第486話まさかの自業自得だったぁぁ!!!

 鬼神の言葉に思わず聞き返す。


「言い難いのだが……貴様ほどちぐはぐな奴も珍しい」


「ちぐはぐ?」


「それってさっきの術士タイプなのに近接得意みたいな?」


「ああ、加えていえば身体的なものでも……だ。鬼の角が力の制御機関なのは知ってるか?」


「初耳ですが!?」


 思わず駄女神を見るが、駄女神も思いっきり顔を振って否定している。


 ……ちっ、使えない奴め!


「お前は一本角だが、本来術士タイプなら二本の角が生える筈だ」


「えぇ……」


 衝撃的事実……。


「一本角は鬼の力をそのまま使う事、強化に長けているが、反面コントロールが苦手になる。二本角はコントロールに長け、鬼の力を破壊力ではなく別の効果に変換するのが得意になる。その代わり鬼の力をそのまま使うのは苦手だな」


 うーむ。一本角は破壊力や強化に長け、二本角は前に戦ったラインが奪った鬼術布都御魂剣フツノミタマノツルギのような、特殊な技として扱う事が得意なのか。

 確かに布都御魂剣フツノミタマノツルギは厄介だったもんなぁ。まあ、単純に強い奴も厄介だけど。

 ……あれ? もしかして鬼って私の天敵?


 因みにだが、名前に鬼が入る吸血鬼は悪魔と鬼のハイブリッド的な扱いらしく、一応鬼の分類にも入り、鬼とは違い角ではなく牙が制御機関になっているらしい。閑話休題。


「だからだ。貴様は鬼脈や鬼門を含めた身体は術士タイプ、力の制御機関の角は非術師タイプ。加えて強化や鬼の力は身体が自壊するほど強く、コントロールも得意。恐らくこの先、鬼術も覚えていくが、それすらも力に耐え切れず自壊する恐れがある」


「嫌な予想やめてくれません!?」


「……」


 アカン、ツッコミで逃げきれないマジなやつや。


「更にだ」


「まだあると!?」


「ああ。貴様は元から鬼ではなく、鬼と妖精の系譜が折り重なるゴブリンからここまで成長してきたな?」


「うん。それが?」


「その為か普通の鬼種なら少なくなるはずの魔力が豊潤にある。それがより身体を酷使する結果になっている」


 そ……そう言えば、ユエとジュピの鬼種系に進化した二人は、確かに鬼神の言うようにMPや魔力が少なかった気が……。

 魔法主体な訳じゃないし、減った分くらいの気力増えたからスルーしてたけど、もしかしてあれか? スルーしつアレがここに繋がるフラグだったのか!? ジュピの忍法みたいな技って、あれもしかしなくても鬼術?

 やばい帰ったら調査せねば。


「それに思い違いをしているようだが、術士タイプと言っても鬼の中では身体が弱いと言うだけで、普通は人間で言う高位の冒険者並には頑強だぞ」


 バッと駄女神を見ると今度はウンウンと頷いている。こやつ、私のダメな部分の情報だけは持っておる。


「まあ、貴様の魂は防御関連に関しては、何故か他のステータスに比べ著しく低いからな」


「そうかぁ。だから私の身体はこんなに脆いのか」


「いや、それも理由だが大きな理由は他にある」


「マジで!?」


「ああ、貴様の身体が脆い原因はいくつかある。先ほどの魔力や力のタイプなどな。そして……一番の問題は進化にある」


「な、なんだってぇー!!」


「続けていいか?」


「あっ、はい」


 どうやらこのノリはお気に召さないようだ。


「それで、なんで進化が原因なの?」


「進化とは魂の修練の果てに起こる現象。これは分かるな?」


 コクリと頷く。


 これは当初から予想していた事だけに驚きも何もない。


「魂と言う器に経験値と言う素材を満たす、そうする事で貯まった経験値を使い魂の器を更に大きくする。それが進化だ。では魂の修練と言うのなら得意な事が伸びると同時に、苦手なものを克服してもおかしくはないと思わないか?」


「うーん。確かに」


 防御の数値は確かに伸びているが、他に比べれば明らかに伸びが悪い。それは確かに前から思っていた。

 スキル込みであの数値では、スキルがなければもっと悲惨なものになっていただろう。


「貴様達が言う通りここは確かにゲームという世界のシステムに似ている。実際女神達はそれを元に作っているからな。だが、現実はゲームのように一つだけを伸ばす事も、逆に伸ばさないのも難しい」


