第397話、わたくし、シ○タゲもジョン・タイターも、論破可能ですの。(その6)

 ──さて、第392話から6回にわたってお送りしてきました、この『論破』シリーズですが、いよいよ今回をもって終了したいかと思います!


 もちろん前回からの続きとして、『シュ○ゲ』アニメ版本編において、大切な幼なじみの女の子を『死の運命』から解き放とうと、主人公の青年が自作のタイムマシンを利用して、何度も別の世界線へと移動していって、幼なじみをどうにか助けようとするんだけど、どうしてもうまく行かず、どんどんと新たなる世界線を渡り歩いていくといった、最初の頃のコメディテイストは完全に鳴りを潜めた、重厚なるSF&鬱展開になっていくのに対して、果たしてこのようなことが本当に実現可能かについて、考証して行くわけなのですが、



 ──実は、本作の作者お得意の、量子論と集合的無意識論に則れば、十分に実現できたりいたします♡



 まずですねえ、『何度も幼なじみの女の子が死に続けるループ』って、まさしくWeb小説界隈ではもはやすっかりお馴染みの、『死に戻り』イベントそのものじゃん?


『死に戻り』を現実的に実現するには、どうすればいいかについては、本作『わたくし、悪役令嬢ですの!』を始めとして、同じく作者の著作である『転生法』や『なろうの女神が支配する』等において、すでに詳細に語り尽くしているものね。




 ──実は何と、世界線を移動するなどといった超常現象を、いちいち律儀に繰り返しているわけでは無く、世界にずっといながらにして、「自分はこれまで無限の死に戻り的ループをしてきたのじゃあ〜」という『偽りの記憶』を、集合的無意識を介して一度に全世界線分、己の脳みそにインストールしているだけなのよ!




 どうよ、これだったら、『世界線を、越っえて〜♫』とか、『エンドレスな8月を8週間も連続して放映したら、さすがに視聴者に怒られちゃったあ〜(泣)』とか、『死に戻り』とか、『ループ』とかを、実際には行わないでも、ちゃんと主人公の、無限の世界線を越えたことになるでしょう?


 まあ、例の『ス○ル君』とは違って、自分自身が死ぬわけでは無いものの、幼なじみの死を見せつけられ続けるという、より残酷なる繰り返しとなってはいるけれど、やっていることもその理論背景も、ほとんど一緒なわけよ。


 え? そんな『偽物の記憶』を与えるだけで、世界線超越を実現したことにするのは、ズルだって?


 別に、そんなことは無いでしょう?



 ──なぜなら、集合的無意識からもたらされるのは、『本物の記憶』と言っても差し支えないんだし、よって主人公自身においても、『本物の世界線移動』を体験したと言っても、差し支えないのですからね。



・それと言うのも、何度も何度も申しているように、量子論に則れば集合的無意識には、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在の『記憶と知識』が集まっているのだから、当然無限に存在し得る『別の世界線の主人公』の記憶と知識も、もれなく存在しているし、


・人間が実体験した行動の証しは、主観的には己の脳みそに存在している記憶以外にはあり得ないので、脳みそに直接インストールされた記憶と知識は、本物の実体験の記憶と知識同然とも言えるし、


・そもそも、本当に世界線を越えたり、世界を(物理的に)改変したりなんて、できっこないのだから、このように『世界線を越えた記憶』や『世界を改変した記憶』を、脳みそに直接インストールして、いかにも実体験したように思い込ませる以外に、実現できるはずが無いんだしね。



 ……まあ、言ってみれば、常にで、後は夢を見ていたようなものに過ぎないのよ。


 だって、もしも実際にタイムトラベルや異世界転生を行ったとしても、それを証明することなんかできやしないでしょう?


 例えばWeb小説の『なろう系』作品にあるように、地方貴族の八男坊がいまだ年端もいかないというのに、いきなり自分のことを「実は現代日本人の生まれ変わりなのだ!」とか言いだしたら、親兄弟を始めとする周りの人からは、悪い夢を見ていたか、気がふれたとしか、思ってもらえないんじゃないの?



 ──そしてこれは何と、自分自身にとっても、同じことなの。



 もしもあなたが何かの拍子に、戦国時代にタイムスリップだか転生だかをしたとして、あなたはずっと自分のことを、『21世紀から来た日本人』だと思い続けることができるかしら?


 そりゃあ、戦国時代に到着してすぐの間は、「おおっ、すげえ! これぞいわゆる『戦国転生』か! 良し、現代日本の知識をフル活用して、織田信長に気に入ってもらって、『NAISEI無双』をするぞ!」とか、『イキリ戦国太郎』そのままに大ハッスルするだろうけど、一月二月たち、一年二年とたっていくうちに、「……あれ、俺って本当に、21世紀の人間だったっけ? そんなの単なる夢か妄想に過ぎず、生まれつき戦国時代の人間だったんじゃないのか?」といったふうに、思い直すんじゃないかしらあ?



