第15話 ゴブリン集落を襲撃!

「クロ、様子はどうだ?」

「洞窟手前に建物がふたつあります。各建物に五~七匹のゴブリンが居ます。弓を装備している者もおります。洞窟入口に、斧を持った者が三匹。他の出入口は無いかと思われます」

「分かった。気を付けて戻って来てくれよ」

「承知致しました」


 洞窟の中が分からないのでは攻めようが無い。

 とりあえず、一匹捕まえて尋問するか。


「クロ、悪いけど狩りに出ているゴブリンがいるか確認出来るか?」

「少々御待ち下さい。主と集落の間に、五匹のゴブリンが主の方向に向かって歩いております」


 グッドタイミングだ。とりあえず彼らを、情報提供者に決定する。


「シロ、行こうか!」

「はい」


 クロとシロの能力を確認したが思っていた以上に優秀だった。

 クロは、かなり上空より地上を確認し、草木に隠れていてもターゲットを発見出来る。

 攻撃力もかなり高い。

 シロは、幻術が使える。【霧の幻術】に関してはかなり広範囲で使用が出来る。

 他にも魔術関係に優れており、魔法攻撃も可能だ。

 主従関係にある為、俺が強くなれば必然的にクロやシロも強くなるらしい。


 待ち構えていると、クロの報告通り五匹のゴブリンが現れた。


「シロ、頼む」

「はい」


 シロが両手を広げると辺りに霧が発生し始めた。

 とりあえず喉を潰してから、痺れ薬で捕獲だな。

 【念話】があれば、喋れなくてもなんとかなる。


 先日の戦いの時には知らなかったが、ゴブリンは窮地に陥ると奇声を発して仲間を呼ぶらしい。

 何故、前回は使わなかったのだろうか?


「はい、一匹目」


「はい、二匹目」


「はい、三匹目」


「四、五匹目。終了!」


 ほんの数秒で五匹確保完了した。

 五匹を別の場所まで運び、【念話】で全員に尋問する事を伝える。

 ゴブリン達は、案の定キョロキョロしている。

 俺が話しているのが分かった順に知能が高いと判断する。

 一番遅かったゴブリンを一匹目として尋問をする。


「集落には何匹いる?」

「……知らない」

「人間の女は何処にいる」

「……知らない」


 こいつは、本当に知らないのか嘘を付いているのか分からないので、とりあえず首を斧で切り飛ばして殺した。


 他四匹のゴブリンには、


「嘘の証言をすれば、こうなるので覚悟しろ!」


 と脅しをかける。

 明らかに動揺しているので続けて二匹目の尋問に入る。


「集落のゴブリンが数は?」

「……大人が六十くらい、子供は二十くらい」

「洞窟の中はどうなっている?」

「……小さな部屋がふたつと大きな部屋がひとつ」

「人間の女たちは何処にいる」

「……子供産ませる奴は、洞窟の部屋。まだ犯していない奴らは外の小屋」

「外の小屋はふたつあるが、もうひとつはなんだ」

「……見張りの待機所」

「洞窟の部屋はどうなっている」

「……一本道。右側は武器庫。左側は交尾所。奥の大広間に皆集まっている」


 なるほど、ある程度は分かったけどこいつが嘘を付いている可能性は否定出来ないな。

 斧で一匹目同様に、首を切り飛ばす。

 同じ要領で五匹目まで続けると、証言に確証が持てた。


「シロ、とりあえずコア回収しておいて」

「はい」


 尋問したゴブリン達の情報だと、大人が約七十匹(老体も含む)と子供が約二十匹(乳児、幼児も含む)。

 洞窟手前の建物は、右側が見張りの『待機所』。

 少し洞窟よりな左の建物は『監禁所』。

 洞窟内は、まず左側に無理やり犯されて子供を産まされている『交尾所』があり、その奥右側に『宝物庫』。

 一番奥の『大広間』にゴブリン達が集結しているようだ。

 『大広間』以外は鍵が掛かっている。

 『監禁所』に七人、『交尾所』に九人の女性が捕まっている。

 ゴブリンの数もそうだが、捕虜の数も思ってたよりも多い。


「クロ、近くまで行って捕まっている女性の確認は可能か?」

「問題ありません。ゴブリンごときに見つかる私では御座いません」

「じゃ、ヨロシク!」


 昼間だと狩りに出ているゴブリン達を殺し損ねる可能性があるので、夜襲は決定事項だ!


 まず、シロの【霧の幻術】で待機所を襲撃してクロを外に待機させて、俺とシロは洞窟内に侵入。

 交尾所にゴブリンが居れば見つけ次第殺して、そのまま大広間に突入して再度、シロの【霧の幻術】で一気に片づける。

 霧の中の攻撃は、【風弓】が良いだろう。

 連射も出来てスピードの速く、霧への影響も少ない。

 クロが戻り次第、作戦を伝えて夜まで夜襲の準備をしながら待機をする。


 洞窟の奥からは、宴会でもしているのか大声がする。

 寝静まると音に敏感になるし、そろそろ頃合いか!

 シロに【霧の幻術】、クロに上空で待機を命じて突入をする。

 まず、待機所の四匹を倒して、そのまま監禁所の見張り二匹を倒す。

 洞窟内に慎重に侵入するが案の定、交尾所では四匹が盛っていた。

 再度【霧の幻術】で四匹を倒して、先にシロを行かせて【霧の幻術】を重ね掛けする。

 ちらっと見ただけだが、この交尾所の女性は精神的に壊れているようだ。

 救って家族の元に帰すのが正しい事なのか、それともここで殺した方が幸せなのだろうか?

