第228話 俺の右手が、光ってうなる――!!

「ここは気候が良くて過ごしやすいですし、きっと昔の《神滅覇王しんめつはおう》さんは別荘みたいに使ってたんでしょうね」


「多分そうなんだろうな……あ、魚が泳いでる……獲れるかな?」

 俺の目の前を10センチほどの小魚がすいすいーっと泳いでいった。


「えっと、さすがのセーヤさんでも泳ぐ魚を素手で捕まるのは無理じゃないでしょうか?」


 苦笑するウヅキに、


「いやいやウヅキ。なんでもやってみないと分からないぞ? 未来はこの手で切り拓くもんだからな……!」


 俺は《神滅覇王しんめつはおう》っぽいセリフで無駄にカッコをつけると、裸足になって川に踏み入った。


「まぁ見とけって――いくぞ、おりゃ! ……とりゃ! ……そりゃ! ……うぉりゃ! ……ってくそ、めっちゃ速いな魚! くっ、この――っ! ぐぬぅっ! こんにゃろ! せいやぁっ! っぐぬぬぬぬぬ…………!」


「えへへ、必死なセーヤさんってなんだか子供みたいで可愛いです」


 そんなぐぬる俺を見て、ウヅキはいつものように優しく微笑んでくれたんだけど、


「この《神滅覇王しんめつはおう》たる俺に……麻奈志漏まなしろ誠也様に、カッコつけたウヅキの前で恥をかかようとするとはいい度胸だな小魚……!」


 キレ芸に定評のある《神焉竜しんえんりゅう》でもあるまいし、俺は普段ならこんな些細なことでイラついたりはしない。


 しかし!

 パイタッチのことでどうしても汚名返上・名誉挽回したかった俺は、ウヅキにカッコいいところを見せたくて見せたくてしょうがなかったのだ……!


 俺は強烈な意志でもって決意した。

「この魚だけは絶対に、獲る……!」


 魚よ、全チートフル装備の俺を舐めるなよ……!


「シンクロ系S級チート『魚心あれば水心』発動……!」


 もう虚脱感や疲労感は全くない、それなり以上に力は戻っている。

 という訳で、俺は容赦なくS級チートを使用した。


 魚に水と親しむ心があれば、水もそれに応じる心がある、それが自然の摂理というものだ。

 俺の心は今、チートによって水&魚と同調し三位一体となる……!


 既に知覚系S級チート『龍眼』によって、お前の動きは見切っている――!


 意図を理解し&動きを知れば、百戦して危うからず。


 キュピーン!


「そこだ――っ!」


 俺の右手が光ってうなる――!

 お前を掴めと輝き叫ぶ――!!


「キャッチ系S級チート『シャイニング・フィンガー』!」


 バシャンッ!


 掴んで捕まえる事に特化したチートによって、光のオーラをまとった俺の右手。


 川の流れに突き刺された、その光り輝く右手が――、


「獲ったどーー!!」


 10センチほどの小魚を見事に掴み取ってみせた。


「はわっ!? すごいですセーヤさん、本当に泳ぐ魚を捕まえちゃいました!」


 俺が泳ぐ小魚を捕まえたのを見て、目を白黒させるウヅキに、


「ふぅ、またつまらぬものを獲ってしまった……ま、俺が本気を出せばざっとこんなもんよ」


 俺は超ドヤ顔でそう言った。


「さすがですセーヤさん、素敵ですカッコいいです!」

「いやーそれほどでも……あるかな?」


「本当にカッコいいです、えへへ……」

「そ、そう? うへへ……」


 とまぁそんな感じでウヅキにカッコいいところを見せることができた俺は、とってもご満悦で魚をリリースしてあげたのだった。


 これはあくまで俺のカッコいいところを見せるためのパフォーマンスであって、獲った後はキャッチアンドリリースの精神が大切だからね!

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