forming 第6話
何でかな〜〜。
空回りしてるというか、タイミングが悪いというか。
たま〜〜に強気になったり、ムキになったりした時に限って…… 思ってもいない展開になってしまう。
夜のスナックの前で、酔いとその場の勢いで本音をさらけ出したら、まさかのカオリさん。いくら小さな街でも、偶然すぎる。
おまけに何で自分の言った事、聞いてしまうかな〜〜?
自分と先生が一緒に居たのを見つけたら、まず声を掛けるでしょ! いつものカオリさんなら……
恥ずかしい…… 本当に恥ずかしかった。
この前、カオリさんに『私の事どう? 』
って訊かれ、適当に誤魔化した矢先。
アキさんさんにも言ってしまい、一番知られたく無かったカオリさんに聞かれ、おまけにユウさんの店で、それをネタにお酒を飲むって。
結局、みんなにバレるって事か〜〜。
ある意味、スッキリする? いやいや、しない。今後どういう風に接すればいいのだろう。ん〜〜 やっぱり恥ずかしい……
今迄で、一番足取りが重いユウさんの店への道。
こんなに[ピッグペン]の入り口のドアが、重いなんて……
俯きながら、トボトボと歩きカウンターの端に座った。
「マコちゃん! 」カオリさん。
ドキっ! やっぱり言っちゃうのね。
「今日は、何? 会社の飲み会? 」
ふ〜〜、焦らしますな〜〜。
「そ、そうです」
「会社の飲み会か〜〜 何処でやったの? 」ユウさんが訊いてきた。
「向かいの炉端焼きで…… そのあと上司に連れられ[蜃気楼]へ」
「そうだったの? マユミ居た? 」
マユミは、ユウさんの奥さんの親戚。
「あっ、はい。付いてくれました。自分の事わかってくれてたので、ずっと付いてくれました」
「あーー 前にマコちゃんの事、話したからな。ん? 何か元気ない? 飲み過ぎた? 」
うっ、元気無いというか…… とっても今は気まずいというか、つらいんですよ。
「カオリは? 」
「私も、職場の飲み会。観楓会的な? 」
「そういう時期だからな。ウチもさっきまで団体入ってて、忙しかったよ」
なかなかカオリさんが、トドメを刺してくれない。焦らして楽しんでるのかな。
「いやぁ〜〜 ユウさん。良い時期だね〜〜 静かで、何かロマンチックな時期だね〜〜 」
ぶーー! ここで、きますか!
「そーーか? もう秋、終わるぞ。ロマンチックな感じしねーだろ! アキと良い事あったのか? ニヤニヤして」
その通りですユウさん。全然ロマンチックな時期じゃ無いです。
ん〜〜。そろそろですか。
覚悟するか〜〜。
どぞっ、カオリさん! 一思いに言っちゃって下さい。そして思いっきり笑い者にしてお酒のアテにして下さい。
「ねぇねぇ、アキさんがくれたバッグの花の飾りさ〜〜 何の花だろうね? 」
まだ、焦らすカオリさん。
「わかんないっす」
「アキは、意味のある事しかしないから特別な何かがあるだろうね。前、アキから変な形のパン貰ったけど、まだ意味聞いてないなーー 」
「えっ、何、何? 聞いてないよ〜〜 どんなパン? いいなぁ〜〜 ユウさんだけ」
まだまだ、焦らすカオリさん。
「んと、モンキーブレッド⁈ だったかな? 小さな丸いパンが、繋がってるパン」
「へぇ〜〜。美味しいの? 美味しいか、アキさんのパンだもんね! 」
「甘くて、美味かったぞ! 奥さん大喜び」
「あっ、ちょっとさーー 料理の出前入ったから届けてくるから、店番頼む」
「了解! 何? 出前で稼いでるの? 客来ないから? ぷっ」
「カオリ〜〜 この野郎、馬鹿にしやがって。今日は団体入ったって言ったろ? 」
バタン。ユウさんが、出て行った。
「カオリさん。どーーか、焦らさないでグサっと一思いに…… 」
「ん〜〜? なんの事かな〜〜? わからな〜〜い。なんだろ? 何? 」
むぅ! 最悪です。色んな意味で最悪です。なんでこんな人、好きになったんだろ…… 好きになっては、いけない人なんだ。色んな意味で……
「楽しく飲もうよ! 余計な事考えないでさ? ……ねっ! エロマコ! 」
だからーー やっぱり楽しんでるでしょ!
くそ〜〜、もうヤケになるしか。
飲んで飲んで、べろべろになって忘れてやる!今日の事は……
グビっと、飲んだ…… その後の記憶が無かった。
何となく、気がついたら歩いて帰る途中だった。ただ、歩きづらい。酔ってるから?ふと、右肩を見ると…… カオリさん。
「えっ何? なんで? 」酔いが覚めていなかったが、流石に驚いた。
「こらっ! 酔っ払いが! 重いんだよ! 自分で歩けよ。クソマコがっ! 」
カオリさんが自分を支えながら、一緒に送ってくれた。何か嬉しさと安堵感で、またその後の記憶が無くなっていた。
翌朝。二日酔い地獄の真っ最中に、断片的に思い出す記憶が、夢か現実か区別がつかなかった。カオリさんに支えられた事は、なんとなく温もりとして残っていた様な……
昼過ぎユウさんからメールが来た。
(大丈夫か? 無茶な飲み方は、体壊すぞ! いくらカオリに振られたからと言っても)
現実に引き戻された。
アキさんからメールが来た。
(やるねぇーマコちゃん。ちゃんと告白したんだって? カオリちゃんに直接。
男だね〜〜。また一歩リードしたね! )
うわっ、アキさんにまで話がいってる。
なんでだ? あの後カオリさんが言っちゃったのか? 自分が酔っぱらって自ら言ったのか? サ 、イ 、ア 、クだ〜〜。
カオリさんから…… 電話⁈
「ど〜〜よ! 酔っ払い」
「なんとか…… あの、昨日は…… 」
「何? あっ、言っとくけど私は何も言ってないからね! 自分で勝手に地雷踏んで自爆したんだからね! 覚えてないだろうから言っとくけど。私に迷惑まで掛けて。今度、奢ってよ! 」
それだけ言って切られた。
自爆ですか。なんでそういう時だけ男らしいというか、お馬鹿というか……
ユウさんからまたメール。
(別に、気にすることないよ!マコちゃんがカオリ好きな事、とっくにみんな知ってたし。そのうち女、紹介してやるから落ち込むな! カオリじゃ無くて良かったって、いずれわかるだろうし。笑)
みんな…… みんなですか? 知ってましたか。アキさんもですか。ユウさんも。
えーー、もしかしてカオリさんも?
拝啓。親父、おかん。私、何故か この小さな街に来て転職しました。
とんだ…… ピエロに……
ちなみにこの街にサーカスなんて来た事ないです。
第6章 終
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