第303話 くくくっ、真の主が俺であるということに、おまえはいつ気づくかな……?

 アウド村――改め「衛星都市アウド」のあれこれが確認できたところで、


「実はかくかくしかじかでさ――」

 俺は巫女エルフちゃんや精霊さん、トワのことをサーシャに説明した。


 トワは自分が戦った記憶を持っていないので、そこはちょっとぼかしたけどね。


「本当にセーヤ様は休む暇もなく、日々誰かのために戦っておられますの……まさに男の中の男ですの」

 サーシャがうっとりしながら熱いまなざしをおくってくる。


 もちろんまんざらでもない俺だった。


 ――ごめんなさい、ちょっと見栄を張りました。

 可愛い女の子に情熱的に見つめられて、ちやほやされて、とってもとっても気持ちがいいです!


 ――と、

「話は終わったのだ!? サーシャ、元気そうで何よりなのだ!」

 《シュプリームウルフ》シロガネが待ってましたとばかりに口をはさんだ。


 今は少女の姿をしているけれど、白狼状態なら耳をパタパタ尻尾はぶんぶん! って感じのガッツキようだ。


「シロガネも元気そうでなによりですわ。あなたもセーヤ様たちと一緒に暮らすことにしたのですね」


「こ、これは父上のめいだから、部族のしきたりだから仕方なくなのだ! 我が《神滅覇王こいつ》を守ってやるのだ。もちろん婚約者ファミリーであるサーシャのことも守るから安心するのだ!」


「ふふっ、ありがとうですの、シロガネ」

「どうってことないのだ! 大船に乗った気でいるのだ!」


 やれやれ、シロガネはほんとサーシャのことが好きだなぁ。

 戦った&親身に話を聞いたことで、サーシャ>シロガネという主従関係的な絆ができたというか?


「ただまぁなんていうかその、俺も戦ったし、俺も話も聞いてあげようとしたし、俺も妹たちの救出に参加したんだけどね……?」


 なのにシロガネが俺に懐く気は限りなくゼロだよね?

 ぐすん、差別はよくないんだよ……?


 ああでもそうか。

 つまりシロガネをコントロールするには、サーシャに言ってもらえばいいわけか。


 よし、何かあったらこれからはサーシャに頼もう。

 なんだかんだでシロガネは《シュプリームウルフ》、SS級だからな。


 実体のある分身を作り出す『固有神聖』《群体分身ミラージュファング》は、索敵や警戒にも向いた汎用性の高いスキルだし。


「くくくっ、真の主が俺であるということに、おまえはいつ気づくかな……?」



 ――というわけで。


 衛星都市アウド(開発中)でサーシャと再会した俺たちは、さらなる大所帯となってサクライ家へと向かった。


「やっと帰ってきたぞ……思ってた以上に長旅になっちゃったっていうか――」

 なんて感想はサクライ家に近づくにつれて雲散霧消うんさんむしょうしていった。


 というのも、だ。


「ふわぁ……綺麗になってます……!」

「うにゅ、これはびっくり、たまてばこ」


 当然といえば当然のことで、アウド村が衛星都市へと変わったように、サクライ家もまたその姿を変えていたからだ――!


「へー、なかなかいいところに住んでんじゃないの」

 精霊さんもふよふよーって空中を漂いながら、微妙に上から目線で感心している。


 屋敷、というか古びた大きな民家(あえて言おう、かなり貧乏)って感じだったサクライ家はいまや、


「これはもう家っていうか、高級旅館だな……」

 目に映るすべてが、大きく変貌を遂げていたのだった……!

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