第93話「それで判断とかある意味凄いな!?」
「瑠璃?」
「えっ!? ハーちゃん?」
えっ? 何? 何で? 本物? でも、私をハーちゃん何て呼ぶの瑠璃だけだし……。昨日の話でもしかしたらこっちに居るかもとはおもったけどさ。つか、何で受付嬢の格好? ギルドで働いてるの? えっ? えっ? えっ?
突然の異世界での親友との再会にこの世界に来て一番の混乱に襲われる私。
「ハーちゃん!」
私を認識した瞬間、名前を呼びながら駆け出す瑠璃。しかし──。
「ハーちゃっ! きゃっ!」
「おっと」
「んぅ!」
そう、私の知っている瑠璃と言う女の子は何も無い所で器用に転び、紐や縄があると何故か絡まる。その上、この様に転んだ拍子に例え男に偶然胸を揉まれ様と怒らないと言う、天然のホイホイ状態の女の子である。しかも、男だけでは無くその魅力は女をも虜にするのだ!!
女神クラリスが大人の女性特有の人を見蕩れさせる魔性の持ち主ならば、瑠璃は人を惹き付ける魔性だ。因みに、過去瑠璃に痴漢をしようとした人物はあまりの純粋ぶりに痴漢の前に罪を認めた程だ。
と、言う事で案の定私に向う途中に何故か転けた瑠璃を私は支える。そして、何の異図も無いのに何故か手の位置に胸が納まる。フニフニっと。
毎度不思議だけど何で支えると自然に手の位置に胸が来るんだろう? フニフニ。
「あっ、うぅ、ハー、ちゃん、何時まで揉んでるんですか?」フニフニ。
「うん、この感触間違いなく瑠璃だ!」フニフニ。
「んんっ! そこは胸揉まないでも分かって下さい」フニフニ。
「何て言うか、また大きくなった?」フニフニ。
「アゥン! そ、そんな事無いですよ。アッ」フニフニ。
「ご主人様? いつまでその人の胸を揉んでいるんですか?」
「アリシア駄目だって! 弓は洒落になんないよ! 多分」
「そうだよ。落ち着くかな!」
「そ、そうじゃ! きっと後で主様が揉んでくれるのじゃ」
おいこら! クー、何言ってんのかな!? フニフニ。
「……おねちゃんいい加減やめる」
はい。
そんな訳で私は瑠璃の胸を解放する。
気持ち良かったのにな……。
「ご主人様?」
「すいませんでした」
「くっ! この小娘よくもルーリンさんの胸を」
「はぁ、はぁ、はぁ、もうハーちゃんは相変わらずですね」
「でも、何で瑠璃がここに? それにルーリンって?」
「君達は知り合いなのかい?」
「あっはい、ローレスさん。私とハーちゃんはお友達です」
ギルド長、ローレスって言うのか。
「瑠璃、全部知ってるの?」
「うん、ローレスさんには私が異世界人だって全部話してあります」
「そうか、私と瑠璃は元の世界で一緒に居る事が多かったんだよ」
「と、言う事は君も異邦人かい?」
「いや、私は転生者だよ」
「なるほど」
「てんせいしゃ?」
「瑠璃には後で話す」
「うん♪」
「さて、聞く事が増えたね。ギルド長とゲイル」
「貴様誰に向かって──」
「うるさいぞ。さっさと私の質問に答えろ」
「うっ」
私の怒気に晒されたゲイルは腰を抜かし私を睨み付け、ギルド長は慌てて私とゲイルの間に体を動かす。
「ご主人様」
「ハクア」
「待ってくれ。何か勘違いをしていないか?」
「それはこれから判断する」
「分かった」
「ギルド長!」
「質問はなんだい?」
「まず、瑠璃がここに居る経緯を教えて貰おうか?」
「それは私がちゃんと説明しますよ。ハーちゃん」
「分かった。あんた達は瑠璃と会った所から注釈を入れて」
「分かった」
こうして私は、瑠璃の語りでこの世界に来た経緯を聞き始めた。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
私の名前は彼方 瑠璃、聖嶺高校に通う高校二年生です。
「えっ? そこから始まるの?」
「ご主人様、し~」
「もう、ハーちゃん。ハーちゃんの新しい友達に自己紹介も兼ねてるんだです!」
「⋯⋯あ、そっすか」
え~と、とにかく普通の女の子でした。
「ダウト!!」
「……ハーちゃん?」
「すいません」
ですが、ハーちゃんが事故に会ったとみーちゃんに電話で聞き急いで病院に向かう途中、信号を渡り終えるとそこは森の中でした。
「急展開過ぎるだろ!?」
「だって本当にそうなんですよ?」
「えぇ~、信号渡ったら異世界って流石に⋯⋯」
「異邦人。つまりルリさん? みたいに、召喚でも転生でも無くこの世界に来ちゃった人はそんな感じに急展開らしいよ」
「へぇー、そうなんだ。てっ、何その顔?」
「別に~、私の言う事は信じてくれないのにその子の言う事は信じちゃうんだ。って、思って⋯⋯」
「ふむ、嫉妬か」
「そんなんじゃありません。む~、続けますよ」
いきなり見知らぬ森の中に入り込んだ私は何が何だか分からず、辺りを見回しても信号も横断歩道も無い、全くの知らない場所に立ち竦んで仕舞いました。
でも、幾ら待っても元の場所には帰れず、仕方がなく私は森の中を進む事にしました。それでも見たことが無い動物や草木に私は心細くて仕方が無かったけど、これがハーちゃんやみーちゃんが話をしていた異世界って物なんだって思いました。
「それで判断とかある意味凄いな!?」
「えへへ」
「いや、褒めて無いよ?」
「む~」
そして私はこの状況はハーちゃんから借りてた小説そっくりの状況だったので、何とかして何処かの町に行こうとしました。でも、その途中にモンスターに襲われ危ない所を冒険者の女の人に助けて貰えました。
「……怪我は?」
「えへへ、大丈夫ですよハーちゃん」
「そう」
「やっぱり、ハーちゃんは優しいですね」
「⋯⋯続き」
「は〜い」
助けて貰った冒険者さんに私みたいな人間は異邦人って呼ばれてるって聞いてこれからの事を聞かれた私は、小説の様に「まずは冒険者ギルドに行きたい」と、言い連れていって貰うことにしました。
その冒険者さんにこのアリスベルまで連れて来て貰った私は、ギルドでその人と別れて受付に「何とかなりませんか」って聞きに行こうとした時、冒険者さん達の喧嘩が始まっちゃいました。
その喧嘩はどんどんいろんな人を巻き込んで大事になって、受付嬢さんまで出て来て止めようとしてたけど全然止まらなくて、だから私も受付嬢さんと一緒に「止めて下さい」って言おうとしたら、何時もみたいに転けちゃってそれにビックリした皆が止まってくれたんです。
「⋯⋯それ、ただ単にいつもみたく、いろいろはだけて見惚れただけじゃないの」
「む~、誠心誠意お願いしたから皆辞めてくれたんです」
それで、その騒ぎを聞き付けて止めに来たローレスさんに騒動の鎮圧の御礼を言われて、その時に私の事を話してそのまま受付嬢にスカウトされたんですよ。
「なるほど、じゃあもう二ヶ月位受付嬢やってるの?」
「えっ? ううん。もう半年位やってるよ?」
「⋯⋯ほう、半年か」
「どうしたんですかご主人様?」
「ご主人様?」
「瑠璃、後で話す。前にも言ったけど同じ時代の人間が同じ時代に辿り着くとも限らないから、私がここに生まれる前に瑠璃がこの世界に存在してもおかしくないよ。ただ本当に運が良かったけどね」
「そうなんですね」
「相も変わらず緩いなこの女」
「む~、ハーちゃんはすぐそう言う」
でもこれはハーちゃんの照れ隠しだと解っているので何だかむず痒いです。
「ま~ま~、でも同じ時代に再会出来て良かったかな」
「まあね」
「はい」
「さて、瑠璃からは聞いたけどとりあえず何で瑠璃をスカウトしたの?」
「彼女は異邦人だからだ」
「何か問題が?」
「異邦人は女神様からスキルを授かってもいないし、何の説明も無いままで放り出されるから保護、もしくは自立までの支援が決まりなんだ」
「そうなの?」
「うん、でも、それを悪用して悪さするのも居るってお父さんが言ってたけどね」
「ほう」
「誓って何も悪さはしていないさ」
「分かってる」
「受付嬢をやって貰ったのは彼女の人気が有った事と、この世界に慣れて貰うため、後は仕事の斡旋だ。それと名前は無用なトラブルを避ける為、元の物をこの世界の名前に合わせて付けさせて貰った」
「そうか」
それだけ言うとハーちゃんは立ち上がり「瑠璃を私の親友を助けてくれてありがとう」そう言ってローレスさんに頭を下げて御礼を言いました。
ハーちゃんが頭を下げた!? でも、それが私の為って言うのが凄く嬉しいです。
「頭を上げてくれ。当然の事だ」
「それでも、私に出来る最大限の感謝は伝えるよ」
「そうか」
「それで、これからどうなるの?」
どういう事でしょう?
「ギルドとしては彼女の人気も考えてこれからも⋯⋯と、思っているがそれは彼女が決めるこ──」
「ギルド長何を言っているのですか! 彼女はもうギルドに無くてはならない人物です。このまま働いて貰うべきです!!」
「ゲイル何を言っている。これは彼女が決めるべき事だ」
「うっ! それはそうですが」
ゲイルさん私の事をそんなに考えてくれていただなんて、いつも私の事をチラチラ遠くから見ていたから、てっきり私の事は嫌い何だと思ってました。
私が今まで勘違いをしていた事に申し訳無さと嬉しさを感じていると、今も私を引き留めようとしてくれるゲイルさんを見ながら、横に座って居るハーちゃんが静かに嗤っていました。
あれ? これってみーちゃんと一緒に悪い事考えていたり、攻撃する相手を見つけた時の顔?
「そうだよね。決めるのは瑠璃だ。一個人の人生を赤の他人が決めるなんて傲慢だ。それは私としても同意するよ。と、言う訳で瑠璃?」
「えっ? あっ、はい」
いきなり話を振られて驚く私。
何でハーちゃんの新しい友達の子達はそんな顔してるんでしょう?
「瑠璃はこのままギルドで働くのと私の隣どっちが良い?」
ハーちゃんがいきなりそんな事を聞いて来る。
そんなの聞かなくても分かってる筈なのに? そんなの勿論。
「勿論ハーちゃんの側に居たいよ?」
「なっ!」
「ハッ!」
私が答えた瞬間、ゲイルさんが項垂れハーちゃんが勝ち誇った顔をして、ゲイルさんの事を鼻で笑います。
「⋯⋯ハクア」
「⋯⋯ご主人様」
「⋯⋯先輩」
「あはは⋯⋯」
「⋯⋯主様」
「流石おねちゃん」
何故か部屋中に微妙な空気が漂いました。
何が起こったんでしょう?
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