第136話、わたくし、ゲームのようなルーティンでは、真の経験値稼ぎはできないと思いますの。

「……あ、あれ?」


 つい今し方、零戦部隊の全周からの一斉攻撃を受けて、爆発四散したかに思われたものの、私は依然愛機Ho229と共に、ホワンロン王国国境沿いの、広大な砂漠地帯の上空を飛行していた。


『──ほら、いつまでもぼやっとしていたら、やられちゃうわよ?』


 こちらも当然のように健在だった、私の膝の上にちょこんと座っている、何だか『トイレの花子さん』を彷彿とさせる、黒髪おかっぱの超絶美幼女であるところの、本機Ho229の化身アニマの人呼んで『エイちゃん』が、いかにもしたり顔で忠告してくる。


「なっ⁉」


 これまた先ほど同様に、すぐ間近に迫り来る、十数機の零戦。


 一応さっきの経験を生かして、急ぎその場を離脱しようとするのだが、思わぬ事態に戸惑っているうちに、すでに時機を逸していて──


『──はあ〜い、残念でしたあ』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


「──はっ⁉」


 今再び、零戦部隊から手痛い一撃を受けて、爆発四散したかに思われたものの、私は依然愛機Ho229と共に、ホワンロン王国国境沿いの、広大な砂漠地帯の上空を飛行していた。


『──ほら、いつまでもぼやっとしていたら、やられちゃうわよ?』


 これまた当然のように健在だった、私の膝の上にちょこんと座っている、黒髪おかっぱの超絶美幼女が、いかにも呆れ顔で忠告してくる。


「うえっ⁉」


 そして当然のごとく先ほどと同様に、すぐ間近に迫り来る、十数機の零戦。


 さっきは3時の方向に急旋回しようとして失敗したので、今度は9時の方向に旋回を──


『──惜しい、もう一度!』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 今度は12時highの方向に、急上昇してみる。


『──駄目だって、相手はワープできるんだから』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 それならばと、今度はフェイントをかけてみる。


『……やれやれ、それくらいのこと、相手も考えるってば』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 いっそのこと、こちらから機関砲をぶっ放しながら、突っ込んでみる。


『……あなたほうが、「カミカゼアタック』をして、どうするの?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 ──これならどうだ⁉


『はい、失格』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 ──今度こそ!


『20点』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 ──ええい、もはや、破れかぶれだ!


『……うう〜ん、大負けに負けて、30点かしら?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


 ──食らえ! 『勇者アタック』!


『……いや、航空戦に「勇者」は、関係ないでしょう?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『はい、駄目ー』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『だから、その手は食わないって、言っているでしょう?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『もうちょっと、これまでの失敗を、生かしなさいよ?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『──おお、今度は結構、いい感じじゃない?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『……と思った矢先に、これだからねえ』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『ゲームとは違うんだから、ただ機銃スイッチを押し続けていれば、レベルが上がるってわけじゃないのよ?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『ちゃんとこれまでの経験を生かさないと、真の意味で「経験値」を上げることができないのは、当然じゃない?』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑


『──うんうん、わかるわかる、あなたもちゃんとあなたなりに、頑張っているのよねえ…………ただ、結果が伴わないだけで』


   ☀     ◑     ☀     ◑     ☀     ◑




「──うがあああああああああああああああああああっ!!!」




『……な、何よ、いきなり大声なんて上げたりして、びっくりするじゃないの?』


「びっくりもク○もあるか! 一体何なんだよ、これって⁉ さっきからずっと、同じことばかり繰り返して!」


『はあ? 今更、そんなことを聞くの⁉ ──もうっ、仕方ないわねえ!』


 そう言って、彼女がさもぞんざいに、そのか細き右腕を一振りするや、




 今まさにこちらに突っ込んでこようとしていた零戦を始め、コクピットの外のすべての事象モノが、完全に静止してしまったのだ。




「……何だよこれって、まるでさっきの『海の底』みたいじゃないか?」

『まあ、似たようなものよね。ここが一種の異世界のようなもので、現実世界とは、時間の流れが隔絶してるところなんかは、御同様だしね』

「──ということは、『閉鎖空間』か⁉」

『……というよりもむしろ、こっちのほうが、「ゲンダイニッポン」のWeb小説界においては、より有名で、今やスタンダードになっているんじゃないかしら?』


「──っ。そ、それって、まさか⁉」


 ……今頃になって気がついたのだが、何と目の前の少女の漆黒であったはずのまなこが、いつの間にかまったく違う色に染まっていた。




 それはけして、人であらざる、縦虹彩の、黄金きん色の瞳。




 ──そう。我がホワンロン王国の至宝、『の巫女姫』である、アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ嬢そのままに。




 そしてついに、目の前の鮮血のごとき深紅の唇が、今まさに決定的な言葉を紡ぎ出さんとする。




『ええ、そうよ。現在のこの現象こそは、かの有名な「死に戻り」そのものなの。──ただし、ちゃんと「ゲンダイニッポン」の量子論や集合的無意識論に則った、真に理想的かつ現実的な、いわゆる「脳内将棋盤」タイプの「特別製」ですけどね♡』

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