 あー、そっかぁ。確かに伸びない数値を簡単に受け入れてたけど、現実はゲームのように一つの訓練で決まった数値が伸びる訳じゃない。

 むしろ速度を上げようと走っても、ほかの部位ももちろん脚に連動して動かしてるし、脚の筋力が上がれば速度だけじゃなく、蹴りの威力も増す。

 これをステータスに落とし込むのは完全には不可能だろう。

 だとしたらなんで私の防御力は伸びないんだ?


『ステータスで参照する魂のデータ、上がり幅には基本的には干渉出来ないですが、鬼神の言うように上がりながらもここまで差が付くのは珍しいですね。鬼種のような種族特性以外では、普通はあまり起こらないです』


「そうだ。そして進化とは人間の位階と違って、より本能の衝動に左右される」


「本能の衝動?」


「ああ、例えば普通のモンスターは自分のスキル、才能、それから経験により進化先が自動で決定され、自身の根底で望んだ力を得る」


 それは例えば、自身に足りない能力を求めそれを手に入れたり、最も得意な力を伸ばしたり、そういった進化するまでに自身が最も望んだ力を得る進化をするのだ。


「だが、魔族やそれに準ずる知性あるモンスターは、その可能性の中から一つの進化先を選んで進化する。その中でやはり特殊なのはステータス上の数値を満たし、麻痺毒を好んで摂取するような、特殊な行動を繰り返し積んだりする事で進化する特殊個体、貴様達が言うレア進化だ」


 麻痺毒を好んで摂取とか……うん。すいません、私ですね。でもあれスキルのおかけで美味しかったんだよ?


「そして特殊な個体はその性能もピーキーな事が多い。得意な事を普通以上に伸ばす為に、苦手なものが伸びなくなるような……な」


「あー……もしかしなくてもそれが原因ですな」


「そうだ。しかしそれでも普通は物理に偏るか、魔法に偏るかどちらかになる事が多く、貴様のように超攻撃特化で紙防御なんて事にはならない」


 造られ、調整された生物、例えばゾンビとかなら違うがな。と、言う言葉に私天然物なんですが? と、言いたくなる気持ちをぐっと抑える。きっとそんな場面じゃない。

 見れば駄女神もニヨニヨとしているだけで口を挟まない。同じ考えなのだろうが後で殴ろうか。


「じゃあなんで?」


「貴様の場合は特殊な進化に加えて、ゴブリンという出自にも拘わらず魔法を覚え、格闘と共に使い続け鬼に至った。更には数々の格上との戦いで、状態異常に特化するよりも本能的に貴様は力を求め、攻撃に対しては多少防御が上がっても、格上相手では役に立たないと考えた」


 うっ、確かにそう思ってた。


「その結果、鬼の種族特性でまず魔法防御の成長が下がり、そして力を求めた進化の結果、物理攻撃だけではなく、魔法攻撃を高める成長をした。その整合性を取る為に物理防御が下がった。つまり器が防御以外の方ばかりを大きく成長させる事を選んだ」


 ほ、ほほう?


「そして更には鬼で在りながら勇者の力を取り込み、聖属性の力を手に入れ、その力に耐える為に白雷鬼に進化。そこからは更に進化の方向がおかしな方に……しかも周りも自分も驚く程のスピードで、自身ですら扱えない力を手にしていった」


 お、おや? 何やら風向きが……。


「最終的には鬼の力、魔王の力、竜の力、神と邪神の力を手に入れた事で、貴様の魂がより力に順応する事だけを目的とした進化を目指し、器も防御方面に成長する余力が無くなった。その結果、肉体の強度を上げるよりも力を溜め込まずに、放出する事を最優先にする。超攻撃特化型の器の形になったという訳だ」


 普通はこんなデタラメな力を手に入れたら、魂が順応する前に砕け散る。

 そんな怖い事いいながら締めくくる。


「つまりは、力を求めてた私が、外部からも力を取り込んだりしてたせいで急激に進化を繰り返したのが原因?」


「まあ、そういう事だな」


 まさかの自業自得だったぁぁ!!!


 ガクリッ。

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