第245話 精霊さんってよほど暇なんだな……

「最後の知恵比べは『迷いの森』よ!」


 またもや華麗な復活を遂げた精霊さんが言った。


 それでも復活するのにさっきより時間を要したところを見ると、せこーく勝とうとしたのに真正面から正攻法で完全試合パーフェクトゲームを喰らわされたのは、精霊さん的にもかなりショックだったっぽい。


「それでも何ごともなかったかのように立ち直っちゃう、その鋼メンタル。そこに痺れて憧れちゃうよ……」


 精霊さんが続ける。


「ほら、あそこに塔が見えるでしょ? 森の木々によって作られた迷路を攻略しつつ、途中で待ち受けるトラップや謎かけをクリアして、あの塔までたどり着いてみなさい!」


 ということらしかった。


「オリエンテーリングみたいなもんか」

 これまた懐かしいな。


 巫女エルフちゃんたちとのパワー回復プログラムといい、歴史資料集といい、なんか童心に帰った気分だな……。


「いいところに目を付けたわね! これはね、座学のお勉強だけじゃなくサバイバルの知識とか機転とか応用とか、そういう実践的な知識や思考能力が試される勝負ってわけ!」


「ふむふむなるほど」

「この『迷いの森』はね、アタシが100年かけて作り上げた自慢の逸品なんだから、心してかかってくることね!」


「いや100年はさすがにかけすぎだろ……」

 思わずツッコミを入れた俺に、


「いや~、アタシってばこだわりはじめると、とことんこだわっちゃうタイプなんだよね~」

 やたらと自慢げに自分を語っちゃう精霊さん。


 ……ま、確かに。

 精霊さんは「知恵比べ」に関してはかなり作り込んでるよな。


 そりゃ自分を有利にするためのせこい揚げ足取りみたいなのもやってくるけど、色んな「知恵比べ」を用意してたし。


 この『迷いの森』も100年かけて作り上げてるし、ガーゴイル(故)1つとっても10年もかけて丁寧に作ってた。


「精霊さんってよっぽど暇なんだな……」

 正直な感想をぶっちゃけてみました。


「でも暇……暇か……。暇ね……暇……」


 そもそも、なんで精霊さんは暇なんだろう?

 暇ならどこか遊びに行けばいいのに、どうもこの辺りにずっととどまっているらしい。


 なんでだ?


 動かない――いや動けないのか? 

 どちらにせよこの場所にずっといる理由があるはずだよな?


 精霊さんが暇な理由……エルフ村の精霊契約は何千年続いてるんだっけ。

 そういや自然すぎる流れだったから気にしてなかったけど、なんで精霊さんが「知恵比べ」をやってるんだ?


 だってもともと俺たちが「知恵比べ」する相手は、《精霊神竜》のはずだろ?

 精霊さんは俺たちの様子を偵察に来た、ただの使いっぱしりのはずで。


 あれ、もしかして精霊さんこいつって――。

 俺がとある結論にたどりついた時だった。


「じゃ、アタシは先にあの塔に行ってアンタたちがクリアするのを待ってるから。ま、せいぜいがんばりなさい!」


 言い残して、精霊さんはぴゅーっと高高度まで飛び上がると、


「じゃーねー!」

 そのまま空から一直線に塔まで飛んで行っちゃったのだった。


 ま、その件は後でもいっか。

 それよりまずは、この『迷いの森』の攻略だ。


「さて、どうしよっか? とりあえず塔まで直線距離で5キロくらいかな?」

「はい、結構ありますね」

 運動が苦手だからだろう、ウヅキはちょっと不安そうに眺めていた。


「迷路にもなってるって言ってたし、トラップや謎解きも配置された広大な森を攻略しながらとなると、むやみやたらの行き当たりばったりじゃクリアは難しそうだぞ……」


「かなり戦略的にいかないとですねー」

 巫女エルフちゃんはいつも通りだ。

 一緒に楽しくお遊戯をしたからわかるんだけど、運動能力も割と高スペックっぽい。


 お遊戯楽しかったなぁ……またしたいなぁ……。

 巫女エルフちゃんが飛んだり跳ねたりすると、けしからんお胸がゆっさりゆさゆさ揺れるんだよなぁ……。


「時に主様ぬしさま

「ん?」


わらわに一つ、考えがあるのじゃが」

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