第259話、わたくし、何度も甦れる戦争ゲームは、永遠の『死に戻り』だと思いますの。(後編)
太平洋戦争末期の
すると遙か前方に、アメリカ海軍をどこか彷彿とさせる、ファンタジー異世界ならではの、勇壮ながらも歪極まる大小無数の軍艦からなる、大艦隊を肉眼で確認した。
相手のほうも、魔導レーダーで本機を捕捉したのか、早速迎撃機が雲霞のごとく、空母から飛び立ってきた。
グラマンとワイバーンを合体させたかのような、異形の有人飛行モンスター艦載機が、みるみるうちに迫ってきたが、俺は少しも慌てることなく、虎の子の魔導ロケットブースターを点火する。
その瞬間、本来子供の落書きのようだった直線翼の鈍足機の零戦が、機首のプロペラが弾け飛び、流線的な
速度計においても、みるみるうちに音速を突破して、敵機の分厚い囲みを難なくすり抜け、目標のリヴァイアサン型魔導ミサイル発射艦へと突っ込んでいく。
「うぉらあああああああああああ! エルフ皇帝陛下、バンザーイ!」
絶叫とともに敵艦の土手っ腹に着弾すれば、機首の超小型魔導原爆の爆発を文字通りの起爆剤として、艦内のエルフ帝国殲滅用の大量魔導核ミサイルすべてが誘爆して、すべての艦隊もろとも消滅してしまった。
……いや、いくらファンタジー異世界だからって、何でも頭に『魔導』って付ければ、いいってもんじゃないだろうが?
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『ゴブリンの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『ドワーフの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『コボルトの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『オークの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『ダークエルフの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『獣人の女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『ドラゴンの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『スライムの女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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気がつけば、俺は、上下左右全周が白一色の、不思議な空間にたたずんでいた。
てっきり、今度こそ『死後の世界』に違いないと思ったその瞬間、目の前に一人の女性が忽然と現れた。
「──私は、『魔族の女神』です。大日本帝国海軍の特攻隊員様、どうか私の世界をお救いください」
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「──やめろ! もう、やめてくれ!」
「どうして俺は、何度も何度も、特攻隊員として、死に続けなければならないんだ⁉」
「それも、エルフになったり、ゴブリンになったり、ドワーフになったり、獣人になったり、ドラゴンになったりと、強制的に転生させられるとともに、姿形を変えさせられて!」
「もう、たくさんだ!」
「もう、自爆攻撃なんか、したくはない!」
「お願いだ、いっそのこと、殺してくれ!」
「殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ! 殺してくれ!」
「誰でもいい、俺のことを、ひと思いに、殺してくれえええええええ!」
「──私は、『
「うわああああああああああああああああああああ!!!」
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「──献体第13号、限界です!」
「──もうこれ以上の、実験継続は、不可能かと思われます!」
「……ふむ、今回は、結構
「なかなかいいデータが、採取できたではないか」
「よし、実験を終了しろ!」
「──実験、直ちに、終了いたします!」
「今回の実験に関する
「「「──はっ!」」」
「……しかし、今回のこの【魔法令嬢編】にかこつけた、『新作ゲーム』の実験は、思った以上に大成功だったな」
「せっかく、どんな姿にでも
「となれば、『真にリアルな特攻ゲーム』の実現も、けして不可能ではないしね」
「しかもショゴスならではの変身能力によって、エルフにでも
「ゲンダイニッポンのサイト上で公開すれば、大人気間違いなしさ」
「我が聖レーン転生教団にとっても、世界の境界線を越えての、貴重な資金源となるでしょうな」
「何せ、自分自身の心身の完全なる安全性を確保しながら、真にリアルな『カミカゼアタック』を体験できるのだ」
「重度の『ミリオタ』どもが、こぞって飛びついてくるだろうよ」
「……しかし、今回のデータ収集のために利用した、実際の神風特攻隊員の『精神体』にとっては、とんだ災難だったでしょうなあ」
「ああ、まあな」
「ゲームをプレイしているほうは、単なる遊びでしかないんだがな」
「ゲーム内のキャラクターとしては、永遠にカミカゼアタックをし続けて、自爆と復活を繰り返さなければならないんだからねえ」
「……うわあ、とんだ『死に戻り』スキルも、あったものだな」
「俺だったら、絶対にごめんだね」
「……でもこれって、別にゲームに限らず、戦争を題材にした、すべての小説や漫画や映画とかでも、同じことではないのか?」
「何せゲーム中において、『エルフの女神』とやらも言っていたからな、ゲームや小説の中で記されたことは、量子論に則ると、まったく同じことが現実でも行われる可能性が生じるってな」
「つまり、どこかの世界では、あのゲームそっくりそのままに、永遠にカミカゼアタックを繰り返している、哀れなる特攻隊員が存在している可能性があるわけだ」
「もちろん、空戦ゲームだけではなく、戦車ゲームでも、艦隊ゲームでも、同じことだけどね」
「左様、彼らは架空の存在でありながら、すでに終わったはずの歴史の一部分に閉じ込められて、あたかも永遠に戦争をさせられているようなものだよな」
「……果たして、彼らが解放される時は、来るのだろうか?」
「いや、このように、平和ボケしたWeb小説家どもによって、【終戦記念日】とかにかこつけて、いかにも取って付けたように戦争を題材にした、小説とかゲームとか漫画とか映画が作成され続ける限り、無理な話ではないのかね?」
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