#50 宵に輝く星

 日暮れの酒場には冒険者が集う。

 長耳族の吟遊詩人は舞台で異国の唄を披露し、小人族の戦士は金貨の詰まった革袋を肴にそこらじゅうで乾杯を繰り返す。隅の席では人族の魔術師と龍人族の祈祷師が地図を前にし明日の冒険計画を練っている。


「それは昔々の物語、砂漠の民の物語。彼らが砂と廃墟を彷徨い、そして栄華極まる黄金と塔と陰謀の国を建国する物語です……」「黄金! 酒とカネだ! それこそわれらの冒険の糧。あればあるだけいいし、なくても稼げばいい。うまいメシも黄金の酒も尽きることはないぞワッハッハ!」「酒は尽きずとも金は尽きますよ、飲んだくれ。使った分は明日の冒険でしっかり稼いでもらわなきゃ」「ははは。であれば計画をもう少し詰めるのが良さそうですな。さて明日のダンジョンの攻略ですが……」


 ――かくして、日暮れの酒場は今日も希望と野望に充ち満ちている。

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