという事か。


 次に、鑑定の基本条件だが『事前契約』『守秘義務』『報酬』になるらしい。

 一連の依頼に対する大まかな流れって事か。


 しかし、ギルドの試験と違って、レベルが高いな。

 それだけ鑑定士という職業は、この世界において大事な役割を占めている事になる。


「難しいな」

「そうですね、但し二年に一回は過去数年分の問題集『過去問』や『受験対策本』が出版されていますので、大きな街の本屋であれば入手出来ます。 この『過去問』から多くの問題が出題されるので、勉強すれば受かりますよ」


 この世界にも『過去問』や『受験対策本』があるのか。

 【全知全能】に聞けば回答は分かるが、それでは試験に合格しただけの鑑定士だ。

 仕事した際に、失敗をしてしまう。

 ギルドと違い、自己責任の範囲での内容とは異なる。


 歴史には少し興味があるが、地道に勉強か……


 【ステータス】も【鑑定眼】のレベルで閲覧できる内容が異なるらしい。

 本人も知らないステータスを見る事が可能になる。


 ……なるほど、気付くとステータス内容が多く表示される様になっていたのは、それが理由なの?

 しかし、俺は【鑑定眼】のスキルレベルを上げた記憶はない。

 シキブやムラサキの『結婚』のステータスが見えたのも、本人達には見えていないのか。

 ということは、俺の『童貞』ステータスもカンナ以外には見られていない可能性がある。


 それも含めてカンナは謝っていたのかは、確認する勇気がない。


「昨日は冒険者ギルド、今日は商人ギルドと受けて今度は鑑定士。 凄いですね」


 カンナが嬉しそうに話す。


「受けるとは決めてないよ。 受けるとしたら色々と教えてくれたカンナが俺の『師匠』だな」

「そんな、当たり前の事を話しただけで『師匠』だなんて」


 いきなりの『師匠』発言で焦っている。


「冗談だよ」


 ふたりで笑った。


「今度、タクトさんに指名クエスト御願いしても良いですか?」

「別にいいよ。 死にそうなクエストは嫌だけど」

「タクトさんが、死ぬような難易度高いクエストでは無いですよ」

「そう願いたいね」


 話のお礼に料金は俺が払うことにしたが、誘った事と謝罪の件もある為、カンナは譲らなかった。

 律儀な性格なのだろう。


 仕方ないので料金はカンナに支払ってもらい、パンを数本買い『話のお礼』という事でカンナに渡した。

 カンナは文句を言っていたが、最後には渋々受け取り


「次も、私が払いますから!」


 と言うが「ハイハイ」と軽く返事をした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る