第236話「おねちゃんドンマイ♪ ゴブ」

「おお、やっとつまらない歴史の授業から興味の在る事に」

「ええっ!? ご、ご主人様? 結構重要な話しでしたよね? 今の……」

「いやまあ、私は魔王とか勇者と関わる気微塵も無いから特には……」

「そう思ってた時期があったんだな?」

「嫌なフラグの立て方しないで戴けませんかねぇ!!」

「……実際、魔族に狙われるわ勇者に襲われるわしてるだろ?」


 ぐっ、否定が出来ない。


「だとしても私は絶っ対! 関わらないからな!」

「白、フラグの立て方が丁寧過ぎるだろ……」


 うるさいよ!


「くっ! 駄女神の陰謀だ」


『すぐに人のせいにするの辞めて貰えません? むしろ私の方こそ好きに生きてくれと言った筈の人間が、何故か毎回騒動の中心人物になっていてビックリしてるんですけど?』


「オイコラ! それじゃまるで、私がトラブルメーカーみたいじゃないか!!」


「「「『『『えっ?』』』」」」


 えっ? 何その反応!? この場の半数以上が反応してやがる……だと!?


「はぁ、相変わらず自分の事を理解してないな」

「は、ハーちゃんは何時も一生懸命なだけですよ!」

「そ、そうですね。ルリの言う通りです」

「う、うん。そう……だよね?」


『そうそう、瑠璃さんの言うとおりハクアさんは頑張ってるだけですよ』


 止めて~、優しさが痛い! そんな可哀想な物を見る目で必死に慰めないで~。


 私が皆の視線と言葉に悶えていると不意に私を影が覆う。誰? と、思い見上げるとそこにアクアが立っていた。


「おねちゃんドンマイ♪ ゴブ」


 私は最後に強烈なボディブローを頂き崩れ落ちた。


 チクショウ!


「もういいか?」

「もう少し浸りたい」

「そうか。じゃあテア続けてくれ」

「わかりました」


 聞いた意味は!? そして普通に続けるのね?!


「扱いが酷い……と、その話の前に質問が」


『貴女も大概堪えませんね。それで?』


「関係ないとか言ったけど一応質問。……他の世界の邪神は未だに活動してるんだろ?」


『……何故、そう思うのですか?』


「残党だ何だと言ったがあれ嘘でしょ? ここからは想像だけど魔王の欠片は世界中。いや、言い方が違うか。異世界の全てに散らばったんだろ? 理由は分からんが、まあ、マーキングか殺した神々の力が引き合ったのか、とにかく邪神としての何かに引かれたとかそんな感じかな?」


『そ、そうなんですか先輩?』


『……はあ、そうです。全く、ここまで話すつもりは無かったのに』


「さっき言った意思のある邪神や、侵入してきた邪神は魔王の意思の影響を受けてるんだろ? 自覚があるかどうか、どこまで影響を受けているのかも知らんが」


『ええ、詳しい事は私もわかっていません。ですが昔の勇者が邪神を打倒した際、魔王の欠片が邪神の中に有ったのは確認しました』

『それ、私達も初めて聞きました……』

『何で黙っていたの?』


「魔王の欠片を除去しようとする馬鹿な女神を抑える為、かな? 神にまで影響を及ぼすと解れば、いつかは自分達も──何て考えてもおかしくない。しかも、そのせいでもっと勇者召喚を行えば、それこそ今よりも世界の歪みは酷くなるだろ?」


『その通りですよ。全く、可愛いげの無い。よくもまあこれだけの情報でそんな事まで理解が出来ましたね』


「邪推は得意だぜ。まあ、結局だからどうって訳でも無いけどね。ただ気が付いた事を確認したかっただけだし。で、最後の質問」


『はいはい、何ですか?』


「私の中にも欠片在る?」


「「「『『『はっ?』』』」」」


「ご、ご主人様?」

「ハクア何言ってるの?」

「ハーちゃん?」

「本当か白?」

「勘!」


『……ええ、在ります。本当に何で分かるんですか?』


「一つは【喰吸】のスキルだね。さらっと言ったけど『他人の力を自分の物にする力』って、正にこれの事っぽかったし? それに私、七罪スキル【怠惰の魔眼】ってのも増えてるしね。後はやっぱ勘だね! 女の勘的な?」

「ほう、女の勘ですか白亜さん」


 うっ、さらっと流してよ少し恥ずかしい。で、でも、そんな事は表情に出さんぞ!


