第213話 トラヴィス最高秘密会議、完成『MS-06』!
東の辺境の中心・城塞都市ディリンデン。
そこでとっても有名&最大手のトラヴィス商会の屋敷兼本店。
さらにそこの、厳重に締め切られ外部と完全に情報遮断された金髪ちびっ子お嬢さまの私室にて。
灯りは燭台にともるろうそくの炎だけ。
部屋の大部分を暗がりが支配する、なんていうか悪の秘密結社的な雰囲気抜群の一室で。
トラヴィス商会の金髪ちびっ子お嬢さまことサターホワイト・マテオ・ド・リス・トラヴィス(サーシャ)をトップにすえた、極秘プロジェクトの秘密会議が行われていた。
「ミリア、わたくしが帝都に行っている間に、例の物の最終試作モデルができあがったとの報告を受けたのですけれど?」
金髪お嬢さまが、銀髪のうら若きメイドに問いかける。
「はい、サーシャお嬢さま。最終試作モデルMS-06、既に完成しております」
それに銀髪メイドのミリアが――サーシャお嬢さま付き筆頭格メイドのクリス・ビヤヌエヴァの妹だ――うやうやしく答えた。
「最初のころの試作品はてんで話になりませんでしたわ。最終試作モデルと言うからには、問題は全て解決したと思っていいのですわよね?」
「もちろんでございます。問題点を全てクリアし、だけでなく更なるブラッシュアップを重ねたMS-06は、必ずやお嬢さまのご期待にそえられるかと」
「なんとそこまでとは……! それは
「それなのですが、街に獣人族のココという新進気鋭の商人がおりまして」
「ふむ……獣人族ですか……東の辺境ではほとんど見かけませんわね。どういう人物なのですか?」
「《
「まぁ! セーヤ様のお知り合いなのですね!」
「はい、そして彼女のツテで非常に腕の立つ獣人族の彫金師――金属の細工師――に依頼することができ、一気にこの最終試作モデルMS-06へとこぎつけた次第です」
「最大の課題だった、精緻な焼きゴテの完成があいなったのですわね!」
「はい、そしてその出来あがった最終試作モデルがこちらになります。MS-06、どうぞ心行くまでご覧くださいませ」
ミリアはそういうと『MS-06』を箱の中から取り出した。
それを見た途端、サーシャの目が大きく見開かれる!
「こ、これは……! とても素晴らしい出来上がりですの!! かわら版(第二版)のセーヤ様を、微に入り細に入り完璧に再現して焼き印してありますわ!! 獣人族は手先が器用だとは聞きおよんでおりましたが、まさかこれほどとは……!」
「これならば、お嬢さまも自信を持って大々的に売り出せるのではないかと」
「ええ、ええ! 文句なしに完璧ですわ! ココと言いましたかしら? 今後その商人は、わたくしの特別な
「かしこまりました!」
さらに、
「はむっ! もぐもぐ……」
サーシャが『MS-06』を口に入れた。
「素晴らしいですの! 見た目だけでなく、お饅頭それ自体の味も絶妙な甘さ加減で、これならお菓子としてだけでなく、軽食としても食べられますわ!」
「お嬢さまのご要望通りの味を作り上げるべく、トラヴィス家お抱えの超一流シェフの総力を結集して、様々なアイデアを出し合って試行錯誤を繰り返しました! しかも材料は決して高価なものではなく、原価を抑えることで安価で広く市政に行き渡らせることが可能です!」
「よくやりましたわミリア! さすがは筆頭格メイドのクリス・ビヤヌエヴァの妹です! 決定です! この最終試作モデルMS-06=『
「御意っ!」
「ここからはただひたすらに前進前進前進! 前進あるのみですわ!」
「心得ております。お嬢さま肝いりの『《
「たいへん素晴らしい心意気ですわ! さて忙しくなりますわよ! 宣伝、広告、イベントなどなど、やることは山積みですの! 広報部と営業部の部長を呼びなさい――!」
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