第416話、わたくし、『ゼロの魔法少女』ですの。(その11)

「──つまりこの世には、戦争を行うことによって得をするやつらがいて、しかもそういう輩に限って、それぞれの国家における支配層だったりするので、そいつらが理由をあれこれこじつけて、率先して始めた戦争によって死にゆくことになる、一般庶民たちは、他ならぬ自国の支配者に殺されたも同然なのだよ」




「──よって、非常に皮肉な話であるが、この世で最も『人道的な兵器』は何かと言うと、敵の本拠地をほとんど確実に叩き潰すことのできる、核兵器を搭載した大陸間長距離弾道弾、いわゆる『ICBM』ということになるのだ」




「──なぜなら、この兵器は実際に使用した際には、たとえ敵国の兵士や非戦闘員を何万と殺そうと、自国民をただの一人も死なせることは無いし、しかもただ単に保有しているだけで、よその国から戦争をふっかけられることがほとんど無くなるので、抑止力としても抜群の効果を有しているのだ」




「──まさに、平和を尊び、何よりも自国民の犠牲を無くそうとする、人道的国家こそ、核兵器を持つべきなのに、専守防衛を掲げる世界最大の平和国家である、現代日本において、核兵器保持を強硬に反対するやつらは、むしろ平和や人道主義というものを、何もわかっていないと言っても過言では無かろう」(過言です)




「──ちなみに、遙か遠方の敵国を直接叩ける、無人兵器の元祖である、巡航ミサイルのV1号ロケットと、大陸間弾道弾のV2号ロケットを開発したのは、何とドイツ第三帝国であり、実は悪名高きナチスこそが最も人道的な兵器の発祥国であるという事実は、歴史の皮肉と言わざるを得ないであろう」




「──だがしかし、こういった革新的兵器の開発及び大量生産も、当然のごとく支配者や大企業にとっては、『金儲け』の手段となり、戦後各戦勝国に『戦利品』として持ち帰られた、ドイツの超最先端兵器の数々は、以降数多の新たなる戦争や紛争を呼び起こし、より殺傷力の高い兵器が大量に投入されている戦場に駆り出された、一般庶民たちは、ナチス製の玩具ではしゃぎ回っている餓鬼そのものの、自国の支配者や大企業の、『お遊び』の犠牲者と言っていいだろう」




「──特に、第二次世界大戦が終結してわずか五年後に勃発した、『朝鮮戦争』に対しては、怒りしか感じ得ない」




「──このようなでたらめな戦争を──何の罪もない朝鮮民族を同胞同士で殺し合わせる、大量虐殺を許すなんて、かつての日本やドイツに対する『正義の戦争』とは、一体何だったのだ? それぞれの国の『正義』のために犬死にしていった、各国の若者たちは、一体何のために死んでいったのだ?」




「──極度のミリオタである、我が教えてやろう、あの朝鮮戦争というものの正体は、第二次世界大戦当時では比較にならないほど、高性能で目玉が飛び出るほど『超高価』な、ナチス発祥の最新鋭ジェット戦闘機を、両陣営でテストして、お互いに自国のパイロットを犠牲にして撃墜し合って、実戦的データを収集するとともに、高価な最新鋭ジェット機を惜しげも無く大量に消費して、大儲けをすることこそが目的だったのだ」




「──それだけナチスのジェット機技術は、ジェット技術力に乏しい敗戦国の日本はもちろん、米英ソの戦勝超大国に比べても、格段の先進性を誇っており、その中核技術であるジェットエンジンは言うまでもなく、現在ではあらゆるジェット機の『標準仕様』でありながらも、第二次世界大戦中には、当時のドイツ以外のいかなる国も考えも及ばなかった、『後退翼』をいち早く実用化させて、ジェットエンジンと共に戦後の軍用機の在り方を一変させてしまったのだ」




