第513話、わたくし、死に戻りによる『試行錯誤』こそ、真に理想的なチート能力と思いますの。(後編)

ちょい悪令嬢「──と言うわけで、『死に戻りの舞台となる、無数の他の世界』とは、実は『リゼ○』作品全体の冒頭部で、サ○ラさんがス○ル君に『集合的無意識とのアクセス権』を与えたことによってもたらされる、『別の可能性ルートの世界の情報キオク』に過ぎず、ス○ル君は別に、問題解決に失敗してむちゃくちゃになってしまった世界を見捨てて、自分一人だけ別の世界に逃げ出しているわけでは無く、安心して現在目の前にある『問題』を、全力で解決して行かれればよろしいのですわ♡」




メリーさん太「……う〜む、何だかなあ」




ちょい悪令嬢「おや、メリーさん、せっかく『リゼ○』における主人公であるス○ル君の、『死に戻りシステム』の正当性を証明して差し上げたというのに、何かご疑問が? ──つまり『リゼ○の正当性』そのものに、何か物申したいことでもお有りなわけで?」


メリーさん太「──別にそんなことは、言っていないだろうが⁉ 隙あらば人のことを、陥れようとするんじゃない!」


ちょい悪令嬢「それでは、何がおっしゃりたいんですの?」


メリーさん太「いやそれがねえ、本作の作者の十八番オハコとはいえ、『死に戻り』を始めとする『世界間移動』という、『なろう系』作品においてもメイントピックスである、異世界転移や異世界転生やタイムトラベルの類いが、すべて集合的無意識を介して与えられた、『他の可能性上の世界の記憶』でしか無いと言われてもねえ……」


ちょい悪令嬢「確かに少々理屈っぽいし、詭弁と極論に過ぎるとは思いますが、現実的に『死に戻り』等の世界間移動を行うには、これ以外に無いと思いますが?」


メリーさん太「そうだけど、『リゼ○』はあくまでもエンターテインメントなんだから、こういう『夢の無い結論』なんて、どうなんだろうなあ?」


ちょい悪令嬢「え? いや、別にこれは、『結論』なんかじゃありませんよ?」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「『リゼ○』の作者様には、御自身なりの理論がお有りでしょうし、別に今回本作において行ったものとは、異なっていようが構わず、もちろん作者様がご提示なされる『結論』のほうが、唯一絶対の『正解』であるのは、言うまでも無いことなのでございます」




メリーさん太「──それじゃあ、これまで数回にわたって行った、この【座談会】は、一体何だったのよ⁉」


ちょい悪令嬢「それについては、最初から申しております通り、『軍艦擬人化少女に鳥の翼をつけてみたらどうだろう?』と言う、奇抜極まる発想の切っ掛けを与えてくださった、『リゼ○』の作者様に対する恩返しの意味を込めまして、現時点においてすでにス○ル君が『完全無罪』であることを、僭越ながらアピールさせていただいたわけなんですよ」


メリーさん太「……あのさあ、前にも言ったんだけど、それって『余計なお世話』じゃないの? そういう『先読み』をすることはむしろ、作者様の創作活動を阻害することになるので、ただの迷惑行為として糾弾されかねないわよ?」


ちょい悪令嬢「それについても、心配ご無用です。何せ『オリジナルの死に戻り作家』様ゆえに、どのような結論を提示なされようが、それこそが唯一絶対の『正解』なると、先ほども申したはずですが?」


メリーさん太「本作の見解の通りでは無いと、現実的に実現不可能じゃ無かったの?」


ちょい悪令嬢「創作物においては、現実性よりもエンターテインメント性が優先されても、別におかしくは無いでしょう?」


メリーさん太「うっ。……ほんと、こいつってば、『ああ言えばこう言う』だよなあ。──だったらさあ、この『集合的無意識とのアクセス』によって、世界間移動を実際に行わずに済ませて、『死に戻り』を単なる『偽りの記憶』だと言うことにするのは、あまりエンターテイメントとは言えないんじゃないかしらあ?」


