第705話、わたくし、実写ごときをアニメ様の比較対象にしないでいただきたいですの⁉(前編)

ちょい悪令嬢「──皆さん、ご覧になりました? 現在俄然注目の最終第6話が絶賛無料配信中の、20世紀を代表する超傑作SFアニメ『ト○プをねらえ!』。いやあ、無茶苦茶良かったですよ! もうすぐ配信終了ですので、ご興味のお有りの方は、是非お見逃しなく♡」




メリーさん太「……おいおい、【連載700回達成】を記念して、あれだけ盛大にオリジナル作品において、『ヴァルプルギスの夜』祭りをやっていたくせに、もういつもの『他人様の作品の評論』パターンに舞い戻ったのかよ?」




ちょい悪令嬢「いえいえ、これはむしろ『創作活動』において、絶対必要なことなのです!」


メリーさん太「はあ?(……またそのパターンかよ?)」


ちょい悪令嬢「つまりですね、創作とはすべて、『野心』から生まれるのですよ!」


メリーさん太「へ?」




ちょい悪令嬢「いやあ、『ト○プ』を久方振りに見ることによって、ほとほと痛感いたしました。やはり庵○秀明監督は、デビュー当時から『本物』だったと」




メリーさん太「庵○監督?…………ああ、『ト○プ』って、庵○さんの初監督作品だったっけ。それにしても、どうした? ほんの先日はあれだけ、『シン・エヴ○』のことをディスっていたくせに、今更『本物』呼ばわりとかして」


ちょい悪令嬢「今でこそ『巨匠』と呼ばれている庵○監督であろうとも、『新人時代』があったと言うことですよ」


メリーさん太「……そりゃあ誰でも、新人時代があるだろう。そこは絶対に同じじゃん?」


ちょい悪令嬢「いいえ、違いますよ? 誰もが『同じ』では、ありませんよ?」


メリーさん太「は?」




ちょい悪令嬢「新人の時から、『他とは違った』からこそ、すべてを『ぶち壊しにしてきた』からこそ、これまでの数々の金字塔的成功と、現在の『巨匠』としての地位があるのですよ!」




メリーさん太「新人でありながら、他とは違う? それに、ぶち壊し、って……」




ちょい悪令嬢「別に最初から、巨匠になろうとか、業界をリードしようとか思っていたのでは無くて、むしろ己の行方に立ち塞がっている、過去の巨匠たちによる既成概念を、それまでのアニメ業界そのものを、ぶち壊しにすることこそが、自分たちの在り方だと、それでこそ、道が開かれると、自分たちと志を同じくするファンたちは、ついてきてくれると、心から信じていただけなのでございます!」




メリーさん太「……え、あの庵○監督に、そんな『青い時代』が?」


ちょい悪令嬢「そりゃあ、もちろん」


メリーさん太「いやいやいや、『志を同じくするファン』て? 確かに庵○監督の作品にはファンが多いけど、それ以上に『アンチ』も無茶苦茶多いんじゃないの⁉」


ちょい悪令嬢「……そういう時代、だったのです」


メリーさん太「そういう時代、って?」




ちょい悪令嬢「あの頃のアニメ業界は、それを支えているオタクたちをもひっくるめて、みんなが『自分たちでも何かやれる』、『どんな夢でも叶えることができる』、『これまでに無い新しいアニメを創ることができる』と、本気で考えていて、その実現に向かって、まっしぐらに邁進することができたのです!」




メリーさん太「ええっ、もはや『金勘定』第一主義に堕落してしまっているアニメ業界に、そんな熱い時代があったと言うんかい⁉」


ちょい悪令嬢「信じられないでしょうが、事実です」


メリーさん太「……うん、まあ確かに、こうして当時の代表的作品である、『ト○プをねらえ!』を実際に見せつけられれば、その熱気のほどが痛感できるよな」




ちょい悪令嬢「庵○監督と言えば、どうしても『エヴ○』というイメージですが、初監督作品である『ト○プ』の時点で、エヴ○のすべてが──ひいては、アニメ監督としての彼のすべてが、叩き込められていると言っても過言では無く、むしろ後年の『エヴ○』のほうこそが、『成功し過ぎて』、彼自身もアニメ業界自体も、混迷し始めてしまったとも言えるでしょう」