 そんな事を考えていると、シロが戻って来たのでこの場を任せて、大広間まで走る。


 大広間は案の定、仲間同士を攻撃をしている。

 とりあえず見える影を【風弓】を連射して倒していく。

 暫くすると、霧の効果が消え始めて生き残りのゴブリン達が姿を現し始めた。

 ……ざっと三十匹弱くらいだ、思ったより減っていないな。

 無傷の者も数匹いる。

 この状態でパニックにならずに動いていたって事はそれなりの知能を持っているのだろう。

 とりあえず【炎波】で広範囲の攻撃をした。

 逃げ回る者は【風弓】で仕留める。

 これでやっと十匹ちょっとか……。

 ここからは少し手間が掛かるかな。

 残ったゴブリン達は、様子を伺っている。

 出入口がひとつだから、俺を倒さないとここからは出られない。

 かといって、闇雲に突入しても俺に倒される事が分かっている。

 とりあえず、火が回っていない右側にいる奴らに【水球】で攻撃、左側には更に【炎波】で戦えるスペースを削る。

 【炎波】の威力が無くなっている。

 そろそろ酸素不足になって来たか?

 ゴブリン達を見ると苦しそうにしている。

 こちらは入口付近なのでゴブリン達程苦しくない。

 時間が経てば経つほどゴブリン側が不利になっていく。

 我慢の限界なのか、四匹のゴブリンが襲い掛かってきたが【風刃】で倒した。

 その背後から、更に三匹のゴブリン達が攻撃仕掛けてきたが、読んでいたので問題なく【風弓】で倒した。

 残りは、五匹か!

 正面の攻撃に気を取られている隙に、右側の三匹が少しずつ距離を縮めて来ている。

 ピチャ! と水溜りを踏む音と同時に【雷撃】を放つと黒焦げになり、崩れ落ちた。

 残り二匹。

 明らかに、頭首と若頭って感じだ。

 『MP』も半分以上残っているし、氷属性を使ってみる。

 【氷球】【氷弓】と連続で繰り出してみるが、致命傷を与えるまでにはなっていない。

 このまま、こうしていても多分勝てるんだろうけど早く終わらせたいし、どうしたものか……。

 ゴブリン達もこのままではどうせ死ぬと分かったのか、攻撃の構えを取りこちらに向かってきた。

 『窮鼠猫を嚙む』って言葉もあるし油断は出来ない。


 二匹が同時に上下に分かれて攻撃を仕掛けてきた。

 横方向の攻撃が多かったから、この作戦にしたのだろうが残念な事に、【風刃】は縦方向にも発動可能だ。

 俺の手前で、二匹のゴブリンは真っ二つに分かれて倒れた。


 頭の中で音が鳴った。レベルアップか!

 とりあえず、シロに連絡してコアの回収をお願いして、交尾所で女性たちの様子を確認した。


 非道い有様だ。

 ゴブリンの子を宿した場合、人間同士の場合よりも、早く出産する。

 無理矢理何度も出産をさせられたのだろう。

 たとえ【治癒】や【回復】をしたとしても、心の傷までは治す事は出来ない。

 酷な話かもしれないが、監禁所の女性たちと話し合いをして決める事にする。


 シロが戻って来たので、監禁所に移動した。

 扉を開けると、情報通り七人の娘が居た。

 明らかに怯えている。

 俺が人間に見えないのか?


「怖がらなくても大丈夫だ。助けに来た」


 娘たちに言葉をかけると、泣いて喜び感謝の言葉を言われた。


 俺は、状況を説明する。

 交尾所の娘達をどうするかを相談したが、過剰な希望を持たれる可能性がある為、【治癒】や【回復】の事は、あえて話さずにいる。

 相談の結果、三人の娘達が交尾所に行き、状況を確認してから判断をする。

 残りの四人は、どちらでも良いので三人に任せるという事に決定した。


 話の内容から、三人は『ゴンド村』出身で身内が居る可能性が高く、残りの四人は奴隷商人が移送中に襲われた様だ。

 ……この世界エクシズは奴隷制度があるのか。


「お前達の想像以上だから、どんな状況でも落胆するなよ」


 娘たちは頷き、足を進めた。

 交尾所の前に着くと、娘たちは固まったかのように動きが止まった。

 覚悟はしていたとは言え、明日の自分の姿に置換えていたのかも知れない。


「……お姉ちゃん」


 ひとりの娘が、倒れこんでいる女性に向かって話しかけた。

 しかし、女性は意識が朦朧としている。

 話しかけているのが、妹だと認識をしていない。


 駆け寄り抱きしめても、それは変わることは無かった。

 ただ一言、


「……殺して」


 かすれた声で、呟いた。

 それが彼女の希望なのだろう。

 判断するのは彼女達。

 卑怯かも知れないが、俺はそれに従うだけだ。

 先程の話しかけていた娘が、俺の所まで来た。


「……殺してあげて下さい」


 彼女の目には涙が溜り、拳は強く握られ肩は震えていた。

 苦渋の決断だろう。

 これから彼女の人生のトラウマになるのは間違いない。


「分かった。苦しまないようにするから、外に出て行ってくれ」


 女性達を外に出すと、【風刃】で首を切り落とした。

 感傷に浸る時間もなく、宝物庫にあるものを全て【アイテムボックス】に放り込み火を放ち、シロと外に出た。

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