「──事実、朝鮮戦争において、最初に後退翼型ジェット戦闘機である、かの高名なる『MiGー15』を投入した共産国側は、国連軍側の時代遅れのレシプロ機や直線翼型ジェット機を圧倒して、朝鮮半島の完全支配を達成しようとしたほどであったが、アメリカが慌てて、同じく後退翼型ジェット戦闘機である『Fー86』を投入することによって、どうにか現在の暫定国境である『38度線』まで、押し返すことを成し遂げたのであった」




「──この大規模な『テスト運用』によって、米ソ双方の超軍事大国は、ジェット機における後退翼の有用性を確信したのだが、これには酷い『オチ』がついていたのだ」




「──何と、肝心なジェットエンジンについては、よせばいいのに見栄を張って、先進的なナチス開発の『軸流式ジェットエンジン』では無くて、稚拙で時代遅れなイギリス開発の『遠心型ジェットエンジン』を、両陣営共に使用していたのだが、結局朝鮮戦争終結後数年を経たずして、全世界の軍隊において遠心型は放棄されて、ドイツ型の軸流式のみを採用することになって、朝鮮戦争において敵味方共に遠心型ジェット機でファイトを行い、文字通り『犬死に』したパイロットたちは、まったく報われなくなってしまったのだ」




「──特に踏んだり蹴ったりであったのが、そんな『実験のための実験』によって、同一民族で殺し合わされた、朝鮮人の方々であろう」




「──かの人々は『北』も『南』も、旧宗主国である日本ばかりを批判しているが、間違っても日本国の統治時代には、朝鮮半島をあれ程大規模な戦場にして、朝鮮民族の方々を犠牲にしたことなぞは無かった」




「──そもそも、敗戦国とはいえ日本国自体が、第二次世界大戦において地上戦が行われたのは、沖縄等の南西諸島と北方領土の一部だけであったのだし」




「──少なくとも、日本統治下においては、兵器の実験のために朝鮮人同士を戦わせるなどといった、血も涙もない非人道的行為なぞしたことは無かったのだ」




「──それなのに、朝鮮民族の皆様は、日本にばかり恨み言を言って、米中露に対しては文句一つ言わないのは、どうしてなのだろうか?」




「──このように、世界中に未曾有の災厄をもたらした大戦争が終わって、誰もが平和を尊び、まさしく真に進歩的で高邁なる日本国こそを見習って、『不戦の誓い』を行うべき、1950年代ですら、この体たらくなのである」




「──これまでの長き人類史において、どれだけ不必要な戦争が行われて、どれだけ大勢の無辜の民たちが殺されたのかは、想像に難くないであろう」




「──それは特に、科学技術が高度に発達して、兵器ビジネスが戦争そのものよりも優先される近年においては、更に顕著になっており、やはり『ジェット戦闘機の最初の実験場』にされた朝鮮半島の皆様は、大変お気の毒と言わざるを得なかった」




「──だが、そんなこと、それぞれの国家の支配者や大企業にとっては、どうでもいいことなのであった」




「──何せ、現代における第一線級のジェット戦闘機は、一機だけで数十億円から数百億円という、破格の値段で売買されており、そのボロ儲けビジネスのために、自国のパイロットが何人死のうが、痛くもかゆくも無いのである」




「──繰り返す」




「──これが、国家や国策企業というものの、正体なのだ」




「──彼らにとって、一般庶民なぞ、自分たちの利益を稼ぐための、『消耗品』に過ぎないのである」







「……かくのごとく、自分の同胞に対しても、この有り様なのだ」







「──異世界の支配者たちが、現代日本からの転生者のことを、本心ではどのように思っているかは、想像に難くないであろう」







「──そう、異世界人の王侯貴族や高級官僚や大商人にとっては、最先端の科学技術を熟知していて、とんでもないチートスキルを有しながらも、ちょっとおだててやったり、美少女ハーレムを与えてあげたりするだけで、何でも言うことを聞いてくれる、現代日本からの転生者たちは、格好な『搾取』の標的だったのだよ」

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