第二十ニ話 白魔道士

「ちなみに聖獣ジスさんとの会話は私にも聞こえています」

「はあああ。そっかあ」 


 カトリーヌは落胆した。

 だってこの子にはルビアス王子同様ジスとの会話は筒抜けなのだ。


 いらぬ気を使って疲れた。


 聖女アリアはパパイヤジュースを一気に飲んだ。

 喉が乾いていたらしい。

 あんなに怖い目にあったんだから当たり前か。


「私は北の大地ルーシアス共和国からやって参りました。主に回復専門の魔道士で、白魔道士です」

「聖女アリアって聞いたことがあったんだよね。癒やしびとって言われた部族の末裔だよね?」

「……はい」


 アリアの表情は硬い。


「みんなっ! みんな、死んでしまいました」


 ウワアッとアリアは涙を次から次へと流して泣いた。

 エリザベートはそっとアリアの肩を抱き寄せた。それから包み込むようにして背中をトントン叩いてやる。


 故国ではエリザベートを慕って遊びにやって来る幼い子供たちの世話をよく見ていた。集まる子供のなかにはぐずったりするものがよくいた。

 そんな時はこんな風に慰めたものだなぁと、エリザベートは遠い記憶を手繰り寄せる。


「大変だったね」


 私と似ている。

 大事な人たちをたくさん亡くして。


「良かったら私の泊まり宿に一緒に来ない? もしあてがないなら? それにそのハムスターちゃんもなんとかしないとね」


 エリザベートの視線の先には、鳥籠に納まり目をくりくりとさせたハムスターがちょこんとお行儀よく座ってる。

 鳥籠の扉は、なぜだか頑としてひらかない。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る