第394話 やっぱり私は教皇にはなれません
「
《魔神》の魂が完全に消滅した瞬間に、俺は《
「これでティモテは無事、なはず……きっと」
俺は無事を確認するべくティモテのもとへ小走りで――くっ、だめだ、さすがに身体が重い――歩いて近づいていった。
「ティモテ……?」
そっと優しく声をかけながら、地面に倒れているティモテを抱き起こすと――、
「マナシロさん……私、戻ってこれました……」
《魔神》じゃない、本当のティモテがそこにはいたのだった。
「ああ、よく頑張ったな」
それを見て俺はにっこりと微笑み返したんだけど、
「いいえ頑張ったのはマナシロさんたちです……私は何もしていません。身体を《魔神》に乗っ取られて、ただただ皆さんに迷惑をかけてしまっただけでした」
ティモテが申し訳なさそうに顔を伏せた。
「そんなことないさ」
「そんなことありますよ。あーあ、やっぱり私は聖女失格ですね。未来の教皇だなんて――そんな資格なんて、私にはとてもじゃないですけど無かったんだって、よくわかっちゃいました」
そう言って少し寂しそうに笑ったティモテ。
「そんなことないさ」
だから俺はもう一度、同じ言葉を繰り返した。
だってその言葉は励ましなんかじゃなく、俺の本心からの気持ちだったのだから。
しゃーない、ちょっと俺の心の内を語ってやるか。
「なぁティモテ。聖母マリア=セレシアは結果だけでなく過程も大切にしてたって、この前言ってたよな?」
「はい、その献身と奉仕の過程こそが、
「だったらさ。ずっと一人で自分の中の《魔神》について悩み続け、必死に戦ってきたティモテは――そんな高潔な努力の過程を経てきたティモテは、やっぱり教皇になるのにふさわしいと俺は思うんだ」
「ぁ……」
「だってそうだろう? 自分の中の《魔神》と何年も人知れず戦うなんて経験、他の誰もしてないんだぜ? そんなオンリーワンの経験を生かすことができるのは、他の誰でもないティモテだけだ」
「……そう、なのかもしれませんね」
「それに最後は勝ったしな。努力の末に勝利する。過程も結果も非の打ちどころのない完全勝利だ」
「でも勝ったのは皆さんの、マナシロさんのおかげです。私は《魔神》に乗っ取られているだけで、足を引っ張るだけのダメダメでした」
「――絵本のマリア」
「え?」
「絵本のマリアはさ、完ぺきな聖女じゃないんだろ? 悪いことをしたり失敗したりするけど、最後にはなぜか上手くいってしまう――そんな人間味あふれたマリアが、ダメな自分に勇気をくれるって、この前言ってたよな」
2人で夜明かしして話したときに、確かそんなことを言っていたはずだ。
「とりとめもない会話だったのに、覚えていてくれたんですね」
ティモテの一体どこにダメなところがあるのかすごく疑問で、印象に残ってたんだよな。
「だったらさティモテもそんな人間味のある
「人間味のある教皇……」
「そうだよ、この俺が保証しよう。ティモテは史上最高の教皇になる――いやこんなSSS級の経験をしたティモテが、最高の教皇にならないわけがない!」
熱弁の締めくくりに、俺は超どや顔でそう言った。
「……やっぱり私は教皇にはなれません」
だけどティモテの答えは変わらずで――。
「そ、そうか……」
ううっ、俺の熱弁が説得力なさすぎて泣ける件に関して……。
「だって――」
「ん?」
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