mixing 第4話

パン屋さんの店主、アキさんに連れられアキさんの同級生 (ユウさん) がやっているお店 (ピッグペン) やで、お酒と美味しい料理をご馳走になったあの晩。この街の事など、色々教えて貰い有難かった。何より、アキさんとユウさんが親切で優しくてこの街に知り合いがいない自分にとって、頼りになりそうな感じで嬉しかった。


ただ……


少しお話し出来る仲になれたからこそ、アキさんの過去が少し気になっていた。

流石に、そこの部分は聞く勇気は無かったが色んな人生を歩んで来た人なんだろうと勝手に納得しようとしていた。


一言で言えば、少し影のある人。


お店 (after-eve) の雰囲気も他とは違う感じだし、無口では無いけど余計な事は話さないクールなアキさん。

自分が軽い感じの人間だけに同じ男としても、ちょっと憧れの様な想い。そんな印象をアキさんには持っていた。


自分は、とある機械部品の会社で働いていた。まぁ普通に日々を過ごして来た。彼女も居た。結構長く付き合っていたが、突然別れを告げられる。今更⁈ 何でって感じ。33歳。結婚も多少は意識してたのに、女は分からん。訳が解らず困惑したまま何日過ぎた頃、携帯に写メが。文章から察するに間違えて送って来た模様。写メには、彼女 (元彼女) と男のツーショット。


ええーっ。


オマケにどう見ても若い感じの男。歳下の男かよ。彼女 (元彼女) は、自分と同い年。


『間違えて送るかーー 普通。ワザとだろ!』


男が出来たからフラれたのね。

二股かけられてた? マジで? 最悪。

一気にやる気が無くなり、彼女 (元彼女) と同じ場所に居たく無い。環境変えたい。

その思いだけで、違う部署で募集をかけてた地方勤務に名乗りを上げた。

違う部署は、主に農作業に使われる機械の販売。

必然的に第一次産業中心の地方 (田舎) での勤務。その時は何も考えずただこの地を出たい一心だった。


そんな少し、いい加減な理由でこの地に赴任。こちらの会社でも転勤でやって来る人は結構いるのだけど、殆どが役職のある方。こちらの会社を任す感じの偉い人ばかり。自分の様な役職も無く、違う部署から手を挙げて来る人は珍しく意外と会社では良くしてもらっている。殆どの人が地元採用の方ばかりなので可愛がってもらってる。

ある意味自分も色々あり、まさに心機一転のつもり。


アキさんも似たような境遇かな?


独身ということは聞いたけど。見た感じも年齢より若く見えるし、女性にモテそうな見た目だし。センスも良さそうだし。

自分の中では結構 …… 謎 です。アキさんの事は。

ユウさん (ピッグペンのマスター) は、結婚してるみたいだけど、色々あるみたい。


みんなそれぞれ色々あるんだな〜〜 と改めて思う。もしかしたら自分の事なんて大したことないのかも。


なんて色々、人のこと詮索してみたり悲劇のヒロインぶった感じで自分自身を慰めてみたり。

男はやっぱり女々しいのかな? と感じつつ、静かで真っ暗な夜空に降って来そうな位の大きくて綺麗な星々を見上げながら田舎のこの街に居る事を実感していた。


第4章 終

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