ちょい悪令嬢「『集合的無意識』では、いかにも学術的で地味だとおっしゃるのなら、『予言書』とか『アカシックレコード』とかと、言い換えるとよろしいのですよ」


メリーさん太「『予言書』とか『アカシックレコード』、って……」




ちょい悪令嬢「ほら、『リゼ○』作中においても屈指の人気キャラである、各『大罪○教』さんたちを始めとして、ロズ○ールさんやエリ○ベスちゃんたちが、己の行動の指針としている、『福○書』とか『叡○の書』とか呼ばれているやつって、まんま『予言書』や『アカシックレコード』そのものじゃないですか?」




メリーさん太「──ああっ! そ、そういえば!」


ちょい悪令嬢「これを彼らに与えたのは、誰でしたっけね?」


メリーさん太「……うう〜ん、本作の作者って、『リゼ○』のWeb版をそれほど読み込んでいるわけでは無いから、『福○書』のほうは定かでは無いけど、『叡○の書』のほうは確か、『強○の魔女』のエキ○ナさんじゃなかったっけ?」


ちょい悪令嬢「エキ○ナさんと言えば、『リゼ○』の登場人物の中では例外的に、ス○ル君が『死に戻り』をしていることを知っていましたけど、なぜでしょうね?」


メリーさん太「どこかの『女神様系魔法少女』みたいに、『すべての世界の外側に存在しながら、すべての事象を観測している』と言った、反則技的立場では無いとしたら、本作の作者お得意の、『集合的無意識とのアクセス権』を持っていることになるかしら?」


ちょい悪令嬢「それもかなり上級の権能で、自分だけでは無く、他者をも強制的にアクセスできたりしてね」


メリーさん太「……つまり、『福○書』や『叡○の書』って、集合的無意識とのアクセス権を、物質化したようなものというわけか」


ちょい悪令嬢「上級のアクセス権と比べて、様々な面で不完全で、限定した情報しか取得できないようですけどね」


メリーさん太「あえて不完全な情報を与えて、ロズ○ールさんやエリ○ベスちゃんや大罪○教さんたちをミスリードして、いろいろなパターンの世界線が生じるのを、外野から観測することを『悦び』としているわけか、確かに魔女らしい『性悪さ』だな」




ちょい悪令嬢「つまり、これもいつも通りに、本作の作者の『独自解釈』をベースにしているのですよ。嫉○の魔女が死に戻りを実現したり、強○の魔女がそれを観測したりできるのは、『集合的無意識との上級のアクセス権』を有しているからだし、ス○ル君が死に戻りを体験したり、ロズ○ールや大罪○教たちが『予言書』によって未来を知ることができたりするのも、魔女から与えられた『集合的無意識との限定的なアクセス権』のお陰だし──といったふうに、作品のほぼすべての超常現象が、集合的無意識とのアクセスによって実現できるという次第なのですよ」




メリーさん太「……ある意味『リゼ○』は、それをうまくエンターテインメントとして昇華させているとも、言えるわけか」


ちょい悪令嬢「──と言うか、超常現象が登場する創作物自体がすべて、『集合的無意識とのアクセス』によって、論理的に説明できるのですわ」


メリーさん太「確かに理屈としてはわけるけど、何だか夢が無いなあ……」


ちょい悪令嬢「ほう、でしたらメリーさんにとって、『夢のある作品』とは、どういったものでしょうか?」


メリーさん太「そりゃあ、『なろう系』ならではに、屁理屈なんか垂れずに、主人公が全編チートスキルで無双するやつとか?」




ちょい悪令嬢「──あら? まさに、『リゼ○』そのものではないですか?」




メリーさん太「………………………………は? いやいや、何をいきなり、わけのわからないことを言い出しちゃっているの⁉」




ちょい悪令嬢「え? 『リゼ○』こそが、万能の女神様から溺愛された主人公が、何の苦労も見返りも必要としない、最強チートスキルで無双する、『頭空っぽなろう系』の、代表的作品ではありませんか?」


