第326話 いい話?

「ってことはだ。差し当たって突き止めたいのは、《剣の魔将》グレンの目的が何かってことだな」


「うん。なぜ帝都や他の場所ではなく、東の辺境に現れたのか。ここにセーヤが――《神滅覇王しんめつはおう》がいることは、どうも知らなかったみたいだし」


「ああ。わざわざ東の辺境に顔を出した理由があるはず――」


 よし――!

 俺は頃合いと見て、ここまでの緊急対策会議の話をまとめに入った。


 議論の最後に結論を取りまとめると、美味しいとこどりというか、まるで俺が仕切ったみたいな感じになるよね! 


「ま、その辺はどうしたって推測の域を出ないからさ。とりあえずは魔王復活の話とあわせて、少し気を付けようってことでいいかな?」


 ――えっと、ナイアが手慣れた様子で結論をまとめちゃいました。


 いやいいんだよ?

 仕切り慣れた人がやったほうが、そりゃ手際もいいしね……。


 みんながふんふん了解してそれ以上話が出なくなったところで、緊急対策会議はお開きとなった。


 そして、


「暇なのじゃ」

「アタシ参上!」


 話が終わるタイミングを見計らったようにやってきた《神焉竜しんえんりゅう》と精霊さん。


「……」


 見計らっていうか?


 間違いない。

 この2人、面倒くさい話だと思って自主休講サボっていたな。


 仲がいいのか悪いのか、思考の方向性がわりと似通った二人だった。 



「そうだ、せっかく関係者が揃ってることだし」

 場をまとめた流れで、ナイアがそう切り出した。


「シリアスな話ばかりで場が重くなっちゃったしさ。最後にひとつ、いい話でもしようか」


「いい話? なんの話だ?」

「ふふっ、もちろんセーヤの話だよ」


「俺?」


 最近――って何かあったっけか?

 あったっていうと、SS級と戦ってばかりいた気がするけど。


 でも「いい話」なんて言われちゃうと、ちょっと期待しちゃうな。

 モテモテハーレム的なえちえちなお話だといいと思います!


 ――って、あれか!

 えちえちというワードから、俺は「いい話」に一つだけ思い当たる節があったのだ。


 もしかして――もしかしなくても――ココのお店でナイアとお買い物デートしたときに約束した、「二人だけでえっちな下着の鑑賞会」のことじゃない!?


 これは期待しちゃっても、いいのかな!?


 いや、期待で終わるはずがない!

 きっとそうに違いない!(確信)


 期待に胸(と股間)を膨らませる俺を見て、ナイアは見てちょっといたずらっぽく笑うと、単刀直入に言った。


「実はね、セーヤが大公を授与されて東の辺境の領主になる――って方向で話が進んでるんだ」


「え? なんだって?」

 因果を断絶するディスペル系S級チート『え? なんだって?』が暴発した。

 それはもう派手に暴発した。


「実はセーヤが大公を授与されて東の辺境の領主になる――って方向で話が進んでるんだ」


 チートの効果によって、結果がなかったことにされ、もう一度ナイアの口から衝撃の言葉が飛び出た――んだけど、


「えっと、はい……?」

 ナイアは急になに言ってんの?


 領主って、統治者って意味の領主?

 で、タイコーってのはなにさ?


 いやそんなことよりも「二人だけでえっちな下着の鑑賞会」は?

 ねぇ「二人だけでえっちな下着の鑑賞会」は?


 俺はまだこの素敵イベントのフラグを回収していないよ……?


 でも驚いたのは俺だけじゃあなかった。


 「ふぇぇぇぇぇっっ!?」

 って驚きいっぱいの顔をしたウヅキを筆頭に、みんながみんな度肝を抜かれた顔をしている。


 あのクールビューティでポーカーフェイスなクリスさんですら、だ。


 そしてナイアはというと、いたずら成功って感じで楽しそうに反応を見ていたのだった。

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