第46話さあそれじゃ派手に暴れてみようか
「うっわ……」
私の口から思わず漏れ出た言葉で分かる通り、ギルドに着く前から私の心は折れかけていた。
何この人の多さ。この暇人どもめ!
そう、今私の前には人、人、人の壁が出来ていた。
クソ面倒になってきた。帰りたい。
「ハクア?」
「ご主人様? 今更それは無しですよ?」
あれ? 私今声に出してないよね!? 遂に心読まれる位まで来ちゃった?
〈マスターは意外に分かりやすいですからね〉
うわ、初めて言われた。前世では何考えているか分からないってよく言われてたのに!? ハッ、でも確かに周りの奴はそんな節は前からあったような?
「ご主人様そんな事は良いので早くギルドまで行きますよ」
「はい」
アリシアに袖にされたので大人しくギルドに向かい中に入ると、いきなり馬鹿に絡まれた。
「ふん、負けるのが分かっていながら良く来たな小娘共!」
そう言いながら男が絡んでくる。
あぁ、こいつ昨日の一位のパーティーの奴、そう言えば昨日から話ししてるけど名前知らないや。
そう思いながらも華麗にスルーして横をすり抜ける。
「って! ちょっ! 待て!」
しつこいな~。
取り敢えず男の方を見ずに辺りをキョロキョロと見回す。
あっ、アリシア達も分かってなさそう。やっぱりうちの子達は良い子だな~。
「おい、何やってんだ!」
「ああ、そこに居たんだ? 小物過ぎて見えなかった」
何であんな事してたかって? 勿論挑発するためですが?
「な、なんだと!」
「えっと、何処に行けば良いんだっけ?」
「受け付けに一回行ってからここら辺で待ってれば大丈夫だよ。それより──」
エレオノが私の問いに答えながら男の方をちらっと伺う。
あぁ、そんなんしたら駄目だって。
「てめえ、俺を無視して話を進めてんじゃねぇ!」
「はぁ、うるさいから怒鳴るなよ耳障り」
「な、ん……」
私の言葉に沸点を超えすぎたのか男は顔を真っ赤にして固まる。
わ~、凄い真っ赤になってる。酒飲んでるみたい。
「早くいこ」
「てめえ覚えてろよ!」
男は去っていく私達の背中に向けて捨てゼリフを吐く。
ふむ、その場に残る方なのに捨てゼリフとはこれいかに? 捨ててるのこっちだよね。まあそれは良いか、本当に下らない事で時間使ったな。
「じゃあ私受け付け行って来るね」
と、エレオノが受け付けに行ってくれたので私達は椅子に座り待つ事にする。
「ハクア~、もうすぐ始まるから向こうに移動して欲しいって」
「了解」
私達が待っている所にエレオノが受付嬢さんを連れて戻って来る。
そのまま受付嬢さんが全員を案内してくれるので付いていくと、そこには何度も絡んでくる男擁する一位のパーティーの他に、見た事が無い人間が居る。
あれが三位だったパーティーかな?
フードローブを目深にかぶった三人組が案内された部屋の隅に固まっている。
うん、まあ、その、あれだよね? この状況であんなの居たら明らかにヤバイ奴らって感じのフラグにしか感じないよね?
「どうしましたご主人様?」
「皆取り敢えずあそこの奴らには注意しといて」
「ヤバイ奴らなの?」
「まだ分かんないけど……ね。でも、どっちにしてもたった三人で三位にまで食い込んでるんだから強いと思うよ」
「それはまぁそうかも」
「では上位三組の皆さまこちらにいらして下さい」
言われた通りその場に居る全員が移動する。
皆素直だな、まあ逆らう必要もないけどさ。
えっ? 何これ!? なんでこんなに人が居るの?
移動した先に何故か大量の人が居た事に私は一人混乱する。
「それではこれより。スケルトン祭り最終日決勝戦を始めたいと思います」
ギルド長のオークが開会の挨拶をし、そのまま昨日駄女神が言ったルールを集まった人間に話している。
オークモドキの癖になんか偉そう。
〈実際ギルド長ですから偉いんですよ〉
ですよね~。
まだオークの話は進んでいるが要約すると。
1、出場者は上位三組のパーティーのみ
2、時間は十二時から十九時迄の間の封印が完全に復活するまでの間
3、範囲はギルド指定区域内のみ
これは封印が復活してきているため、多少ギルドの方で調整出来るようになるためらしい
4、ギルドの調整により指定区域内のみにモンスターが大量に出る為、危険を感じたら指定区域外に出る事で退場する事が出来る
5、死霊術師による召喚、同出場者への攻撃または妨害行為、指定区域外に踏み出した場合は失格
今回のルールは大体こんな感じらしい。
なんか緩くない?
〈あまりに決まりを決めてしまうと盛り上がりに欠けますからね〉
なるほど。確かにガッチガチだと私みたいなのは特に動きづらくなるもんな。
因みに祭りの様子は魔道具の鏡で中継しているらしい。
まぁぶっちゃけテレビみたいな感じだよね? あれ欲しいな。
「皆ありがとね。私のわがままに付き合ってくれて」
「エレオノ?」
「でもごめんもうちょっとだけ付き合って」
「勿論」
「当たり前です」
「ボクも頑張るかな」
「ゴブ」
正直この見世物状態は気に入らないから萎え掛けていたけど、エレオノの言葉で復活したし、皆の気力も十分!
さあそれじゃ派手に暴れてみようか!
「それでは、スケルトン祭り最終日決勝戦スタートです!!」
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