第373話 顕現、《神滅覇王》

「俺は知りたいんだ、ティモテのことを。これまでどれほど長く《魔神》の魂に抗ってきたのか。どんな想いで戦ってきたのか。もし乗り越えたらどんな未来予想図を描こうとしていたのか。子供が好きって、恩返しをしたいって言ってたよな? 色んなことを、ティモテのことを、俺はもっともっと知りたいんだ」


「でも《魔神》はSSS級、《神滅覇王しんめつはおう》はSS級です……《魔神》が顕現してしまえば勝てません……」


「大丈夫、なんとかする。なんとかしてみせる。知ってるか? 《神滅覇王しんめつはおう》ってのは常勝不敗の最強存在、神をも滅す覇の道を往く者なんだぞ?」


 その言葉に呼応するようにして、俺の中に強大な黄金の光が生まれ始める――!


「早まったかマナシロ・セーヤ! よりにもよってその娘一人の命と世界の命運を、天秤にかけようというのか――」


 グレンが終わった話をまた蒸し返してきやがる。

 ――ったく、


「それの何が悪いんだ?」


「なに……」


「それの何が悪いってんだ?」


「悪いに決まっておろう! たった一人を救うために、極めて分の悪い賭けに大多数の命を、世界の命運を賭けるなぞ、正気の沙汰ではない――」


「俺は麻奈志漏まなしろ誠也。《神滅覇王しんめつはおう》の麻奈志漏まなしろ誠也だ! 俺は、俺こそが神をも滅する覇の道をゆく最強無敵の絶対存在――《神滅覇王しんめつはおう》の麻奈志漏まなしろ誠也だ!!」


 俺の身体が黄金の灼熱で、熱く熱くたぎりはじめる――!


「あちちち、熱っ!? マジこれ凄い熱量なんだけど!?」


 高まりだした《神滅覇王しんめつはおう》の力に、融合合体していた精霊さんが押し出された。


「ふー、ふー、火傷しちゃうよ、これ以上は無理かな。ってことで後は任せたわよ、マナシロ・セーヤ!」


「任せとけ! 精霊さんは《神焉竜しんえんりゅう》と一緒にウヅキと巫女エルフちゃんを守ってやってくれ」


「オッケー!」


 《精霊融合エレメンタルフュージョン》を解除した精霊さんが、ぴゅーっと後方に下がっていった。


「いかに敵なしの《神滅覇王しんめつはおう》といえども、《魔神》には勝てぬ。想定ランクはSSS級。《魔神》がこの世に生まれた時点で、世界の滅びは確定する――」


「ああもう、うっせぇんだよ、いい加減てめぇは黙ってろ! そしてそこで目ん玉ひん剥いてよーく見とけ! この俺が――《神滅覇王しんめつはおう麻奈志漏まなしろ誠也が切り拓く最強で最高の未来を――!」


 俺の心に、果てなき果てを見続けた一人の男の物語が――《愚者の聖句》が沸き上がる――!


「ってわけだ《魔神》。ビンビンとすげー波動を感じるぜ。もうほとんど起きてんだろ? とっとと出て来い。《神滅覇王しんめつはおう麻奈志漏まなしろ誠也が全力全開、本気の本気で相手をして――いや、叩きのめしやるからよ!」


 《神滅覇王しんめつはおう》、お前はこれを待っていたんだな。

 《魔神》と完全状態で戦うために、俺の呼びかけにも応えずじっと出番を待っていたんだな――!


 ならば応えてみせろ!

 証明してみせろ!


 《神滅覇王おまえ》が最強であることを――!


「『は、神の御座みざ簒奪おかすもの――』」

「『は、竜のみかどこうべを垂らせしもの――』」

「『は、夜天やてんまたたく星をとすもの――』」


 《愚者の聖句》が紡がれるとともに、俺の体中から黄金の粒子が吹き上がり始めた。


「『は、神をも滅す覇の道をきて――』」

「『ただの一度も振り向かず、愚かなまでに、更なる未来さき強欲ほっし続ける――』」


 俺の身体からいっそう激しく、激しく、激しく――!

 黄金の粒子がこれでもかと猛烈な勢いで立ち昇ってゆく!


「『の者の行く手をはばむ者あらず――』」

「『ただ覇をもって道なき千里みちを駆け続ける――』」

「『その気高き道程みちのりをして、畏敬を込めて人は呼ぶ――』」


 今まさに顕現せんとするその力は――!


 あらゆる全てを打ち滅ぼす、この世界固有の神話級・戦闘系SSダブルエス級チート――!


「『その名、たっとき、《神滅覇王しんめつはおう》――!』」


 俺の中に、灼熱に燃え盛る黄金の小恒星たいようが、満を持して降臨した――!

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