forming 第4話

久しぶりに、ユウさんの店 [Pig pen]に四人揃った。

カオリさんはアキさんを真ん中に座らせ、改めて乾杯した。

ユウさんが料理を沢山作ってしまってたが結果的に丁度良かった。

いつ以来だろう…… 四人揃って笑顔で楽しく出来るのは。温泉旅行以来?


他にお客さんも来なく、貸切り状態。

全く誰も来ないのも珍しく、思わず


「誰もお客さん来ないっすね? やっぱりアキさんがいるからっすか〜〜? 」


「そうよ! だから言ったでしょ、アキが来る時だけ何故か客来ないんだって! 」

ユウさんが首を傾げながら。


「ちょっと〜〜! アキさんのせいにしないでよね! 元々来ないの! この店に客なんて! 」

カオリさんが、アキさんを守る為に凄い事を言っちゃう。

アキさんに一途なカオリさんが、復活したみたいだった。その感じが何故か、心地良かった。変な自分…… カオリさん好きなのに。アキさんにも自分の気持ちを言っちゃたのに。


「アキさ〜〜ん。マサユキの事、なんでも無いからね〜〜。ホントだよ! アキさんが嫌ならもう会わないし」


「嫌じゃないよ! と言うか仲良くしてあげなよ。幼馴染でしょ? 彼だって、ここに戻って来たの久しぶりでしょ? 知ってる人が仲良くしてあげないと寂しいでしょ? 」


アキさん…… 凄いっす! 言えません、自分は…… 苦手だ! と思ってた位ですから。


でも、アキさんの言う通りだなぁ〜〜。

自分だって、この街に来た時は不安あったし。アキさんやユウさんに良くして貰ったお陰だしな〜〜。カオリさんが惚れるのも良く分かる! くぅ〜〜 アキさんと入れ替わりて〜〜!


「ねぇねぇアキさん? このバッグの飾りっていうか、彫刻? みたいのな〜〜に? 」


飾り? 彫刻? ん、何だ? と思い自分も貰った鞄を見てみる。

鞄の角隅に、彫ってあった。カービングだ。前は、革のキーホルダーにフクロウが彫られていた。


今回は…… 花⁈


小さな可憐な花が、控えめに彫られていた。

カオリさんのバッグを見てみると同じ花が彫られていた。


「私をイメージして彫ってくれたの?

キャ〜〜 うれしい! 」

そんな事を言ってる、浮かれたカオリさんに…… 会心の一撃を。


「カオリさん? 残念だけど自分にも同じ花が彫られてあるんすよ〜〜! ぷぷっ。

大体、カオリさんイメージしたらもっとゴツい花じゃないっすかね〜〜 」


言いました、自分。言っちゃいました。

刺し違える覚悟っすよ! 勿論!



「クスッ…… ク…… うっ…… 」


……え〜〜! もしかして…… 泣いちゃったの?

演技? 嘘泣き? ……だよね。


カオリさんは、顔を手で覆いながらアキさんの胸に……

「カオリさん、冗談ですよね? 嘘泣きやめてくださいよ〜〜。そんなキツい事、言って無いでしょ? 」


アキさんとユウさんはちょっと困惑した顔。どっちなんすか? 二人とも。

何か言ってくださいよ! お二人さん。

段々、ヤバい感じの…… 空気が漂う。


えっホントなの? 何で? そんなヤバい事だった?


鼻をすする音だけ。


マジか〜〜、とりあえず、

「ごめんなさい。カオリさん言い過ぎました。ホントにごめんなさい」


普通ならここで ♫ ティッティティ〜〜

とか言いながら『騙された? 』 とかの展開なのに…… 何も無い。


ジットリ額に汗が滲んだ。


ユウさんが口を開いた。

「別にマコちゃんの言った事が悪い訳じゃ無いよ多分! カオリもずっと辛かったんだよ。だから毎日のように一人でここ来てマコちゃん待ってたし」


「気にしてたんだよ、ずっと…… 自分責めたりして。こういう性格だからね、マコちゃんには素直に言えないんだよ」

カオリさんの頭を手で支えてあげながら、アキさんが言った。


「ちがうよっ! そんなんじゃ…… ない。

マコが酷い事…… 言っ…… たから だよ」

かすれ気味の小さな声でカオリさんが……


「ハイハイ。素直になろうね。またこうやって仲良く出来たんだから」

アキさんがカオリさんの顔を持ち上げ、

涙を拭いてあげながら。


呆然としたままの自分。


今までの経験から、まるでこんな展開は予想してなかった。

自分の勝手な思い込みのせいで、カオリさんにこんなに気を遣わせていたなんて……


どうしよう! どうしたらいいんだろ。


「とりあえず! 土下座だな! 」


ユウさんが指を上下に動かし、土下座をしろ! という様な仕草をしながら言った。


席を立ち、カオリさんに近づき土下座しようと片膝を少し曲げたところで、

「冗談だよ! マコちゃん」

ユウさん。


「そうだよ! 土下座しなくていいの!

何、言うのユウちゃん。本気にするでしょ! 」アキさん。


「あは、ごめんごめん。ごめんマコちゃん、ついね。流れ的にね! 」


「流れはいらないの! マコちゃん真面目なんだから」アキさんがユウさんにビシっと言った。


「ダメ! ……しなさいよ! 」


へっ? カオリさん? ん〜〜 やっぱりするか〜〜、自分が悪いんだし。


「もう、カオリちゃん? いいでしょ、もう。土下座させたらカオリちゃんの事、許さないよ! 」厳しいアキさん。


「……わかった。じゃ土下座はしなくていいからビンタはいい? 」


なんか、レベル上がってません?


「ダメ! 」


アキさん〜〜 ありがとです。味方は、アキさんだけです。


「わかった…… じゃ…… グーパンチで! 」


だから…… レベルが上がってます。カオリさん。許してください、土下座しますから〜〜。


「うーーん、じゃ一発だけだよ! 」


ぶーー! 何言ってるんすか? アキさん!


グーパンチなら土下座にして欲しいんですけど……


「目、瞑って! 歯、食いしばって! 」

カオリさんがそう言いながら自分の目の前に。

ダメだ。覚悟を決めよう! カオリさんに気を遣わせたんだし。男を魅せろ!

マコ!


"ガシャッ"


「きゃはは! ウケる」


ウケる? ガシャって?

目を開けるとスマホをこちらに向けたカオリさん。

写真撮られた? 何それ!


「みてみて〜〜! ヘタレマコのビビリまくってる顔! ウケる……! きゃハハハ」


「もう、かわいそうで…… ぷっ…… しょ」


アキさん…… 笑ってますよね?

ユウさん、遠慮なく笑ってますね!

カオリさん、結構泣いてたと思ったけど余り痕跡ないっすね。


はぁ〜〜 やはりカオリさんは敵に回してはいけない人だと、つくづく思った。


アキさんが自分の耳元で……


「感情出したり、キツい事しちゃうのは

マコちゃんが大事だし、気になってるからだよ! ライバルとして一歩リードしたんじゃない? 」


ん〜〜、どうみてもそうは思えない様な……


「マコ! これからは何でも言う事聞く事! じゃないとこの写真バラまく! 」


ね! アキさん、こんな事 言わないでしょ?気になる相手には……

大体、今迄も言う事聞いてきたと思うんですけど……


あれですよ、アレっ!


ただの主従関係ですよ!


第4章 終

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