第56話 結婚の概念!

 気絶したイリアを抱きかかえて、ギルマスの部屋に戻る。


「イリアどうしたの!」


 シキブが慌てて、駆け寄ってきた。


「え~っとだな、幸せすぎて気絶した」

「えっ!」


 シキブは意味が分からず困惑していると、イリアが目を覚ました。


「イリア、大丈夫ですか!」

「えっ、えっ!」


 周囲を見渡して、赤くなった顔をして


「なんでもありません。 御心配かけて申し訳御座いません」


 頭を下げた。


「それで、原因はなんだ!」


 ローラが早く教えろ! と詰め寄る。


「今この場で再現する。 シロ!」


 呼び声に反応して、何も無い空間からシロが現れる。

 ローラの計測器もアラーム音が鳴っている。


「タクト、そちらの娘は?」

「昨日紹介した、シロだ」

「えっ、シロって!」

「人の姿をしたシロだ」

「……そう」


 もう諦めたかのかシキブは、深く追求してこなくなった。

 多分、シキブはシロの事より、その横で鼻の下を伸ばしているムラサキの方が興味あるようだ。


 ……男だから分からなくは無いけど、このままだとムラサキが死にそうだ!


「なるほど、転移魔法とはね。 世界でも使い手が数人しかいない【ユニークスキル】だ。 計測器が反応するのも無理はない」


 なにやら、計測器を触り調整をしている様だ。


「よし、これでアラームは鳴らなくなった」


 この魔法波形を認識して、有害でなければアラームが発動しない様に調整が出来るらしい。


 その後、ローラはシキブと奥の部屋で話をしている。

 シロはイリアと話をしているが、イリアの緊張がこちらまで伝わってくる。


 俺は試験場に移動して、ムラサキと話すことにした。

 実際は、隠れてシキブに攻撃を受けていた箇所の【治療】だが……


「今日の昼にでも、ギルドのメンバーに報告しようと思っている」

「そうか」


 結婚報告か!


「結婚式とかはしないのか?」

「結婚式ってなんだ!」

「えっ!」


 この世界エクシズには結婚式が無いらしい。

 役所的な所に書類を提出する訳でもなく、本人同士で契約をして終わりらしい。

 契約後に親しい友人や関係者に報告するのが通例だそうだ。

 結婚したことのない俺が言うのも変だが、やっぱり皆に祝福されて新たな人生の出発をした方が喜ばしいと思う。

 よく結構式は、女性が輝ける一生に一度の場所とも聞いたことがある。

 このふたりには出合って間もないが、世話になっているというか迷惑掛けっぱなしなので、何かしてあげたい。


 ……まてよ、結婚式が無いのなら俺が作ればいいんじゃないか?

 しかも神の誓いでエリーヌの名前出せば一石二鳥だ!


「ムラサキ、ギルドに冒険者が一番集まるのはいつだ?」

「五日後にギルド内の定例会議がある。 この街に居る冒険者は大体参加するんじゃないか!」


 ……五日後か、あまり日が無いな。


 それに、俺だけでは冒険者を纏めきれない。

 まずはイリアに頼むか。

 そして他にはトグルが適任だが、俺嫌われているからな……


「定例会議には、俺も予定しておく!」

「そうか、ありがとうよ!」

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