「……耳赤いぞ」


 指摘しないで!! そこはスルーするのが優しさなんだよ?!


「そ、それでご主人様に何か影響が在るんですか!!」


『それが……こっちが困惑する位、何もありません』


 何と!?


「私も先程調べて分かったんですが、完璧に欠片が身体に馴染んでますね。何の心配もありません」


「……お前、神ですら精神に異常きたす物を身体に馴染ませるとか……」


 止めて! そんな目で見ないで! 私だって影響在るんじゃ無いの? ──とか、思ったから聞いたんだから!?


「……まあ、ご主人様ですからしょうがないですね」

「……そうですね。ハーちゃんですもんね」

「……そうだね。ハクアだしね」

「……うん。なんだったらいつも通りかな」


 止めて! 何その抜群の信頼感! 私の名前はそんな風に異常に対して納得する為のものじゃ無いよ!? その内、ハクアと書いて異常とか読まれそう。


 皆がそう言うと駄女神共まで賛同しだし周りが、そんなもんか──みたいな空気に収まっていく。


 解せん。


「あっ、でもさあハクア達の言う通りなら、もしかしてガダルってハクアの欠片を狙ってるとか?」

「いやいや、まさか~。ないない」


 私の言葉に誰も何も言ってくれない。顔を向けると何故か皆がソッコーで顔を反らす。


「否定の言葉プリーズ!」


 いや、無いからね! 聞いたのも一応の答え合わせだし。それでフラグ立った。みたいな感じで魔王や邪神なんかそうそう来ないって。

 やだな~、も~。来ないよね? 無いよね? 大物は上級ダンジョンでどっしり構えて出てくんな! そしたら私も行かないから!


「さて、白亜さんの暗い未来はさて置いて、先程の続きを話しましょう」


「な、何と言う事を……暗くなんか無いやい! アリシアや瑠璃やミルリルとキャッキャッウフフな楽しい未来だい!」


 誰も彼もが生暖かい眼差しで見るだけ……だと!? いつもの! いつもの感じで誰かとツッコミ入れろよぉー!!


「では教えましょう。と、言いたい所ですが。実は白亜さんには魔法について教えられる事はほとんど在りません」

「なんですと!?」

「白亜さんの魔法イメージとシステム理解はそれほどまでに的を得ているんですよ」


 そう言ったテアは私が前に皆に話した魔法とこの世界のシステムに付いて話し始める。


 若干の補足は在るけど確かに私が話した通りだね?


「強いて言うなら白亜さんはシステムに頼らないでスキルを使う練習もしてみては?」

「ああ、それは思ってた」


 システムは便利だけど言って仕舞えばそれ以外の事が出来なくなってしまう。戦略に幅を持たせたいならシステムを使った安定した威力の物と、扱いは難しいがそれなりに無茶や変更が効くシステムに頼らない物を使い分けた方が良い。


 だからこそ私は自分の考えたオリジナル魔法の方を良く使っているのだ。


 例えばアロー系の魔法を使うとする。

 

 魔力を多く注げば数と威力がますが、システムを使わずに同じ事をやろうと思えば、制御はもちろん大変だが大きさを変えたり、途中で爆発させたりと応用が効く様になる。


 アリシアは私の話を聞いてからその辺をちょこちょこ弄って色々と試している。


 ふ~む。やっぱ鍵はこの辺りか?

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