メリーさん太「何その、歪みきった見解は? 確かに『死に戻り』は、最上級のチートスキルとは思うけど、その分主人公のス○ル君は、文字通り『死ぬような目』に遭い続けているでしょうが⁉」




ちょい悪令嬢「それはあくまでも、ス○ル君の『主観』の話ですよね? もしも物語が始まってからずっと、ス○ル君のすぐ側に観測者がいたとしたら、どのように見えたでしょうね?」




メリーさん太「ずっと側にいたんなら、それこそス○ル君が、死に戻りの繰り返しで苦しんでいるところを…………あれ? 死に戻りって、他の人には知覚できないんだっけ?」


ちょい悪令嬢「物語の基本設定ではそうなっておりますが、アニメ版最新話においては、『死に戻りなんて現実には無かった』ようにも匂わせており、更には当座談会においては、『そもそも死に戻りなぞ最初からあり得ず、ただ単に偽りの記憶を与えられただけ』という見解となっております」


メリーさん太「とすると、ス○ル君のすぐ側で、ずっと彼のことを見ている人物がいた場合は……」




ちょい悪令嬢「ス○ル君が、どんな超難問でもという、『なろう系』屈指のチート主人公に見えていることでしょうね」




メリーさん太「そ、そうか、『リゼ○』において死に戻りのシーンをすべて省略すると、ス○ル君て、この上もない『チート野郎』に見えてしまうんだ⁉」


ちょい悪令嬢「周りの評価としては、ある意味典型的な『チート勇者』であり、名実共に『作品内最強』である、ライン○ルトさん以上かも知れませんね」


メリーさん太「……すげえ、そんな見方もあるのか。これまでちっとも、気がつかなかったよ」




ちょい悪令嬢「おそらく『リゼ○』の作者様としては、疑問に思ったのでしょう。『いくら女神様にチートスキルを与えられた転生勇者とはいえ、どんな難問でも一発で解決できるのはおかしい』と。それに対する『解答』であり『アンチテーゼ』こそが、『リゼ○』という作品であり、『死に戻り』というギミックだったのです」




メリーさん太「それは、『万能のチートスキルを手に入れようと思うなら、それなりの代償を必要とする』、と言うことなの?」


ちょい悪令嬢「──と言うよりも、やはり問題を解決するには、何よりも『試行錯誤』こそが、必要だと言うことなのですよ」


メリーさん太「試行錯誤、って?」


ちょい悪令嬢「まさに『死に戻り』こそ、自分の命を使った、『試行錯誤』以外の何物でも無いのでは?」


メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「そうなのです、試行錯誤をまったく経ずに、何でもチートスキルで一発で解決するなんて、何の意味も無いのです。試行錯誤を行ってこそ、人は成長できるのであり、試行錯誤の重視こそが、安易な『チート全肯定』のなろう系に対するアンチテーゼであるとともに、『リゼ○』における最大のテーマなのですよ」




メリーさん太「……ああ、『リゼ○は実は、主人公の成長物語である』って、以前にも言っていたっけ」




ちょい悪令嬢「──と言うわけで、まさにこれぞ理想の『なろう系』作品である、『リゼ○』のアニメ版もいよいよクライマックスです! どなた様も要注目ですよ!」




メリーさん太「今回、最初から最後まで、露骨な『ヨイショ』ぶりだな⁉」




ちょい悪令嬢「何せ、本作の作者がアイディアに詰まっていた時に、発想の転換のための、重大なるヒントをくだされましたからね、ささやかながらの『恩返し』ですわ♡」




メリーさん太「……まあ、その一方的な『恩返し』が、『余計なお世話』にならなければ、いいけどな」




ちょい悪令嬢「いえいえ、お陰様で『鳥の翼を生やした軍艦擬人化少女』が大活躍する、作者の別作品である『なろうの女神が支配する』の【駆逐艦デストロイヤー・ガールシリーズ】につきましても、いよいよ大詰めを迎えておりますので、こちらのほうもお忘れなく!」




メリーさん太「──結局今回も、自作の宣伝で終わるのかよ⁉」

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