第230話 えへへ、ちょっとお行儀悪いかもです

 話が一段落したところで、


「ぅーーん」

 ウヅキが座ったまま両手を上に伸ばしてのびーっとしてから、そのままこてんと寝ころんだ。


「えへへ、ちょっとお行儀悪いかもです」

 なんて言って、ちょっと甘えた感じで無防備に横になったのだ。


 しっかりもののウヅキ。

 普段はほとんど見せないそんな仕草は、俺にだけ心を許してくれてるって感じで、これまた可愛すぎて困るぞ……!

 いや困らないけどね!


 そして俺はというとウヅキの隣で少しだけ体勢を崩して、手を後ろについて体を倒しながらひまわり畑を眺めることにした。


「だってさ、2人きりとはいえ外だし? 一緒に横になるのはかなり恥ずかしいじゃん……」


 敢えて認めよう、ヘタレであると!

 だがしかし野外の開放感あるなかで、添い寝的なことをするのはまだちょっと俺にはハードルが高めなんだよ!?


 頭上では雲が風に流されながら、次々と形を変えては流れていた。

 真っ青な空と、黄金のひまわり畑のコントラストが目にも鮮やかで綺麗だな……。


 のどかで平和な昼下がり。

 隣にはウヅキがいて。


 夏とは思えない涼やかな風にほほを撫でられながら、のんびり二人で黄金に染まる大地と青空のコントラストを眺めていると――、


「えいっ」

 ウヅキがそんな掛け声とともに、身体を支えていた俺の右腕をちょこんと引っ張った。


「え――?」

 腕をつっかえ棒のようにして千切れ流れる雲を見上げていた俺は、その支えを失ってトスンと御座の上に寝ころがっちゃったんだけど、


「うぉ――」

 目の前の超至近距離に、ウヅキがいた。


 俺の腕を引っぱった時に、しかし引っぱりきれなかったウヅキは――むしろウヅキが俺の腕に引っばられるような形で――俺の方へと引き寄せられてしまったのだ!


 しかもウヅキの両手はというと、俺の右腕をぎゅっと胸に抱き挟みこむような形でさ!?


 そして俺は俺でバランスを崩した際に本能的になにかに捕まろうとして、左手がウヅキの腰をしっかと掴んでしまっていて。


 一面のひまわり畑の前で2人額を突き合わせるような近い距離で、半ば抱き合うように倒れ込んでしまった俺とウヅキだった。


 ウヅキの大きくてやわらかいものが、俺の二の腕にしっかと押し付けられている。


「こ、これは間違いない! ラブコメ系S級チート『ラッキースケベ』が発動したんだ……!」


 久しぶりな(&無くても割とえっちなとらぶるが発生する)せいで、その存在すら記憶の彼方に忘れつつあったんだけど、


「よかった、俺はまだラッキースケベの神様に見放されてはいなかったんだな……!」


「あ、あの! えっと、その!? はわ、ふえええぇぇぇぇっ!?」


 ウヅキが顔を真っ赤に染めて、そうして超至近距離で見つめ合うこと数秒。


「す、すすす、すみません!」


 くんずほぐれつな密着状況を理解しちゃったウヅキがあたふたするものの、お互いに変にホールドしあっているため、逆に身体を押し付けるようになってしまい。


 ちょっと大胆に開いた胸元の隙間から、谷間やらピンク色の可愛い下着やらがチラチラ見えてしまって、思わず視線が――、


「もぅ……セーヤさんえっちです……」

 ぽつりとウヅキが呟いた。


 そりゃお互い額がくっつくくらいの近い距離で顔を突き合わせてるんだから、どこ見てるかなんてすぐ気がつくよね!


「いやあのこれは不可抗力でね――?」


 俺がいつものように言い訳を始めたときだった――。


 ウヅキの頬に白いものが、ちら、ほら、と空から舞い降りると、すっと溶けて消えていったのは――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る