第224話 神竜裁判

「えっと、あ、はい。まったくもってその通りです……連絡は大事だと思います……」


「で、主様ぬしさまには深い深い事情があるのじゃったの? 聞かせてもらおうかの?」


「……えーとその、だからね? 実は《神滅覇王しんめつはおう》の力を使いすぎて、力がすっからかんになっちゃって? それで倒れてたところを巫女エルフちゃんに助けてもらって。それでついでにパワー回復プログラムを受けていたというか――」


「可愛い女子おなごたちとパンツ一丁で戯れて、なにがどう回復するのかのぅ? はてさて浅学なわらわには到底考えが及ばぬのじゃ」


「いや、その……はい……」

 あっさりと言い訳に詰まってしどもどろになる俺。


 見かねた巫女エルフちゃんが、


「あの! これは昔のはおーさまが残したはおーりゅーの――」

 俺の代わりに説明してくれようとしたんだけれど――。


「……エルフの小娘よ、今はわらわ主様ぬしさまが語ろうておるのじゃが? たかがエルフが、無礼な! 分をわきまえよ!」


 《神焉竜しんえんりゅう》が凶悪な殺気を撃ち放った。

 ただの殺気だけで、ビリビリと空気が振動する。


 その殺気をもろに受けた巫女エルフちゃんたちが、震えあがって部屋の隅っこに逃げていった。


 俺も正直逃げ出したかった……。


 マジで怖いです……一瞬、《神焉竜しんえんりゅう》に殺された時のことを思い出しちゃったよ……。


 だいぶ力が戻っているけど、《神滅覇王しんめつはおう》使えるかな……?

 使わないと死ぬ可能性あるよね?


 っていうかそれ以前の問題なんだけど、今、俺の手元には日本刀クサナギがなかったりする。

 《神焉竜しんえんりゅう》のちょうど真後ろの壁に、立てかけてある……!


 日本刀クサナギがなければ、《神滅覇王しんめつはおう》どころか最強S級チート『剣聖』すら使用できないのだ……!


「パンツ一丁ってことはつまり丸腰……! 巫女エルフちゃんたちとの遊びに夢中で完全に忘れていた……!」


 くっ、どうする――!?

 《神滅覇王しんめつはおう》どころか『剣聖』すらなしに、一体どうやって《神焉竜しんえんりゅう》に抗しろと言うのか……!


 そんな再びの死闘リベンジマッチの予感すら感じた俺の窮地を救ってくれたのは――、


「《神焉竜しんえんりゅう》さん、セーヤさんも反省しているみたいですし、もうそれくらいで許してあげませんか?」


 神様仏様女神様ウヅキ様だった。


「む、奥方殿……いやしかし……」

 《神焉竜しんえんりゅう》の勢いがそがれた――!


「ですよね、セーヤさん? ちゃんと反省してますよね?」


「もちろんだとも! 反省してる、超してる! 心配かけてごめんなさい、ちょっと調子乗ってました。もう2度としません、ごめんなさい!」


 俺はここぞとばかりに謝った。

 根性こめて謝った。


 この最初で最後のビッグチャンスを必ずものにせんと、ちょお気合い入れて謝った!

 パンツ一丁で土下座して、それはもう心の底から心配かけたことを謝ったのだった。


 そのかいもあってか、


「……まったく奥方殿ときたら、主様ぬしさまにはとことん甘いのじゃから。じゃがそれでこそ、わらわを従えるにふさわしい懐の広さというべきか」


 《神焉竜しんえんりゅう》がやれやれって顔をした途端に、部屋中に満ちていた強烈な殺気が嘘のように霧散する。


「えへへ、ありがとうございます。じゃあこの話はもう終わりです。エルフの皆さんも怖がらせちゃってごめんなさい」


 こうして俺は情状酌量の結果、無罪放免となるとともに。

 エルフ村にてウヅキ&《神焉竜しんえんりゅう》と再会することとなったのだった。


 やれやれまったく、一時はどうなることかと思ったよ……。

 ほっと胸をなでおろした俺だった。

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