第212話べ、別に羨ましく何か無いし!
ん? 何だアレ?
体力の回復を図るため休憩していた私の目に、何やら空飛ぶモンスターの様な物が見える。
こっち来る? 撃ち落とすか。
そんな先手必勝を実現しようとした私の耳に、澪の「あれは騎獣? アイギスか……」と、言う声が聞こえる。
騎獣? え~と、それって騎竜とは違うの? 私は澪が放った素敵ワードに気を取られ思考に没頭する。何の動物なのかよく分からなかった騎獣は、近付くにつれそれが翼持つ獅子を模した物だと分かる。それに……。
思ったよりもデカイ!
意外にも騎獣はワゴン車並の大きさを持ちアイギスやアレクトラ、ウチのメイド組三人を乗せても余裕が在るほど大きかった。
何あれ! アイギスのなの? 私も欲しいですけど!
ドンッ! と、音を立てて着陸した騎獣は地面に伏せ、その背に乗っていた皆が飛び降りて来る。
そして皆が飛び降りたのを確認するとアイギスが騎獣に触る。すると騎獣の身体が光り輝き、だんだんと小さくなりやがてその姿は消え去ると、アイギスの右手の中には魔石の様な物が握られていた。
「ハクア様! 皆さんもご無事ですか?」
私がそのファンタジーな光景に釘付けになっていると、ミルリルが駆け寄って無事を確かめる。その後をエルザやミミ、アレクトラ、騎獣をしまったアイギスも追って来た。
「大丈夫だよミルリル。皆無事だから」
「良かったです」
「本当にミルリルは心配性ね。ハクア様達なら大丈夫って言ったのに」
「エルザはもう少し私の心配しても良いんだよ?」
「えっ? 必要ですか?」
アレ? マジトーンだよねあれ!?
「ふふ、大丈夫ですよハクア様。ハクア様が冷たくされて興奮出来る事は知ってますから♪」
「まだその領域に手を掛けてないよ!?」
多分!
「……まだ。何ですね?」
おふ、何か致命的な間違いを犯した気が? だって、面白い事聞いた! みたいな顔してるもん!
『アスモ:ご主……ハクアもこちら側に来るんですか? 寂しい気もしますが歓迎します!』
『ティリス:ええ!? そうなんですかハクアさん! 私も攻めを学んだ方が良いですか?!』
黙れ変態ども!
『アスモ:ありがとうございます!』
『ティリス:何でしょうこの背筋にゾクゾク来る感じ。はっ! これが新しい世界……ハクアさんはいつも私の新しいせか、うっ』
『イシス:気にしなくて良いわよハクア。こっちで処理しとくわ』
……変態が増えていく。
「それで、ハクア様達が言っていた魔族は倒したの?」
「ええ、何とか無事に倒せましたよミミ。後はミオに呪いを掛けたマハドルを倒せば、絶対にやらなければならない事は終わりです」
「あはは……アリシアの言い方はあれだけど、ボク達の目的は魔族討伐と言うよりは、この作戦に参加してグロスとカーチスカに対して、なるべく自分達の有利な状況で戦闘をする事だったからね。後から合流したミオの呪いさえ何とかなれば確かにその通りかな」
「だね。向こうの戦況は分かる?」
「ええ、貴女達が奇襲して追い出されたモンスターはだいぶ倒し終わってるわ。他の魔族を担当していた人達も一部苦戦しているけど、今は何人かがフォローに行っているから大丈夫よ。フーリィー達や冒険者の隊長格は問題なく敵を倒して、各地のフォローをしてると連絡が有ったわ」
なるほど、多少の誤差はあっても想定の範囲内か。
「それと、ミオ様に呪いを掛けたマハドルと、魔族に協力していた勇者はどうやら一緒に居るようです」
「それってアレクトラの【占い】結果?」
「はい。お姉様に言われて先に確かめておきました。それと、上手くは言えないのですがマハドルには気を付けて下さい」
「どう言う事だアレクトラ?」
その言葉に澪が聞き返すと、何と言えば良いのか分からないかの様に良いあぐねるアレクトラ。
「どうやら、アレクトラの【占い】によると、マハドルに不吉な物を感じたらしいのよ。ただ、それがどういった物かまでは分からないそうよ。だから気を付けて」
「なるほどね。ありがとアレクトラ」
「いえ、余りお役に立てずすいません皆さん」
「気にしなくて良いよ。さて、それじゃあそろそろ行こうか?」
「そうだな。っと、アイギスの騎獣だけでは流石にこの人数は無理だな。ちょっと待ってろ」
おいおい。その言い方はまさか……。
澪はそう言うとアイギスの持っていたような魔石を取り出す。するとその魔石が光だし、次第に狼の様な形になりそれがどんどん大きくなっていく。そして、最終的にはマイクロバス並の大きさになった。
「こんな物か? ん、どうした?」
「お前も持ってるのかそれ?」
「ふっ、羨ましいか」
「ぐっ、べ、別に羨ましく何か無いし! 勘違いしないでよね!」
「おい、キャラが違うだろ。まぁ、思うほど良いものでも無いぞ」
「そうなんですかみーちゃん?」
「ああ、これは純度の高い魔石を自分の魔力で染める事で作れるんだが、作るのにも魔力を食うし細かい挙動も向かん。オマケに制御も手放せんからな戦いながらとなると面倒だ。それでも唯一の空中戦対応だがな」
「いろいろ制約があるんですね」
「地上を走るなら騎竜の方が楽だし空を飛べる個体も居るからな。その代わりスピードは早いし形は自由だぞ」
「ふ~ん」
「さあ、早く乗れさっさと行くぞ」
澪に従い皆が次々に乗っていく。ヘルさんは自分で飛んで行くとからと遠慮し、非戦闘員は来た時同様アイギスの方に乗り込んだ。私はそれを乗らずに見る。
「どうした白亜? 悔しがって無いで早く乗れ」
別に悔しがってないし!
「いい、自分ので行く」
「「「はっ?」」」
私は皆の疑問の声を聞きながら自分で作った板状の魔道具を取り出す。
「……おい、何だそれ?」
「自作の魔道具でい。因みに名前はスカイボード」
スカイボードを皆に見せながら、ふふん! と、胸を張る。
このスカイボードは私が考案し作った物で、見た目はスノーボードの様だが少し下が違う。
表側には模様の様な物が書かれており、裏側には幾つかの半球状の魔石が付いており、後ろ側には某、心は大人身体は子供な名探偵が持っているスケボーの様に、ジェット機の様なノズルが付いている。
機能としては簡単、ボードの裏に付いている魔石は純度の高い風の魔石、それが魔力を流すと搭乗者を乗せたボード毎浮かせる。
更に風魔法を足裏で使うと、表面に書かれた魔力を流す機構が、ジェットへと風を送り推進力になるのだ。
簡単に説明するとこんな所。本当に詳しく説明すると、何かハゲそうなくらい面倒な説明になるためこれで勘弁……と、私が説明すると何故か皆が片手で顔を覆う。
何故に?
「お前、よくそんなの作ったな」
「結構簡単に作れたよ?」
「魔道具ってそんな簡単に作れる物じゃ無いわよ」
「まあ、ハクアだしね」
アイギスの言葉にエレオノが答えると皆が一斉に頷く。
解せん。何故だ?
「はあ、もういい。行くぞ!」
「OK」
私が魔力を流すとボードがホバークラフトの様に浮き上がる。それを確認した澪は狼に付いた手綱を操ると、狼が走りだしそのまま宙を走り私もそれに置いて行かれないようにしながら戦場を目指す。
さぁて、ラストスパート!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます