第63話『シルフィン:遂に身内からまで扱いが……!』

 まさかの仲間からの攻撃で意識を失った私は現在ギルドの医務室で治療を受けていた。


「えと、本当にすいませんでした。ご主人様」

「あはは、ごめんかな」

「まさか、気絶しちゃうとは思わなかったよ」

「おねちゃんガンバ」


 後半の二人は謝ってないよね?


「でも、本当に無事で良かったです……」

「まぁ、ここまでボロボロで無事ってのも変だけどね?」

「それでも……、私達は全員ちゃんと生きてるじゃん」

「うん、あんなの相手にして生き残れば十分かな」

「死ななければOKゴブ」


 ……最近アクアさんのキャラが掴めない!


 〈しかし、楽観も出来ません。三ヶ月の間にせめてグロスとカーチスカに勝てるぐらいにはならないと、ガダルには手も足も出ませんからね〉


「だよね」

「三ヶ月であのレベルって無茶臭いな~」

「確かにそうですけど、エレオノはもういきなり強くなってるじゃないですか?」

「えっ? 何それ!?」

「あっ、そっかハクアは知らないんだよね」

「ボクも一緒に居たけどよく知らないかな?」 


 皆の言葉にアクアもコクコクと頷いている。尊い。


「そっか、実はね……」


 そしてエレオノは、賞品の剣クリムゾンローズと、剣に籠められていた母親の意思について話し始めた。


「──と、言う訳なんだ」

「そんな事があの最中にあったんですね?」

「は~、驚いたかな」

「幽霊?」

「「「それは違う」」」

「ゴブ?」

「まぁでも、話した事が本人にもちゃんと伝わるなら良かったじゃん」

「うん、ありがとハクア」


 〈後でステータスとスキルを確認しましょう〉


「よろしく、ヘルさん」

「やっぱり三ヶ月であの二人より強くなってるって無茶なんじゃないかな」

「「「ですよね!」」」

「短い人生ゴブ」


 アクアさんは諦めないで!


「でも必ずしも来るとは限りませんよね?」

「いや、来るでしょ」

「来ると思うかな」

「ゴブ」

「うぅ、ご主人様?」

「まぁ……来るよね……」


 完全にノックアウトされたアリシアの頭を撫でながら話を続ける。


「現実的なのは進化を目指してレベル上げる。後は……色んなものを犠牲にして雲隠れする! 人とか物とか街とか国とか」


 私としてはこれオススメ。


「ご主人様、それはどうかと」

「ハクアって感じだよね?」

「あはは」

「ゴブ、ゴブ」

「おぉ、嬢ちゃん気が付いたか?」


 私達が話を続けているとライアスが入って来る。


「ライアス、なんだ無事だったんだ?」

「お前な~、はぁ、大丈夫か?」

「まあね。腕も飛ばされたけどアクアが治してくれたから」

「ほぉ、そりゃ凄いな」


 実際アリシア達の話しによると、切り飛ばされた腕などを再び元通りに戻すのはかなりの術者でなければ出来ないらしい。


 うちの子は私以外優秀だな~。


「それで、見舞いに来ただけ?」

「いや、ギルド長が話を聞きたいらしい」

「そっか」


 私は一言そう言うと起き上がり、枕の位置をセットし直し、ベットのシーツを直す。そして「よしっ!」と、呟くと布団を掛け直してもう一度寝る体勢に戻る。


「おやすみなさい」

「オイイ! 何寝ようとしてんだよ!」

「頭痛が痛いから寝る」

「何だと!? 今用があるって言ったよな!? と言うか、頭痛が痛いって何だよ!」

「じゃあ五分位前に出発したって言っといて」


『シルフィン:ラーメン屋の出前か!!』


 よくツッコめたな! こんなネタ!


『シルフィン:私を甘く見ないで貰いましょうか!』

『イシス:ツッコミでなんでここまで胸を張れるのかしら?』

『ティリス:先輩ですからね』

『約全員:あぁ~。』

『シルフィン:遂に身内からまで扱いが……!』


 さて、駄女神の駄目な所はほっといて面倒だから行きたくないな。


「自分で来いって言っといて」

「お前な~、あぁ、そうだ。何か褒美が出──」

「さあ、行こうかライアス!」


 私は速攻でベットから抜け出しドアから皆を振り返り言う。


「……ご主人様」

「……ハクア」

「あ……あはは」


 何故かアクアは私に向かい良い顔で親指を立てサムズアップしている。


 前半三人そんな顔で見ないで!


「はぁ、まぁいいか。さっさと行くぞ」


 そんなやり取りを経て私達はギルド長の部屋へと向かう。


 なんかデジャブ感じるんですけど?


「なんか前にもこんな展開無かったっけ?」

「あっ、私も感じました! なんでしたっけ?」

「そうなのかな?」

「あった???」


 アクアさんは流石です。でも私も何時だったかは思い出せないんだよね?


「ほら、あそこがそうだ」


 ライアスに促されたけど私は立ち止まる。


「どうしたんだ嬢ちゃん?」


 なんだろう。猛烈に面倒くさくなる気がするんだけど?


 そんな事を思いながらギルド長の部屋の扉を開ける。すると中から怒鳴り散らす声が聞こえて来る。我慢して扉をそのまま開けると──。


「また、貴様か! この疫病が!?」


 髪が薄く、眼鏡を掛けた、嫌味の塊のようなハゲ手前の男が開口一番そう言ってきた。


「チェンジで!」


 一言残して思いっきりドアを閉め、皆に振り返ると皆も私を見て頷き。


「帰りましょうかご主人様」

「そうだね! 行こハクア」

「帰って寝るゴブ」

「えっ? 皆どうしたのかな?」


 こうして私達はユルグ村を旅立っ──ガチャッ! 「待て貴様ら!」旅立てませんでした。

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