 そうなの、自分のことをいつまでも現代日本人だと思い込んで、リアルな戦国時代において、現代知識を使って無双するなんて、『なろう系』作品の中だけに許された、絵空事に過ぎないのよ。



 だって、そうでしょう? 人間の記憶なんてあやふやなものでしかなく、スマホ等の記録ガジェットどころか、学術書一つ持たずに戦国時代に転移した場合、現代日本人としての記憶や知識なんかを、いつまでも覚えておくことなんて、できるはずがないの。




 ──つまり逆に言えば、脳みそに直接『世界間移動』の記憶をインストールするほうが、むしろ本物以上に本物の、タイムトラベルや異世界転生の実現と言えるし、何よりも現実性リアリティを考慮すれば、それ以外の方法なんてあり得ないのよ。




 ということで、結論としては、『シュ○ゲ』アニメ版の主人公は、現実的には一度も世界線を移動していないことになってしまい、そもそも肝心の幼なじみの女の子のほうも何と、死ぬ運命では無かったということになっちゃうんだけど、異論がお有りの方はおられますでしょうか?


 もしおられたとしたら、その異論が、本当に現実的に実現可能なのか、今一度十分にご考察なされることを、切にお勧めいたしますわ♫


 ……まあ、あるとしたら、すべては『夢オチ』だか『仮想現実』だったとかいった、反則技的なオチくらいだけど、実は本作の『集合的無意識とのアクセス』方式は、『夢オチ』や『仮想現実』を、論理的に言い直したようなものですので、悪しからず。


 何せ、人に『偽りの記憶』を与えることで、タイムトラベルや異世界転生を疑似体験させるのは、『夢オチ』や『仮想現実』においても、同じことでしょう?




 ──とまあ、こんな感じで、今回の『論破』シリーズにおいて、語るべきことはすべて語り終えたわけなのですが、以下についてはあくまでも【蛇足】に過ぎませんので、ご興味のある方だけご覧になってください。




 それと申しますのも、当然の疑問として、「無限のループの記憶を、一度に丸ごとインストールしたりしたら、脳みそがパンクするんじゃないのか?」等と、思われた方がおられると存じますが、


 これについては常々、「実は記憶そのものを本当にインストールするのでは無く、集合的無意識との(ある一定の)アクセス権を与えることによって、いつでもループの記憶を脳みそ内で再生することを可能とする」のだから、問題は無いと述べておりましたところ、



 ──実は何と、更に簡潔明瞭なる超理論の構築に成功しましたので、ここにご披露したいかと思います!



 かいつまんで言っちゃうと、個々人の脳みそについては、『パソコンのモニター』のようなものとして、集合的無意識については、『パソコン本体』のようなものとして、見なせばいいのですよ!



 パソコンモニターの液晶はただ、光のドットを点滅させるだけだけど、何と1670万色以上といった実力ポテンシャルを誇り、自然界の森羅万象をほぼすべて描写可能なのであって、後はただパソコン本体から『描画情報データ』を入力するのみで、実際にすべての事象を映像化できるわけなの。



 そして、どのような映像でも脳内で描写できると言うことは、たとえそれが遠未来の光景だろうが異世界の風景だろうが、まるで実体験しているみたいに再現できるのだから、本物の記憶だと錯覚することも十分あり得るわけ。




 しかもこれをもう一歩進めて、量子論をかませれば、何とWeb小説やラノベなんかに登場してくる超常現象が、すべて現実的に実現可能となるのよ!




 本作においては、クトゥルフ神話で高名な不定形暗黒生物の『ショゴス』が変幻自在なのは、集合的無意識に対して自分の肉体限定の改変情報を要求することができるからとしており、それによって自身の肉体を構成する物理量の最小単位である量子の形態情報を書き換えて、無条件に何にでも変身することをなし得るようになっているんだけど、



 ショゴスを始めとする世界の森羅万象を構成する量子を、パソコンモニターの液晶の一単位ドットと見なすと、後は集合的無意識へのアクセス権の大きさに応じて、ショゴス同様に自分自身の肉体に始まり、周囲の物体、より広範囲な森羅万象、果ては世界そのものに至るまでを、大小様々なパソコンモニターに置き換えることによって、パソコン本体に当たる集合的無意識から『改変情報』をインストールすることで、この世のことわりそのものを物理的にねじ曲げて、変身や発火現象から核爆発や全次元消去に至るまで、ありとあらゆる魔法や超能力等の、超常現象が実行可能となるわけなのよ。

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