メリーさん太「……あー、つまりは『のぼり調子』の時は、周りのみんなも一緒に熱くなれていたけど、それが度が過ぎて頂点ピークを通り越してしまえば、『冷めてしまった』やつも出て来て、これまで自分が愛していた作品なのに、むやみやたらと『叩き始める』ってことか。……ほんと、アニメを始めとする創作界ならではの『悪癖デススパイラル』だよな」


ちょい悪令嬢「まあ、制作者のほうも、成功すればするほど、若い頃の『向こう見ずな熱さ』を忘れて、『守り』に入ってしまいがちですからね。……あ、別に庵○監督ご自身が、そうだと言っているわけじゃありませんよ? だって彼は『Q』で久方振りに、『ぶち壊し』を見せてくださいましたからね♡ その後の『シン・エヴ○』は、本当に残念でしたけどw」


メリーさん太「──ageるのかsageるのか、どっちかに統一しろよ⁉」




ちょい悪令嬢「確かに庵○監督はもちろん、アニメ業界自体も、今や十分に『成熟』いたしました。往年の『勃興期』の熱さを取り戻すことは、とても不可能でしょう。──だがしかし、創作分野として、どん詰まりの停滞感を打ち払って、更なる成長を続けるためには、『ぶち壊しの精神』を忘れてはならないのです!」




メリーさん太「ええー、これほどまでに『成熟した』分野である現在のアニメ業界において、『ぶち壊し』なんて言うハイリスクなことを行うメリットが、いまだにあり得るのかよ?」


ちょい悪令嬢「『成熟した分野』であるからこそ、『差別化』が必要なのです」


メリーさん太「差別化、って……」


ちょい悪令嬢「例えば、単なる『アイドルアニメ』とか『ゾンビホラー』とか、もはや『食傷気味』でしょう?」


メリーさん太「ああっ、また性懲りもなく、本作の作者の現在イチオシの、『ゾンビラ○ドサガ』の話を始めるつもりだな⁉」




ちょい悪令嬢「そうです、『ゾンビにアイドルをやらせる』という、一見『出オチ』であるように見えて、実は料理の仕方によっては無限の可能性を秘めている、アニメそのものの常識の打破すらも期待されている、新機軸の作品です」




メリーさん太「……確かに、劇中の『選曲』とストーリー上の『演出』とが、見事にハーモニーを奏でていて、すべてのエピソードにおいて、見る者に『感動』を呼び起こざるを得ないんだよな」




ちょい悪令嬢「特に最新第4話における、プロデューサーである巽幸○郎氏の、純○ちゃんに対する台詞である、『欲しいものがあったら、ぶち壊してでも勝ち取るんだ!』という台詞は、まさに言い得て妙と申せましょう♡」




メリーさん太「しかも、それを『物理的に真に受けた』純○ちゃんが、幸○郎氏の愛用のエレキギターを、ステージ上でたたき壊すという、あのオチは秀逸だったよなw」


ちょい悪令嬢「その後でご披露した、断線したケーブルからの『感電』を、舞台演出に利用するところなんて、不死身のゾンビならではの離れ業と申せましょう」




メリーさん太「……なるほど、一口に『ぶち壊す』と言っても、まず何よりも作品の世界観自体が、これまでに無い斬新なものでは無いと、意味が無いわけなのか」




ちょい悪令嬢「単に『古い常識を壊す』だけでは無く、『新しい方向性を示す』ことができなければ、『片手落ち』でしかありませんからね」




メリーさん太「……確かに、『ゾンビにアイドルやらせて町おこしをする』と言うのは、十分にぶっとんだ斬新さだよな」




ちょい悪令嬢「──つまりは、いつの時代においても、『野心』を持っている者はいて、その業界を発展させて行っているってことですよ。特に日本において顕著なのが、『アニメ業界』であるわけです」




メリーさん太「これって最近話題になっているけど、どうして日本はアニメばかり突出していて、実写映画やドラマは全然ダメなんだろうな? 中でも海外における評価は、もはや同じ国のメディアとは思えないほどの格差だし」




ちょい悪令嬢「……ああ、それって前から思っていたんですが、ちょっと『失礼』なんじゃ無いですかねえ?」




メリーさん太「し、失礼って、何がだよ?」


ちょい悪令嬢「実写ごときを、日本が世界に誇る『アニメ様』と比較することですよ」


メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「だって日本の実写映画やテレビドラマって、これまでまったく既定路線を『ぶち壊す』こと無く、旧態依然のままでのらりくらりとやっているだけではありませんか?」




メリーさん太「──ッ」







(※後編に続きます)

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