私、飲み物を飲む。

先輩、とても困った顔をしている。

そんな先輩も良いと思うあたり、私は完全に惚れているんだなって恥ずかしいことを考えてしまう。

今からもっと恥ずかしいことをするんだけど……


「先輩、早く飲まないと氷解けちゃいますよ~」


そう言って先輩を誘導する私。


「お、おう。」


どもる先輩。


ぶつぶつ言いながら、先輩はストローを持ち口に近づけていく。

そのタイミングで私もストローに口をつける。

そうすれば必然的に顔が近づくし、先輩も少しは意識するはず。

それでも意識されないなら私に最初から勝ち目なんてない……

恥ずかしいし目を閉じておこう。


◇◇◇◇◇◇◇◇


実際には一口飲んだだけなのに永遠にも思えるような時間を経て、ストローから口を離して目を開けると、先輩は顔を真っ赤にして硬直していた。

目がものすごく泳いでいる。

友達が昔、私の目が泳いでいたときに「世界水泳かよ」って言ってたのを思い出した。


何はともあれ、しっかりと効果があったみたいで良かった。

ここまで劇的な反応ならむしろチャンスかもしれない。


私が作戦の評価をしている間に、先輩は再起動していた。

今は頭を抱えて、ときおり「ぬお~」みたいな感じの声を出す。

大丈夫かな?

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