第45話 無知は罪!
冒険者達を部屋から追い払った後、シキブは考え込んでいる。
「なにか、問題でもあったか?」
「その、なにから説明したら良いか……」
あれ? もしかしてトンデモ無い事やらかした?
「魔法発動の際に、詠唱いや無詠唱どころか、何も喋っていませんでしたよね?」
「あぁ、当たり前だ!」
この世界では、魔法のイメージを浮かべれば魔法が出せる。
今更、何を……!!!
もしかして、俺ってまた変な事したのか!
俺以外で、魔法を使っていたのは、アルとシロだけだ。
アルも喋っていなかった筈だ……
よく考えれば、普通の人の魔法を使ったのを見た事ないな……
「詠唱も無し、しかも無詠唱で魔法名を言うわけでもなく、魔法が掛けられるなんて……」
シキブは、どんどんと険しい顔になっている。
「タクト、貴方のステータスを閲覧させて貰えないかしら」
シキブの提案は、シキブとムラサキのステータスを開示。
今はギルマスとサブマスという立場だが、ふたり共世界でも上位クラスの冒険者になる。
俺が言ったリスクの事を考えれば、ふたりで同等になるかは分からないが、今出来る条件としてはこれ位しか思いつかない。
もちろん、ステータスの事は口外しない。
心配なら魔法士を読んで契約を結んでも構わない。
ギルマスとして考え抜いた内容なのは理解した。
個人的にも、ふたり共悪い人達では無い。
魔法士呼んでも、攻撃魔法の類だったら【魔法反射(二倍)】のスキルあるから意味ないし……
シロとクロの確認を取ってからにするか、
「分かった。 その前に、ひとつだけ伝えておきたい事がある」
俺は、【呪詛】の話をした。
ふたりも信じられない顔をしていたが、あとでステータス確認の際に嘘でない事が分かる。
「そちらの提案で問題ないが、ふたりを信頼しているので魔法士の契約は不要だ。 それと俺の仲間にも確認をしたい」
「いいでしょう。 下にお仲間は来ているのですか?」
「いや、俺には主従関係を結んだ魔物が二匹いる。 その二匹に確認を取りたい」
「魔物との主従契約もしているのですか? 大きな魔物で無ければ今呼んで確認しても問題ないです」
シキブは、この時下位魔獣と思い、軽率な発言をしまった事をすぐに後悔する事となる。
「ありがとう。 シロ、クロおいで」
俺の影からクロが出現し右肩に乗り、頭上から突然シロが現れて左腕に抱かれた。
ふたり共又、固まっている。
……もう見慣れてしまった。
今後、こんな場面に幾度となく直面するのだろうな。
知識のあまりなかった、ゴンド村の人々の無邪気な触れ合いが懐かしい。
「紹介する。 俺の仲間のクロとシロだ」
「お初に御目にかかります。 クロと申します」
「同じくシロです」
あれ? 更に固まっている!
……この世界の常識からまた外れているのか?
「……あの~」
魔法が解けたかのように
「ゴメンナサイ、今日は色々と驚くことが多すぎて……」
困惑するシキブ。
眉間にしわを寄せながらムラサキが、
「タクト、お前はその魔獣達が何か知っているのか?」
……たしかに興味も無かったので、種族等はステータスで見た程度で詳しくは知らないな。
「いや! 詳しくは知らないが?」
ふたりして大きくため息をついた。
よく残念な子とかにするような「はぁ~」という動作だ。
「無知って罪になるのを、初めて感じましたわ」
シキブが、ヤレヤレ感満載だ。
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